第10話 サラバ、ザラキ森林
ーーーー〈塔の最上階〉ーーーー
ある地方には塔がそびえていた。場所は不明、滅多に人は寄りつかず、廃墟と化している。
最上階には広間。壁中には松明が灯され、青い炎を燃やしている。松明が無ければ、広間全域は何も見えないだろう。地面にはネズミ、虫が這い、壁には巣を張る蜘蛛。人の手入れはされていない。
10メートル上には、屋内広場。中央には石の祭壇が配置され、天井には紫に輝く魔力球。
(…………)
一人の男が石の祭壇に腰かけていた。
手持ちのペンダントを名残り惜しく片手で握り、過去の人生観を黄昏ている。身長は2メートル、クシャクシャの白髪、長い髭。年齢は60代前半、黒曜の鎧、ガントレット、ウェストアーマー、フットアーマー。
後背には厚手のマント。体格はガッチリしており、元騎士といった所だ。
階段をコツコツと足音を響かせ、上がって来た。広間に現れたのは一人の魔導師。正体はリディクラ。
「リディクラか。何だ?」
男は言う。
(………)
リディクラは圧され、ビビる。
「リディクラよ、任務はどうした?。お前には、ユーギガノスの剣を破壊する任務を頼んでいるハズだが……」
男は低い口を開く。男の名前はディアブロス・モリナ。リディクラの言うリーダーである。
リディクラは言い辛そうに口を開く。下手すれば、殺されるからだ。
「ディアブロス様、報告します。ユーギガノスに選ばれし者が現れました」
「何っ?」
と、リディクラの言葉に、ディアブロスは思わず立ち上がり、睨む。
「ヒィッ、申し訳ありません!!」
と、リディクラは頭を下げる。
「そいつは、どんな奴だ?」
「ハイ。確か、壊滅させた村の行商人の情報によると、名前はゼブラ・ハルシオン。至って普通の赤髪の青年です。私は、後一歩で奴を始末する所に、謎の魔導師に邪魔され……」
「逃げて来たのか?」
と、リディクラの言葉に、ディアブロスは高圧的に言った。
「ヒィィィィィィィッ……」
リディクラは情けない声を漏らし、畏縮。ヤバイ、殺される。用意させた部下を失い、任務は失敗。 殺されても、仕方がない。すると、ディアブロスは静かに口を開く。
「そうか、情報に感謝する。 お前には、残りの封印宝の捜索を任せる。ユーギガノスの剣士の始末は、代わりの奴に向かわせる」
「代わりですか?」
リディクラは初耳の様子。
命拾いしたリディクラであった……。情報を得てなかったら殺されていただろう。
「そうだ……」
ディアブロスは、ポケットから紅の封印宝を手に取り、右掌の上でコロコロと転がす。
何故、彼が持っているのか説明すると、ユーギガノスの歴史を知り、盗まれた封印宝をヤバイ裏商人から買ったのだ。そのとき、階段をコツコツと足音を響かせ、何者かが広間に現れる。
銀の長髪、危険な雰囲気を漂わす鋭い瞳。身長は178センチ、体格は普通。年齢は17歳だ。黒革の長袖服とズボン、ブーツ。上着は蒼色の厚毛のロングコートを着用。鞘にはロングソード。
「そいつが、例の代わりだ。名前はヴァン・ア・フールだ」
ディアブロスは言った。
ーーーーーー〈ザラキ森林〉ーーーーー
4人は森林道を歩き進み、南方面の出入り口に向かっていた。ユリアの服はホークに裁縫され、新品同様の形に修復されていた。
「ホークさんは何故旅を?」
ゼブラは言う。
「何故と?……。そうだな、自分気ままに歩き、風景を眺め、土地の文化を学び、様々な人との出会いと触れあい、全てが好きだから。それが理由だね……」
ホークは物静かに答える。
「生粋の旅人ですね。人生の先輩と呼んで良いですか?」
「人生の先輩とは、ちょっと恐縮だね……」と、ホークは謙虚な笑みを浮かべる。
「私は尊敬します。責任感が強くて、ステキです」
ユリアは言う。一方、ユリアの(ステキ)と言うセリフに、ゼブラは彼女を嫉妬深く見つめている。
「何だ、嫉妬してんのか?」
意地悪のフェイトは、小声でゼブラの耳元に言ってやる。 フェイトの言葉にゼブラは(違いますよ)と、ムキになって返すのだった。フェイトの意地悪は続く。
「知っているか、経験豊富な旅人ってのは変態が多いんだぜ。気をつけないと彼女、森の中に連れていかれて、口では言えないあんなプレイやこんなプレイをされるかも知れないぜ?」
「ホークさんは、そんな人じゃありませんよ」
ゼブラは言う。
「どうだか、バックの中には手錠や猿ぐつわ、しめ縄。ロウソクや鞭も有り得るな……」
「そっ、そんな事を思いつくフェイトさんの方が変態じゃないですか!!」と、フェイトの発言に驚き、ゼブラは顔を赤らめる。
「独自の経験で言ったまでだ、変態じゃない!!」
フェイトは珍しくムキになる。
「じゃあ、今までどんな経験して来たんですか?」
(………)
答え辛いのか、フェイトは黙った。
「変に期待して悪いが、生憎、そんな物は入ってないよ」
ホークは立ち止まり、二人を物静かに睨む。二人の話をしっかり聞いていた。
「フェイトさんが言いました」と、ゼブラはフェイトに指を差し、教えてやる。一方のフェイト、頭を左手で抱え、意地悪で墓穴を掘った事に悔やむ。
*
数十分後、4人は森林の出入り口に到着。
「それでは、君達とはここで別れだ。短い間だったけど、楽しかったよ」
と、ホークは親身な笑みを浮かべる。
「一緒に来ないんですか?」
ゼブラは言う。
「色々とやる事があってね。機会があれば、また会える事を祈っているよ。じゃあ……」
ホークは鬼神化シルバーウィンドに変身。翼を羽ばたかせ、3人の前から飛び去って行った。
仲間にならないのは残念だが、彼には色々世話になった。感謝の気持ちを忘れないようにしよう。
両端には林が広がり、一直線に伸びる街道。
長い時間、森の中をさまよっていたので、空は茜色。つまり、夕方である。まるで一ヶ月ぶりに外に出たような感覚だ。色々あって、3人は疲れた。
10分後……。
街道を歩いていると、2つの看板が立ち、道が分かれていた。左の道には数十メートル先には宿場町。一直線の道は(十キロ先、カシム荒野方面)の街道。
3人は宿場町の道を歩き進む。早くフカフカのベットで休みたいし、飯を食いたい。
ーーーーー〈宿屋〉ーーーー
精算台の亭主に、2部屋を予約。フェイトは個人の用事により、個室にした。
一方、ゼブラとユリアは同部屋、一緒に寝る事になる。同部屋の理由は、2部屋しか、予約出来なかったのだ。
「そっちの責任は、そっちで負えよ」
と、フェイトは部屋に入る。
「そんな事しません!!」
ゼブラは否定。そして2人は部屋に入る。
3人は、それぞれの時間を過ごすのであり、これからの事を考える……。
ーーーー〈ゼブラ・ユリアの部屋〉ーーーー
室内は寂しい。1つの窓と1台のベット、小さなテーブルにイス、木造の棚。3人の人が入れる程の部屋の広さだ。安宿だから、仕方がない。一人だと満足、フェイトさんが羨ましい。
ゼブラはイスに腰掛け、悩んでいた。戦いの時、鬼神化を使った。しかし、力が暴走し、ユリアを傷つけた。鬼神化の恐ろしさを知り、自分は鬼神化をどうすべきか悩んでいる。
「ゼブラさん。どうしましたか?」
ユリアは心配に声をかける。
「なぁ、ユリア」
ゼブラは口を開く。
「何でしょう?」
「ゴメン……。俺がシッカリしていれば、君を傷つける事は無かった。君を守るって約束したのに、俺は……」
ゼブラはうつ向く。
ゼブラの言葉に、ユリアは表情を曇らせる。
「後悔してないか?。もし、嫌ならフェイトさんに頼んで、クーデルカに戻ってもいいんだ。一緒に行こうと言った俺も悪い、だから……」
「引き返せと言うんですか?。私は帰りません、旅をしたいと決めたのは私。進むのも、帰るのも私が決めます。それに……」
「それに?」
「秘密です……。お腹が空きましたね、ごはん食べに行きましょう」
ユリアは優しい笑みを浮かべ、ゼブラを誘う。
そしてユリアはゼブラの手を掴み、宿屋と合同経営している食堂に連れていくのだった。
オススメは今が旬の(ヤマドリのソテー、甘辛ソース仕立て)だ。
ーーーーーー〈フェイトの部屋〉ーーーー
フェイトはイスに腰掛け、ポケットから手玉の魔力水晶を取りだし、テーブルに置いた。
魔力水晶はピカッと光り、宙に浮遊する。
魔力水晶の正体は通信水晶、魔導師の通信道具だ。
「どうだ。そっちの様子は?」
魔力水晶から男の声か流れてきた。
「順調に行ってます。後、数日でそちらに着くでしょう……。そちらの戦況はどうです?」
フェイトは言う。
「砦からの連絡がないから不明だ。例の剣は無事か?」
魔力水晶の声は伺う。
「ハイ、無事です。選ばれし者も健在です」
「選ばれし者だと?」と、魔力水晶の声は驚愕。
「ハイ。村の青年で、名前はゼブラ・ハルシオン。ユリアと言う娘も一人」
「娘?」と、魔力水晶は不穏に尋ねる。
「旅の同行者です。しかし、不思議な魔力の色を漂わせ、ただ者ではないです…」
フェイトは渋い様子で返す。
まさか、彼女の生まれ変わりかも知れないと、僅かに思い込んでしまう。
「そうか、こちらに赴いた時に見ておく…。それより、でかしたわよ、フェイトちゃんっ!!」
魔力水晶の声に変化。嫌な予感に、フェイトは思わず表情が曇った。
「帰ってきたら宴よ。楽しみにしててね、フェイトちゃん……」
女っぽく流れる魔力水晶の声。
フェイトは冷静に口を開く………。
「盗まれた封印宝の捜索に当たるので帰りません。二人だけをそちらに向かわせます。では失礼」
魔力水晶からの上機嫌な声を無視。フェイトは魔力水晶に手をかざし、光を鎮め、連絡を遮断。
フェイトは紙を取りだし、置き手紙を執筆。




