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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
プロローグ
9/104

敵の正体

 柊刻矢と猫のクロエは星神町の西地区に来ていた。そこは都市機能が集中している中央区や様々な国の人達が住んでいる東区とは大きく異なった雰囲気だ。

 言葉で表すならば物騒な世界。コンクリートのビルが森の様に建っており昼間であるにもかかわらず光がほとんど届かない。刻矢が来たのはある人物に直接会い情報を手に入れるためだ。既にアポを携帯で取っているものの、星神町の西区に来る事について刻矢は正直気が乗らなかった。

 何故ならばここ西区は裏世界に通じているからだ。世界を何度も旅をしてきた刻矢は裏世界にも精通している。旅の資金稼ぎとはいえ命のやり取りを何度もしてきた。裏世界で刻矢の名を知らない者はモグリだと言われる程に。ここに来ると、やはり俺は姫陽や麗那とはズレた世界に生きてきたなと刻矢は自身を嫌悪する。

「よう、冒険家」

 西区の“入口”付近で、ドレッドヘアーでやや褐色の肌をした男性がビルを背に佇んでいた。見た目は中華系の東洋人で、黒に近いサングラスを掛けている。

「情報屋。お前の力を借りたい」

「その前に、付いて来な」

 刻矢とクロエは情報屋の言われた通り付いていく。西区はビルとビルとの間を様々な色の布で覆われた区域で、昼でも辛うじて道が見える程だ。街灯はあるものの、やはり昼間は点けないらしい。故に、犯罪の数が最も多い区域だ。それでも刻矢がやって来たのは、情報屋を頼るためだ。

 彼は金にうるさいものの、情報という分野での仕事は確かだ。世界中を飛び回っている父親を捜したい時も、謎の技術で簡単に見付けてくれる程に。

 約十分歩いていると、刻矢とクロエ、そして情報屋は二階建ての小さなビルにたどり着く。

「入りな」

 刻矢達は古い木の扉をキイと開けると、近くにあるつぎはぎだらけの広いソファに腰掛ける。最後に、刻矢に向かい合う安楽椅子に情報屋が座る。

「さあて、ナイトメアコードについて話そうじゃないか」

「知ってたのか」

 刻矢が見事と言わんばかりに軽く口笛を吹く。

「この業界に長くいるからわかるさ。お前はあれを親父さんから貰ったんだろ?」

 情報屋の言葉に対し、刻矢が右手を左から右へと軽くスライドさせると、刻矢の胸部が白に輝きスライドさせた空間に純白の『Caladrius』という単語が浮かび上がる。

「ほう、カラドリウスねえ。お前らしいコードじゃないの」

 情報屋は特に驚く事なく事実をありのままに伝えるだけだ。

「俺にとっては呪いだ」

 刻矢は目の前の文字に恨みを込めてそう呟く。

「まあ、そう言うな。今からお前が倒すナイトメア三体には必要、だろ?」

「三体もいるのか」

「敵の数を知らなかったのか? まさか、被害者数も? そいつは傑作だ! この情報くらい新聞読めば想像つくぞ!」

「一昨日帰ったばかりで時差ボケしてたんだ」

 腹を抱えて笑う情報屋に刻矢が言い訳がましく呟く。実際、姫陽が中等部が終わり春休みは一緒にいたいと連絡したから刻矢はナイトメア退治の挫折感を癒すのも兼ねてロンドンから帰国してきた。まさか、故郷の星神町までナイトメアがいるとは本人ですら思っていなかったが。

 帰国初日に、ナイトメアに襲われる麗奈を救い、今日はとうとう銃まで持って迎え撃つはめになった。そして、とうとう愛する妹に泣き付かれた。そういう意味では刻矢もナイトメアの被害者だ。これ以上ナイトメアと戦ったら精神衛生上良くない。そう考えた刻矢は情報屋を頼った。

 それなのに、あの態度に笑顔だ。親父の知り合いという肩書きが無ければ即座に眉間と肋三枚狙って撃ち殺していたであろう。

 だが、刻矢は必死に耐えていた。何故ならば、まだ“欲しい情報”を手に入れてないからだ。

「で、その三人は何者だ?」

 情報屋が、冷やかしに耐えた刻矢を称える様な表情で口を開く。

私立天宮学園(しりつあまみやがくえん)の風紀委員さ」

「天宮学園……だと?」

 流石の刻矢も動揺を隠せなかった。私立天宮学園。そこは刻矢と姫陽、麗那が初等部の頃からずっと通っている学校の名前だからだ。

「ただ、今は電力がほぼ無いから入れないぞ」

「どういう事だ?」

「理由なら行ってみれば解るさ。ただ、門から直接は入れない。まあ、俺が指定する待ち合わせ場所に行ってみろ。そいつなら入れるから」

 情報屋からの地図と情報を携帯に移すと、刻矢とクロエは待ち合い場所の学校へと向かった。

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