大切な人達
「ごめんね刻矢、ひなちゃん」
刻矢達はクロエを連れて麗那の部屋に来ていた。タキオンのコードは負担が大きかったらしく、六人の中では唯一復帰した学校で休んでいた。
当の麗那はパジャマ姿の状態でベッドに転がっている。刻矢達が来ても起き上がるのは難しいらしい。
「全くだ。どんな無茶苦茶な願いでコードを創造した?」
「刻矢に、追い付きたくて」
麗那が顔を赤らめて呟くと、刻矢はため息をつきながらデコピンをお見舞いする。麗那ばあまりの痛みに悶え苦しみ、ベッド全体で転がり始める。
「何すんのよ!」
麗那がジト目で睨み付けるが刻矢によって頭を押さえ付けられる。反撃も出来ないままやりたい放題な状態だった。
「お前が俺に追い付く? 無理無理」
「兄さん!」
「だから、お前が少しでも追い付けるよう一緒に歩いてやるよ」
「刻矢――」
刻矢はクロエに噛まれる覚悟で言ったが、肩からクロエが飛び降り麗那の膝に乗ってくる。クロエは軽くあくびをすると膝で丸まり始めた。刻矢と麗那の付き合いを許したかの様に。
「クロエ!?」
麗那は驚きつつもクロエを優しく撫でる。今度は嫌がらずに自分から擦り寄ってきた。
「あんたって変わった猫ね」
クロエが「そう?」と聞くかの様に軽く鳴く。更には麗那の膝が気に入ったらしく転がっている。
「どうやらクロエちゃん、麗那さんを許したみたいですね」
「だな」
そう言いつつ、刻矢は麗那の見舞いのためにと買った物を近くのテーブルに置く。
「何それ?」
「俺と姫陽が選んだスイーツだ。食わせてやろうか?」
「い、良いわよ!」
刻矢が麗那をからかい、二人を姫陽が微笑む。そんな三人と一匹の平和な日常が戻ってきた。




