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拝啓、勇者さま ~勇者と幼馴染の手紙の記録~  作者: 文月 ふな


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42 王国暦407年 拝啓、かつて世界を救った勇者さまへ

 拝啓、かつて世界を救った勇者さまへ。


 かつて勇者としてあなたが村を発ってからあなたに書いた手紙の数々を押し入れで見つけたので、懐かしくなり、今こうして久しぶりに手紙を書いています。


 あなたが世界を魔王の手から救ってくれてから、早いもので三十年経ちました。

 あなたが命をかけて救った世界は、平和と希望に溢れ、今も人々は幸せに暮らしています。もう魔王や魔物の脅威にさらされることはありません。


 あれから、私も色々なことがありました。

 思いがけず王都に移り住むことになり、針子にはなれなかったけれど、結婚し、貴族の妻なんていう恐れ多い立場になり、子供を産み、育て、そして再び村の近くの街に移り住み……。

 目まぐるしい日々だったけれど、今やっと一息ついた気分です。


 村に帰れれば一番良かったのだけど、勇者の出身地として観光地化しているとはいえ、やっぱり村はどうしても相変わらず利便性が悪いのよね。その点近くのこの街はちょうど良く、住みやすいわ。ここなら王都に残っている子供たちも訪ねて来やすいしね。


 思い返すと辛かった日々もたくさんあったけれど、とても幸せな日々でした。


 本当に色々なことがありました。変わったものもたくさんありました。変わらないものもありました。

 ねえ、クク。

 今でもやっぱり私はあなたのことが大好きよ。


 かつての勇者の幼馴染リリーより。

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