12 王国暦376年9の月3の週 リリーへ
リリーへ。
リリー、動揺しすぎ。確かに旅は始まるけど、すぐに魔王と対峙するわけじゃない。少しずつ魔物を討伐しながら魔王の拠点を目指す予定なんだ。小型の魔物ならちゃんと問題なく倒せるくらいに訓練をしているから、大丈夫だ。
いち早く魔王を倒すことはもちろん重大な使命だと思う。
でもそれだけじゃなくて、今魔物の発生が増えて襲撃に怯えている人たちを助けることも大切だと思うんだ。
こうしている間にも魔物の発生頻度は上がっていて、大きな人的被害が出るか分からない。今後は中型や大型の魔物も発生する可能性があるからあまり悠長なことを言っていられなくなるかもしれないけど、今の段階ではそれほど難しい旅ではないはずだ。
実のところ、魔物の討伐よりも、旅そのものの方が不安かもしれない。前回の手紙でも書いたけど、パトリシアがしょっちゅうアドリーと喧嘩をしてるんだ。どうも馬が合わないらしくて、顔を合わせれば喧嘩しているような状態だ。穏やかな性格のケインがいつも間に入って宥めてるけど、この状態で旅の間大丈夫なのか心配で仕方ない。早めに少しでも仲良くなって欲しいと思ってるけど、人の相性は他人がどうこうできるものでもないしな。
うまく距離感を掴んでくれるといいんだけど、仲が悪い癖にお互いにことあるごとに寄っていく節があるから、どうなることか。できるだけ穏やかな旅ができることをリリーも祈っていてくれ。
そうそう、旅に出ても今と同じように手紙を送ったり受け取ったりすることはできるから安心してくれ。
魔王討伐の旅は国中のギルドが全面的に協力してくれるらしくて、ギルドの物流網を使って手紙の送受信もできるそうだ。
ギルドの情報網とか物流網は相当充実しているらしい。国が主体だと諸々の手続きで滞りがちな物流でも、ギルド網を使うとスムーズに動くとかなんとか。さすがにそこまでの権威は持っていないとは思うけど、とにかく俺たちの手紙を送り届けるくらいなら全く問題なくできるらしい。
筆不精なことは自覚してるけど、旅の間もできるだけちゃんと手紙を書くようにするから心配しないでくれ。
これからしばらく……と言ってもせいぜい十日間くらいだと思うけど、俺たち魔王討伐メンバーは神殿で加護を受けたり王族に出立の挨拶をしたり、なんだか色々やることがあるそうだ。面倒くさい行事は省略したい気持ちもあるけど、その間に同行する軍の物資も準備したりするらしいから、文句は言えないな。
とにかく、旅の出立が決まったと言ってもこれまでとそんなに変わらない生活をしているから、リリーもあんまり心配しないでいつも通りの生活を送ってくれ。動揺しすぎて怪我とかするなよ!
ククより。




