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拝啓、勇者さま ~勇者と幼馴染の手紙の記録~  作者: 文月 ふな


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1 王国暦376年6の月4の週 拝啓、勇者さま

 拝啓、勇者さま。


 あなたが魔王討伐の為に村を発ってから、もう半年になりますね。今頃は王都のお城で勇者としての訓練に明け暮れているところでしょうか。いつでも手紙を出して良いというあなたの言葉に従って、こうして王都宛ての文をしたためている次第です。無事にあなたの元へ届き、日々の訓練の慰めになっていると良いのですが。


 半年前、王都からの使者が村にやってきたあの日のことを今も鮮明に覚えています。今まで一緒に育ってきたあなたが、まさか魔王討伐の使命を授かった勇者だったなんて。

 確かにあなたは昔から剣の腕が達者だったし、よく分からない光魔法みたいなものも操っていたけれど。こんな辺境の村の子どもが勇者だなんて思いもしませんでした。


 それから出立までは慌ただしくあっという間で、あなたがいなくなってからやっと、少しずつあなたが勇者だという実感が湧いてきました。今はただ、あなたが無事に役目を終えて帰ってくることを願う日々です。



 ……なんて、堅苦しい言い回しはやめにして。

 もう半年も経つのに、手紙の一つも寄越さないなんてどういうことよ? 所詮ただの幼馴染の私への手紙は無くても仕方ないけれど、せめてご両親には便りがあっても良いんじゃない? この前、おばさんがぼんやり空を見上げながら「あの子元気にやってるのかしらねぇ……」って呟いてるのを見かけて、ものすごく胸が痛くなったわ。この手紙を見たら、ぜひ「元気だ」の一言くらい伝えてあげて頂戴。


 王都宛ての手紙なんて初めてだから、緊張して何を書けばいいのかよく分からなくなってきたわ。とにかく、せっかく王城の方たちがいつでも迅速に手紙を届けられるように取り計らってくれているのだから、今後はもう少し頻繁に連絡をくれると嬉しいわ。おじさんとおばさんもきっとあなたからの手紙を待っていると思うから。


 それでは、また。

 

 



 辺境の幼馴染、リリーより。

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