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定められた物語<ログストーリー>  作者: 霖雨 晴流
第一章 自由都市と言霊
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Rb.5 勉強会

「イロカ・ヴァレを倒してほしい……?もしかして、『毒道の森』の奥に封印されている人って……!」

「む、よくわかったな。そうだ。今から23年前、森の奥に封印され、今もなお彼女の生存を示す紫色の道を残す大犯罪者。それがイロカ・ヴァレだ。」


 リベラ王は腕を組んで話を続ける。


「都市が一体化した翌年、当時の私は国同士の交流会としてここから東に二つの国を超えた先にあるヴォルカンに行っていた。私がいないその日を狙ったのか、イロカ・ヴァレが国民を片っ端から殺し始めた。彼女を止めようと兵士達が行くも、返り討ちにあった。結果、二百人以上の国民が、彼女の手によって失われてしまった。」


 リベラ王の話に、六人は息をのむ。


「私が国に戻ってきた時にはもう遅かった。破壊された家、紫色に染まった大通り、そして、辺りに散らばる国民の死骸……思い出したくない程の悪夢だ………運よく観光に来ていた魔法使いが彼女を森の奥深くに押し込み、結界を張って入ることも出ることもできないようにしたが、それでも、彼女はまだ生きている…………恐ろしい話だ。兵士によると、彼女に斬られた者の血の色は赤色ではなく紫色になり、時間がたてば消えるそうだ。つまり、今でも残り続けている紫色の道は、彼女が生きている事を表している…」

「それは…すごく恐ろしい事件ですね…………」

「あぁ、イロカ・ヴァレは『元』であっても騎士団長だ。簡単に勝てる相手ではないことはわかっている。だが、これを頼める相手は、選ばれた数字(ポインター)である君達しかいない……!だから頼む!リベルタージュのために、どうかイロカ・ヴァレを倒してはくれないだろうか!!」


 リベラ王は立ち上がり、頭を下げる。


「リベラ王!?どうか頭を上げてください!!」


 リベラ王の行動に二菜が慌てる。


「なるほど……そういう事だったんですね……」

「理由はどうであれ、俺はその依頼を受けるぜ。」

「何より、国王様からの依頼だからね。」

【リベルタージュの平和のためなら頑張る!!】

「フフフ………ならばその依頼、我々の力をもって完遂してみせよう!!」

「それじゃ、その依頼引き受けましょう!」


 零が言うと、リベラ王は顔を上げて元気を出す。


「本当か!感謝する!」


 リベラ王は玉座に座った。


「そうと決まれば早速『毒道の森』に…と言いたいところだが、その前にやってほしい事がある。」

「やってほしい事、ですか?」


 零は首をかしげる。


「君達、選ばれた数字(ポインター)についてどこまで知っているのだ?」

「えぇと………名前に数字が入っている事と、国の問題を解決できる力を持っている事の二つです。」

「ふむ。そこま知っているのであれば話は早い。だが、選ばれた数字(ポインター)の『0』についてはどうだ?」

「90~100年ごとに現れる事くらいしか……」

「そうだな。全国を巡って選ばれた数字(ポインター)の歴史について学んだのだが、それ以外に、『0』のみ共通点がある事が分かったのだ。」

「共通点?」

「あぁ、それは、『誰もが持たない魔法を使える事』、そして『世間知らずである事』、この二つだ。」

「世間知らず……」


 リベラ王の言葉に、二菜は少し納得したような顔をする。


「『誰もが持たない魔法を使える事』は説明を省くとして、重要なのは『世間知らずである事』だ。なので、今から有栖川 零にはこの世界について勉強してもらう!!」

「…………………えっ?」


 突然の命令に、零の頭は真っ白になる。そしてすぐに言葉の意味を理解し、抗議を始めた。


「ど、どどどどどうしてですか!?今すごく重大な事を依頼したんですよね!?それなのにこの世界について勉強する意味なんてあるんですか!?というか、それは依頼が達成してからでも遅くないじゃないですか!!」

「有栖川 零よ。君は一つ勘違いしているようだ。」

「えっ?」


 リベラ王は机に左肘を置き、左手の甲を顎に当てる。


「確かに、イロカ・ヴァレの討伐依頼はとても重要だ。真っ先に達成してほしい事である。だが、それと同等で解決しなければならないのが君の世間知らず問題だ。」

「????????」


 零は首をかしげる。


「歴史書によると、選ばれた数字(ポインター)の『0』は世界の最低限の知識はあるが、常識としてはかなり浅い。魔力についても、全生物の体内に魔力が流れている事は知っていても、血液の中にまんべんなく流れている事は知らなかったのではないか?」

「うっ……」

「やはりな。選ばれた数字(ポインター)は魔王討伐を目指すパーティーであり、『0』はその中のリーダーとしてこれからを歩むことになる。それなのに世間知らずでは、戦うことはできてもコミュニケーションは難しくなるのではないか?」

「う、うーん……し、しかし……」


 零は納得のいかないまま話す。


「それに、この事はイロカ・ヴァレの討伐依頼にも関係している。」

「そ、そうなんですか?」

「十年以上もあの森で生活をしているとなると、彼女は人間でなくなっている、つまり魔物になっている可能性もある。人から魔物になるなんてことは基本ないのだがな。魔法は不可能を可能にする力、その可能性が0とは言い切れん。それに、魔物によっては魔法が効かなかったり、物理攻撃が効かなかったりする場合もある。そういった知識を持っておくのも、重要な事だ。だから、頼んだぞ。」

「は、はぁ……」


 零は納得し、小さくうなずいた。


「よし、では、話は以上だ。九十九 正哉、一ノ瀬 力斗、御守 二菜、速水 三奇、術勢 四炉、有栖川 零の世間知らず問題の解決、頼んだぞ。あぁそうだ、問題の解決にあたっての費用は私が負担しよう。というわけで、これは前金だ。」


 リベラ王はそう言って六人に大金を渡した。お金の価値をまだ理解していない零は素直に受け取ったが、他の五人のうち、二人は驚いて髪が逆立つほどの金額だった。


 そして現在に至る。


「ま、遊ぶとは言ったけれど、目的は零の世間知らず問題の解決、そのためには図書館に行かないと!」

【たくさん知るには、たくさんの知識が集まる場所に行かないとね!!】


 三奇が目を輝かしてボードを見せる。


「図書館っつっても、どこに行くんだ?俺は図書館について全く知らねぇけど、この辺りにでかい図書館はなかったはずだぞ。」

「大丈夫!私の行きつけの図書館があるから!」

「そうとなれば、いざゆかん!!万物の真理が封じられし書庫へと!!」


 六人は移動した。


 数分後……


「じゃん!ここが私の行きつけの図書館よ!」


 二菜が案内した図書館はとても壮大な建物だった。


(大きいな……城の三分の一か半分程の大きさだな……)


 零は建物の前にある看板の文字を読む。


「『へルート魔法学校附属国立図書館』……へルート魔法学校ってなんだ?」


 零が五人に聞くと、二菜以外は驚いているのかぽかんとしていた。


「へルート魔法学校は図書館の隣にある高等学校よ。へルート魔法学校について説明する前に、零は学校についてどのくらい知っているの?」

「名前だけは聞いたことあるくらいだ。」

「そう。なら、まずは学校について説明しないとね。リベルタージュの学校は、6歳~10歳の子が通える初等学校、11歳~15歳の子が通える中等学校、16歳以上の子が通える4年制の高等学校の三種類があるの。そのうちの高等学校の一つへルート魔法学校は、数ある高等学校の中でも特に専門的なことを学ぶ、冒険者を目指す人向けの学校ね。本来なら、へルート魔法学校附属国立図書館は学校関係者じゃないと入れないのだけれど、私はこの学校のOGだから、無事入ることができたわ!」

「そうなのか。」


 零と二菜は会話を続けるが、他四人はいまだに動かずただ固まっていた。


「…………皆、いつまで固まってるんだ?早く入るぞ。」


 零の言葉に、力斗は動き出す。


「ちょっっおいっ!!お前知らないのか!?」

「知らないって、何が?」

「へルート魔法学校だぞ!?リベルタージュの中で最も偏差値の高いあの学校だぞ!?それなのになぜお前は平然としていられるんだ!?」

「えっと……どういう事だ?」


 正哉が動き出した。


「零は知らないだろうけど、二菜の言った通りへルート魔法学校は冒険者を目指す人向けの学校だ。でも、この世界は冒険者の稼ぎがそれなりによくてね。この学校を目指す人はごまんといるんだ。だから競争率も三十人に一人受かるか受からないかのレベルで高く、試験問題も受験者殺しの超高難易度。この学校を卒業した人は、間違いなく住んでる世界が違う程の頭脳を持つ天才なんだ。」

「なるほど、天才なのか……」

「いやいや、私は天才じゃないよ~」


 二菜は手を横に振る。


「私は幼い頃から知的好奇心が強かったからね。それがうまい事試験問題とかみ合って合格しただけよ。」

「……でも、この学校を卒業した人は、間違いなく天才だよ。」

(三奇と四炉がまだ固まってる……そんなに驚く程なのか……)


零は三奇と四炉に目を向けると、三奇は長い耳を、四炉は丸く長い尻尾をピーンと真上にあげて固まっていた。


「さて、ここでずっと話しているわけにもいかないし、早く入っていろんな事学ぼっ!」


 六人は図書館の中に入り、勉強会を始めた。


 七時間後……………


「つまり、魔力とは魔法使用時の魔力消費量と攻撃力、または回復力に関係がある、という事なのか。」

「そのとーり!やっぱ呑み込みが早いね!」

「二菜の説明が分かりやすいだけだ。」

【零、二菜……そろそろ図書館を出ようよ…………いつまでいるつもりなの……………?】


 三奇が机に体を預け、兎の耳を机に垂らして顔を伏せながら二人にボードを見せる。外は真っ暗となり、力斗、四炉、正哉は死んだように眠っていた。


「あ、あれ!?もうそんな時間!?ごめん!勉強会に熱中しちゃった……!」

「できればもっと魔法について知りたかったんだけど、仕方がない。じゃあ、続きはまた明日にしようか。」


 零の言葉に、三奇は猛反対するような動きを見せ、ボードを書き直す。


【もういいでしょ!?本当にいつまで勉強する気なの!?このままだと永遠にここに閉じ込められるよ!?】


 三奇の意見に、零と二菜は不服ながらも、机の上にある何十冊もの本を整理し、元の位置に戻す。


「正哉、力斗、四炉、起きろー。勉強会はお開きだ。」

「あぁ……………やっと終わったのかい……?」

「まごうことなき勉学の地獄……」

「やっと解放される……」


 三人は瀕死のような声を出す。


「さて、全部ではないけど知りたいことも知れたし、明日は『毒道の森』に行くとするか。」

「そうね。気をしっかり引き締めないと。」

【どうして二人はそんなに元気なの…………?】


 耳が真下に垂れ、今にも倒れそうなほどにフラフラな三奇はボードを見せながら図書館を出る二人についていった。


 翌日……


「いい朝だわ~。皆はしっかり眠れた?」


 着替えて元気に体を伸ばした二菜が五人に話しかける。


「あぁ、ばっちりだ。」


 零は答えたが、四人はいまだに眠そうにしていた。


「うーん……私と零は元気だけれど、力斗達はどうして眠そうなの?」

「お前らのせいだよ!!図書館を出てやっとあの地獄から解放からされると思ったのに宿に向かう途中も寝る前も最後まで勉強会の続きをしやがって!!おかげで夢の中まで勉強させられたわ!」

「よかったじゃないか夢でも勉強ができて。俺は夢なんて見なかったぞ。」

「なんっもよくねぇよ!!」

「あの地獄じみた幻影は、二度と我が夢域に踏み込ませたくないものだ……………」

【四炉が、 あんな夢、もう二度と見たくない って……】

「勉強会は、もうこれっきりにしてほしいかな……」

「そ、それほどだったのか……」

「えぇと………皆で『毒道の森』に行こうと思っていたのだけれど、今日は私と零だけで行く?」

「そうさせてくれると嬉しいかな…………」

「わかった……」


 零と二菜は宿を出た。


「あ、そういえば、イロカ・ヴァレを倒すなら、『毒道の森』の奥に張られている結界をどうにかしないといけないんじゃないか?」

「そういえばそうだったわね。じゃあ、『毒道の森』に行く前に城に行こっか。」


 数分後……


選ばれた数字(ポインター)の方々ですね。リベラ王は最上階にいらっしゃいます。ご案内を…」

「その必要はないぞぉぉ!!」


 大広間でメイドと話していると、真上から男性の声が響く。三人が上を見る間もなく、上からリベラ王が床を壊して登場した。


(あれ、これなんかデジャブ…………)

「はーーーはっっはっっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!昨日ぶりだなぁぁ!よく眠れたか?む、今日は人数が少ないな。何かあったのか?」

「いえ、昨日の勉強会で疲れてしまったようで…………というか思ったんですが、リベラ王が上から落ちてきてくださるならば、王室が最上階にある意味がないのでは………」

「まぁそう思うだろう。私も最初はそう思っていて、過去に大広間の隣に王室を作っていたのだが、私が王室を破壊した際、大広間の一部も吹き飛んでしまってな。吹き飛んだ部分を中心に城が崩れてしまって、大惨事になったのだ。だからそれを防ぐために、王室は最上階にしているのだ。」

(城が崩れるって……なんでそうなるんだよ……)

「ところで、私に何か用か?選ばれた数字(ポインター)の頼みとあれば、できる限りのことをしようではないか!!!」

「じつは、『毒道の森』の奥にある結界の解除方法を知りたいのです。」

「おぉ、そうか。あれなら、少し時間はかかるが、結界を破る魔法解除ができると思うぞ!」

「そうなのですね!ありがとうございます!」

「他に聞きたい事はあるか?」

「それなら、俺から一つ気になることがあるんですけど、いいですか?」

「かまわんぞ!」

「リベラ王はポーズをとるだけで衝撃波を放てるほどの力を持っているのであれば、イロカ・ヴァレの討伐もできると思うのですが………どうして選ばれた数字(ポインター)に依頼したんですか?」

「あぁ、それはだな…」


 リベラ王は困ったような顔をする。


「私も、できれば選ばれた数字(ポインター)に依頼したくはなかった。だが、そうせざるを得なかったのだ。君の言い分もわかる。本来なら、私一人で解決できる問題だ。だが、不思議な事が起きているのだ。」

「不思議な事…とは?」

「なぜか私は、『毒道の森』に入れないのだ。」

「『毒道の森』に入れない……!?」

「兵士や犯罪者、商人は問題なく入れるのだが、私だけ、入ろうとしても押し出されるのだ。押し出されるというより、進んではいるのだが、その場から動かない、同じ位置でずっと歩いたり走ったりしている状況になっているのだ。全方角から入ってみようと試みたのだが、どれもだめだった。魔法に詳しい国民にも相談してみたのだが、それらしい結界は張られていないそうだ。まるで、『毒道の森』が私を拒絶しているような、そのような感覚だ。だから、私は選ばれた数字(ポインター)に頼るしか道はないと思ったのだ。」

「そうだったんですね……」

「何もできなくてすまない…」

「いえ、気にしないでください!むしろこの問題は俺達じゃなきゃ解決できないと分かったので……!」


 軽く頭を下げる国王に零は慌てて言う。


「そうか。聞きたい事はもうないか?」


 零と二菜は頷く。


「よし、では、私は先に失礼する!イロカ・ヴァレの討伐、頼んだぞ!」


 リベラ王はそう言って高く飛び、姿を消した。


「あれって、魔法使ってないよな……」

「うん、使ってないよ。」

(簡単に飛んだり衝撃波を出したり……リベラ王は俺達と同じ人間なのか…………?)


 零は口には出さなかったが、疑問に思った。

 二人は城を出て『毒道の森』に向かった。

次の話は4月5日に投稿予定です。

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