表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定められた物語<ログストーリー>  作者: 霖雨 晴流
第二章 岩石の国と何かに限りなく似た物
PR
32/32

Rb.28 変装魔法と炎魔法

(こ、こいつ……!陽下氷上で下げた温度を一瞬で上げやがった!!)

「耐笑、踊子、大丈夫かっ!?」


 零は2人に呼びかける。


「な、何とか耐えて……ます…………ですが……準備は………でき、てます……!」

「準備………?」

「防御魔法 火耐!!」


 耐笑は杖を掲げ、自分を含む五人に加護をかける。


「…………あれっ?熱くない………?」

「火に、耐性を……つけました………!これで、戦えます………!」

「本当か………?それは、とても助かる………」

「たしかに熱くない……!」

「はぁぁぁ………?」


 耐笑の行動に、蛍はまっこと不服の声を漏らす。


「んだよつまんねぇなぁ…………せっかく俺様が盛り上げたってのによぉ………………」

「これ以上俺達を不利な状況にするわけにもいかないからな。絶対に、勝たせてもらう。」


 零は剣を構える。一方、七彩は空を見上げ、弓矢を構えた。


「………………………………」


 七彩は何も言わず、空に向かって数えきれないほどの青色の矢を放つ。


「射手矢、さん………………?どうして…どうして空に矢…を……?」

「検証……………と、言うより、これなら……炎の海を、解決できるはず…………………」

「そ……そうなんですか………………?」

「わからない…が、試す価値はある……」


 七彩は静かに言った。


「おらよぉっっっっっ!!!!!!」


 蛍は零に近づいて大剣を力強く振り下ろす。零は蛍の攻撃を簡単に避け、剣を振り下ろそうとしたが、ステージに直撃すると大剣を中心に炎が吹きあがり、視界を遮った。


「なっ…!?炎が…!」


 炎は一瞬にして消え、視界が広くなった時、そこに蛍の姿はなく、炎を吹き出す大剣が落ちていた。零が蛍が消えた事に気付いた途端、真横から蛍の拳が零の横腹に直撃する。


「がっ…………はっ………………!!」

「かってぇな…あの女の仕業かぁ………………??」


 零は剣を落として苦痛の声がこぼれ、蛍はぼそっと声を漏らした。

 零は数十センチメートル飛ばされたが、すぐに立ちなおし、攻撃の準備をとる。


「げほっっっごほっっ………………!!」

(耐性がついているとはいえ、痛いものは痛い……!あんな攻撃、あと数回は耐えられるか…………?)


 零は苦痛を吐き出すように深呼吸をする。


「あぁ?どうしたぁ?まさか、もうきつくなってきたってのかぁ??」

「どうだろうな……?自分の目で確かめてみろよ。」

「そうかそうか、じゃ、遠慮なくいかせてもらうぜぇっ!!」


 蛍が大剣を持って零に向かった瞬間、突然、快晴にもかかわらず会場に豪雨が降り始めた。


「なっ………………!?」

「あわわわわわ!!!急に大雨が!?」

「なっ、なんですか…………!!??何が、何が起きているんですか……!!??」


 その場にいる全員の意識が豪雨に向き、豪雨が炎を鎮火する。


「はぁぁぁぁっ!?魔法だから鎮火できねぇはずだろ!!??」

(確かに、蛍が使う炎は魔法だから消えないはず……本当に何が起きている……!?)


 零は七彩に目をやると、七彩の目は普段の細い目とは違い、少し大きく開いていた。


「七彩、この大雨って……」

「おれがやったが……鎮火できるとは、到底…思えなかった………………焼け石に水だと思っていたが………………いったい何が…起きている……??」

(七彩でさえ予想外だったとは…………じゃあ、誰が………………??いや、誰だっていい……運が、こっちについているんだ………………!)


 豪雨によって炎が消え、気温が急激に下がる。


「ちっ……ありえねぇありえねぇありえねぇありえねぇありえねぇ………………!!!何が、何が起きてんだよ!!!???」


 蛍は頭を抱えて取り乱し、繰り返し言う。

 零は蛍が落ち着くのを待たず攻撃を仕掛けるが、蛍はそれを大剣で受け止める。


「お前らぁ!!!いったい何をしやがったぁぁぁぁぁぁ!!!!????」


 蛍は叫び、大剣から炎を出して振り回す。零は蛍の攻撃を避けて少し後退し、口を開く。


「俺達も知らない。だけど、運は俺達の味方みたいだ。」

「くそっっ………………ありえねぇ………………!!」


 雨が止み、蛍は不快な表情をしながら大剣を持つ。


「炎が消えたなら、再び、炎を呼び起こすまでだっっっ!!!」


 蛍は叫び、辺りに炎を噴出させる。


(こいつ……魔力量に底はないのかよ!!??)

「零くんっ!」


 零が驚いていると、真横に傷を負った猫が並ぶ。


「猫っ!チェンは倒したのか?」

「なんとかね。あの人、かなりしぶとかったわ。いろんな人になりすまして攻撃するなんて外道だわ………………」


 零は猫の右腕に巻かれた包帯を見る。


「………………猫、その包帯はどうした?」

「包帯?これは、私達の作戦で巻いた物でしょう?」

「……そうだな。」


 零は怒りがこもった表情で猫に剣を振った。


「ちょっっ!!??」


 猫は突然起きたことに驚きの声を上げながらも避けた。


「零くんっ!?急に何をするの!?私仲間よ!?」

「猫は仲間だけど、お前は仲間じゃない。変装しているな、チェン・ジュー。」


 零は猫を睨んで言う。猫は首をかしげた。


「何を言っているの?私は猫よ?チェンはついさっき倒したって言ったじゃない。」

「それが嘘だって事だ。」

「う、嘘……!?私が、こんな状況で嘘をつく必要なんてあるわけないじゃない。」

「猫はそうだな。でも、チェンなら嘘をつく事でいつでも襲撃できる。」

「さっきから何を言っているの!?私は本物の猫よ!!??」

「話が見えてこねぇが、敵を前にいちゃつくっつうのは、いくらなんでも油断しすぎなんじゃねぇか?」


 零と猫の間に蛍が割り込み、大剣を大きく振り下ろす。しかし大剣は踊子の槍で受け止められた。


「あぁ?お前、動けたのか。」

「そりゃあもちろん。耐笑ちゃんのおかげで、あたしはずっと動けるようになったよ!零君!チェンはお願いねっ!」

「任せろ。すぐに終わらせる。」

「おいおい、さっきまで炎で死にかけていたやつが、炎の魔法を使える俺様の時間稼ぎができると思ってんのかぁ!?」

「さぁ?どうかなぁ?でもねぇ、あたしここ最近ずっと苛立っているんだ!ずっと応援していた『アパタイト』が自作自演で犯罪を起こしているうえに、仲間に変装するなんて………………怒りしか込み上げてこないよねぇ!!この怒り、今ここでぶつけてあげる!!!」


 踊子はそう言って蛍を押し込む。


「踊子ちゃんっ!?それだとチェンが私に変装してるって言い方になるじゃない!!私は本物よっ!!??」

「……………有栖川君、六車君。見つけたぞ。」


 疑われている猫が抗議の声を上げている間、七彩が包帯を巻いていない傷だらけの猫を抱えて零と耐笑を呼んだ。


「やっぱりそうか。」

「わぁぁ!!??こここここここ狐塚さんっっ!!だだだっだっだ大丈夫ですか!!??」

「やられた……わ………………」


 傷だらけの猫は小さく言う。


「口を開くな…回復してやる……少し休め…………」


 七彩は傷だらけの猫を横にして緑色の矢を放ち、傷を癒す。


「あ…りがとう…」

「口を開くな、と言っている……」

「貴方達、どうして偽物(そっち)を心配するの!?私が本物だって言っているじゃない!」

「いや、お前が本物かどうかはすぐにわかる。」


 疑われている猫が声を少し荒げて言うと、零は冷静に返した。


「今この場で、猫のスリーサイズを答えろ!!」


 ・・・。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」


 蛍と疑われた猫が目を丸くして驚愕の声をあげる。蛍は動きを止めて大剣を落としそうになった。


「な、なななな何を言っているの!?こんな場所で答えられるわけないじゃない!!プライバシーとかないの!?」

「答えられないのか?じゃあ偽物だな。そうだろ?」


 零の問いに対し、耐笑と七彩は頷く。


「どういう事!?まったく意味が分からないのだけれど!?」

「そりゃそうだ。チェンからすれば意味が分からないだろうな。猫は初対面の俺達に自身のスリーサイズを教えた人だという事を。」

「あの方は一体何をしているのですか!!??」


 零、猫、耐笑、七彩、踊子以外誰もが予想しなかった事態に疑われた猫は口調が変わる。


「っ!口調が戻ったな!?」


 零の言葉に、疑われた猫がはっとする。


「その反応をするって事は、やっぱりお前がチェンなんだな。もう猫の変装をしても無駄だぞ!!」

「くぅっ………………!」


 疑われた猫は魔法陣を通し、チェンの姿へと変わる。


「よ、予想外です………………変装が暴かれる事ならまだしも、まさかスリーサイズを問われるとは………………!!というか、初対面の人に自身のスリーサイズを教えるなんて、どのような神経をしているのですか………………!?」

(それは…………わかる。)


 零と七彩は同情した。


(変装魔法………他人に成りすます事ができるだけじゃないのか……?猫がチェンに負けたって事は、チェンは格闘技もこなせる……?いや、もしそうだとしたら、最初のライブで言っていた『チェンは槍使い』って事が嘘……?いや、最も使える武器が槍なのか………………?)


 零は長考すると、約一週間前に七彩が言っていた事を思い出す。


「……チェン、お前の変装魔法、変装した人が使う武器を使いこなす力も持っているって事か?」

「っ…………!その答えにたどり着いたのであれば、もう全て言うしかないみたいですね。」


 チェンは目を見開き、引きつった笑顔を浮かべる。


「蛍、いったん攻撃を辞めましょう。」

「あぁ?なんでだ?」

「お互い攻撃をしながら魔法の説明をするなんて大変でしょう。せっかくなら、ここにいる全員に、情報を共有をしたいのです。」


 チェンの言葉に、零は疑いの目を向ける。


「なんのつもりだ…………?」

「蛍と踊子さんが戦っている間、僕らが悠長に話しているなんて不公平でしょう?ですので、ここで僕と蛍の魔法を明かそうと思いまして。ここは、一時休戦としましょうか。」


 蛍は動きを止め、大剣を武器石(ウェポンブロック)に戻した。

 踊子は槍を武器石(ウェポンブロック)に戻して零の隣に立つ。

 ついさっきまで火山が噴火したように燃え上がっていた炎が消え、辺りが静かになる。


「変装魔法について教えるとは言っていたが、もう全てわかったんじゃないのか?」

「全て、ではありませんよ。そうですね………貴方達が持っている情報だと、変装魔法の理解度は七割、八割ほどでしょうか。せっかくなら、全てを知っていただこうかなと。」


 チェンは微笑みながら言う。


「僕が三、四年前に得た変装魔法。これは20分間、触れた人に変装する事ができる魔法です。加えて、変装した人の口調・役職・使える魔法を知る事ができ、変装した人が使う武器や魔法を、変装された人よりもうまく使う事ができるのです。」


 チェンは頭上に魔法陣を出し、自身を通すように魔法陣を動かす。すると通り抜けた場所から姿が変化し、耐笑の姿となった。


「な…なので……このように、耐笑さん、の……姿に、なれば…………防御魔法も、使えるよう、になりますし………………」


 おどおどした様子で話す耐笑と変化したチェンは再び魔法陣を潜り抜け、踊子の姿へと変わる。


「こんな感じでっ、踊子さんの姿になって、踊子さんが知っている槍の技を使える事ができるようになるって事なんだ~!」


 声も、口調も、何もかもが本物と一致し、元気に話す踊子も姿をしたチェンを前に、零は納得する。


「変装された人よりもうまく武器を使う事ができる……だから、猫が負けたんだな。」


 踊子に変装したチェンは魔法陣を潜り抜け、元の姿に戻った。


「その通りです。面白いですよね、偽物が本物に勝ってしまうなんて。絵本でもそのような話はありませんよ。」

「……聞きたい事がある。なぜ、何も盗まずに不法侵入を繰り返すんだ?」

「あぁ、その事ですか。あれはただ変装する人のバリエーションを増やしたいだけです。犯罪がばれるとすぐに捕まってしまいますからね。短期間で何度も事件を起こすのであれば、変装する人のストックは残しておくものですよ。そもそも、僕らは金銭にあまり興味はありませんしね。」

「そうか……」

「さて、僕の話はここでおしまいです。蛍も、炎魔法について話しておいた方がいいでしょう。」

「なんで俺様まで……まぁいいけどよ。」


 蛍は頭を掻きながら言う。


「俺様は炎魔法全般が強化された状態で使えるだけだ。魔法っつうのは使えば使うほど使用者の魔力量が増えるからな。ライブの日だけじゃなく、暇つぶしに使ってんだ。」

(だからあんなに派手な魔法を出しても魔力切れを起こさなかったのか……魔力量が多すぎるせいで、一回の魔法に消費する魔力量が微々たるものになってしまったって事か。)

「魔法全般……強化された状態………………」


 七彩は小声で言う。


「射手矢、さん………………?どうか、しましたか………………?」

「チェンよりも……蛍の方が厄介…………そう思っただけだ………………」

「そ、そうで、しょう、か………………?」


 耐笑が首をかしげていると、チェンは零から距離をとり、微笑んだまま口を開いた。


「そういえば零さん、僕は変装魔法を使って一度やってみたかった事があるんですよ。」

「やってみたかった事………………?」


 チェンは頭上に魔法陣を出す。


「変装魔法は、変装した人が使う魔法を使う事ができる……この言葉の意味が分かりますか?」


 チェンの問いに対し、零は少し考える。その間に、チェンは零に変装した。変装した姿を見た瞬間、零はある事に気付いた。


「っ!まさか!!」

「気づいたようですね。」

(創作魔法を使うつもりか!!あの魔法は使われる側になると非常に厄介だ……使われる前に止めなければ………………!!!)


 零はチェンに向かって一直線に走ったが、蛍が零の前に立ちはだかった。


「くっ!邪魔だっ!!」

「俺らが勝つためなら、ここで足止めすんのは当たり前だろ?」

「創作魔法って言っても、あたしが知ってるのは氷と土の二つだけど……どっちも使われて困る魔法じゃなくない………………?」

「わたしも、そう、思います………………」


 耐笑と踊子が素性に「?」を浮かべる中、猫は状況を理解して体を起こし、前に出た。


「いいえ、零くんがあんな反応をするって事は、リベルタージュで作った魔法の中に、とても危険な魔法があるって事よ。チェンは、それを使うつもりだわ……!」

「おれ達は、それが何かは……全く知らない………………だが、変装魔法は変装された人より、武器や魔法が……強くなる………………おれ達が不利になる…その可能性が高い………………!」


 七彩はチェンに向かった矢を放ったが、蛍が生身で受け止めた。


「生身で受けるとはな……何としてでも、チェンに、魔法を使わせたいようだ…………!」

「俺様も気になるからな。リベルタージュを救った零が、どのような魔法を使ってリベルタージュを救ったのかをなぁぁぁ!!」

「いい足止めですよ蛍!さぁ、準備は整いました……!!今こそ、零さんの力を借りる時!!」


 チェンは空に大きな魔法陣を出し、大声で唱えた。


「創作魔法 隕石!!!!」


 しかしその直後、チェンの四肢が爆散し、紫色の血が飛び散った。

次の話は7月10日に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ