Rb.13.999... 全てをつかさどる神
「よしよし、順調だ……」
中心に上半分だけの球体のみが置いてある真っ白な空間にて、一枚の白い布を体に巻き付けたような服装と金色の腕輪やアクセサリーを身につけた男性が顔を球体に向けて小さく言う。球体には零達の様子が映し出されている。
「少しペースが速い気もするが、まぁいいだろう。やはり私の目に狂いはなかった…!」
球体は何も映さなくなり、男性は少し見上げる。
「これなら数か月もあれば、彼は神になるだろう。実に楽しみだ…!」
「失礼するヨ~」
男性が期待を胸に言うと、何もない場所から突然白い布と鍵穴がたくさんある鎖を巻いた男性がじゃらじゃらと音を鳴らしながらもう一人の男性に近づく。
「…………はぁ」
目を仮面のような何かで隠した男性は肩を落とし、ため息を漏らす。
「おいおい酷いナー、せっかくオレが来たってのにヨー」
「お前がいつも面倒事を押し付けてくるからだろう…………日頃の行いだ。」
「んまぁそれもそうカ。」
瞳の中に鍵穴があり、腰に数えきれないほどの鍵を下ろした髪のない男性は微笑する。
「他の神から聞いたヨ。全の神~、君サァ、新しい実験体を見つけたんだっテ?」
男性の言葉に、全の神と呼ばれた男は睨む。
「オオ~こワ。」
その様子にもう一人の男性はからかうように笑う。
「鍵の神 マフテアフ、言ったよな?次はないと。」
「サァ?何の事やラ。」
マフテアフと呼ばれた男性は両手を方の真横まで上げ、馬鹿にするような表情で首をかしげる。全の神はそのふざけた様子に怒り、魔法を放とうとする。しかし全の神は直前で止めた。
「ン~?珍しいネ。君が魔法を出さないなんテ。」
「出したところで、君に当たらないからな。」
「そうだネ。でも、いい加減諦めたラ?君だってわかっているだロ?こんな事、もう意味がないってサ。無駄だってわかってるのに同じことを繰り返すなんテ、とても無意味だと思わなイ?」
「たとえ全員が何と言おうと、私はこのやり方を変えるつもりはない。私は、諦めるつもりもない。最後に笑うのは、私なのだ。」
「ふ~~~ン…」
マフテアフは少しつまらなそうに言う。
「でも君サ、今回で何回目の挑戦だと思っているんダ?オレの覚えている限りではもう」
マフテアフが話していると、全の神はマフテアフの口を手で塞いだ。
「黙れ。今更回数など関係ない。私は零を信じている。」
全の神の言葉に、マフテアフは何か言いたげな表情をする。数秒後、全の神はマフテアフから離れる。
「………そーかイ。まだ信じル、というのカ。この無限ループニ。」
「信じないといつまで経っても突破口は開かない。だから信じるしかないのだ。」
「ヘェ、そんな暑いところ申し訳ないんだけどサァ、上の方から命令を伝えに来たのサ。」
「命令?」
マフテアフの言葉に、全の神は聞き返す。
「『全の神 オムニス、直ちに 有栖川 零 を殺し、存在を抹消せよ』だってサ。」
「…………………………………………は?」
他の神からの命令に全の神 オムニスは混乱する。
「次の子の名前、有栖川 零だっテ?アリスってあだ名がつきそうな名前だナ~。」
「な、なぜ…急に……今まで、そんな事…………!?」
「サァ?オレはなぜこんな命令をするのかわからなイ。わからないから直接聞いてみたのサ。オレも気になったからネ。そしたらサァ、なんて答えたと思ウ?」
マフテアフの楽しむような言葉に、オムニスは言葉が出ず呼吸が浅くなる。
「『 有栖川 零 は君の管理する世界だけでなく、他の世界でさえ滅ぼしてしまう危険性がある。そうなる前に消したほうがいい。』だっテ。それを聞いた時サァ、オレすっごく驚いたんだよネ!君がいいと思ってやっている事ガ、世界の滅亡につながる可能性があるなんてネェ!」
マフテアフは楽しそうに言う。
「っっっっっっっっそんなわけがない!!!!!」
オムニスは全力で声を出す。
「ン~?上の命令を無視するというのカ?」
「零が世界を滅ぼすだと!?彼がそのような事をする人だと思って言っているのか!?」
「ン?何言ってんノ?」
オムニスは怒号を上げて言うが、マフテアフは冷静に言う。
「零は犯罪者に対しても優しい一面があった!それは事実だ!!そのような人が世界を滅ぼすなどありえない!!!!」
「…………」
「それに、彼は今現在頑張っているんだ!その努力を全部水の泡にしろと!?ふざけるな!!!彼のやさしさは、絶対に他の神に認められ」
「勘違いすんじゃねぇよ。」
オムニスの怒号に、マフテアフは空気が変わったように酷く冷静で、怒りがこもったような声で言う。
「その有栖川 零ってやつがどんな奴かは関係ねぇんだよ。今すぐ消せって言ってんだ。犯罪者に優しいい?頑張ってる?知るかよ。こっちはすべての世界を守るために言ってんだよ。お前の都合なんか知らねぇ。一応、今すぐとは言ったけど、零がいる世界で半年以内に目的を達成できたのであれば、この命令はなかったことになるそうだ。でも、今のお前に、そんな事ができるのか?」
「…………………………………」
「はぁ、上は優しいね。世界が滅ぶかもしれないのに猶予を与えるなんて。優しすぎる。ま、せいぜい頑張ってみなよ。世界を滅ぼすなんて、ひっどい結末にはすんなよ。」
マフテアフはそう言って姿を消した。
半分の球体とオムニスだけがいる空間で、オムニスは立ち尽くす。
「零が、世界を滅ぼす…………そんな、はずが……………………」
オムニスは嫌な考えを振り払うように頭を振り、気持ちを切り替える。
「いや、そんなはずはない。絶対、そんな結末にはさせない!今に見てろ、私は、彼を神にしてやるからな!!!!」
オムニスはそう言って決意した。
次の話は5月12日に投稿予定です。




