Rb.13.5 第一章の小話
本編に入れたかったけど入れるタイミングを失った小話を集めました。
ほぼセリフだけなので少し読みづらいかもしれません。
暇つぶしに読んでください。
『アイテムボックス』
(零と二菜が出会ったばかりの話)
零と二菜が都市へ向かう時…………
「零、ずっとその分厚い本を持っているけれど、アイテムボックスに入れないの?」
「アイテムボックス?」
零は首をかしげる。
「えっ、知らないの?うそでしょ…………!?」
零の様子に二菜は足を止めて驚く。
「アイテムボックスは魔法使いでもそうでなくてもたいていの人が持つ空間魔法で、ずっとそばにある自分専用の荷物入れって感じかしら。」
「自分専用の荷物入れ…………」
「うーん…………常識なのだけれど、本当に知らないの?」
「うん、初めて聞いた…………」
(…いや、そういえばこの本に書いてあったな。)
「もしアイテムボックスを使えるのなら、使っておいた方が楽よ。ここで教えてあげよっか?」
「そうしてくれると助かる、かな……」
「わかったわ。とはいっても、やり方は簡単なのだけれど。頭の中に袋や箱など、とにかく収納に使える物をイメージして唱えると使えるわよ。」
(収納に使える物をイメージ……)
「く、空間魔法 アイテムボックス!」
零が唱えると、目の前に大きくも小さくもない白い穴が開いた。
「これが、アイテムボックス?」
「そうよ!成功ね!一発で成功なんてすごいわ!アイテムボックスは魔法使用者の魔力量に比例して容量も増えていくから、魔力量を増やしておいて損はないわね。この魔法は慣れると唱えなくても頭の中で唱えれば使えるから、唱えれば唱えるほどお得よ!」
(お得、なのか……?)
零は分厚い本を白い穴に入れると、穴は閉じ、まるで何事も起きなかったかのように元通りとなった。
「さて、アイテムボックスも覚えた事だし、都市へ向かうわよ!」
零と二菜は足を進めた。
『付き合い』
(三奇と四炉に会う前の話)
「二菜と正哉っていつ会ったんだ?」
とある宿の中、零と力斗と二菜と正哉が床に座って話していると、力斗が二人に質問する。
「いつ……大体二、三年前くらいじゃないかな。」
「そうね。私が学校を卒業した後、仲間作りに一年程励んでいたのだけれど、私の実力に会う人がなかなかいない上に、魔王討伐を目指している人があまりいないのよね…」
「魔王討伐を目指してない……リベルタージュではそれが普通なのか?」
「リベルタージュではそうかもね。そもそも、ここから魔王城まで距離があるから、魔王城に向かうだけでも体力と費用を必要とするんだ。魔王討伐を目指す人は魔王城に隣接しているヴォルカンに集まっていると思うよ。ヴォルカンはリベルタージュと違って中級、または上級者向けの魔物が多く生息していてね、魔王討伐を目指すにはちょうどいいのさ。」
「距離って、具体的にはどのくらいなんだ?」
「えぇと、ここから魔王城だけで最短で10日はかかるわ。でもそれは道中で何も起きなかった場合であって、実際はもっとかかると思った方がいいわね。」
「最短で10日…………遠いな。」
「テレポートがあれば半分以上短縮できるけれど、それでも時間はかかるわ…」
「それでも魔王討伐を目指すなんて、二菜はすごいな。」
「そう?それで言うならここにいる四人皆すごいと思うのだけれど…」
「いったん話を戻すとして、さっきも言った通り二菜は仲間を集めるために一生懸命努力していたんだけれど、誰一人として二菜と一緒に行こうと考える人がいなくてね…………二菜自身顔は広いのに、それでも一緒に目指す人がいなかったなんて、初めてそれを聞いたときは驚いたよ。」
「そんなに有名なのか?」
「リベルタージュ出身の魔法使いや、冒険者なら、知らない人はあまりいないんじゃないかな。」
「そうなのか。」
「正哉はどうだったんだ?仲間作りとかしていたのか?」
「いや、僕は元々一人で目指す予定だったんだ。でも冒険者ギルドで明らかに落ち込んでいる二菜の姿を見かけてね。声をかけていろいろ話した結果、目的が一致している事を知って一緒に組む事になったのさ。」
「落ち込んでいたんだ…………」
「そりゃそうよ…だって一年頑張ったのに誰一人私と組みたいって言ってくれる人がいなかったのよ…?」
二菜は過去を思い出し、目の光が消える。
「だから正哉が魔王討伐を目指しているって聞いた途端、とてもうれしかったの。やっと見つけたって…」
「そうだね。僕としてもうれしかったよ。そういえば、力斗はどうだったんだい?仲間作りをしようと思った事はあったのかい?」
正哉の質問に、力斗は腕を組んで考える様子を見せる。
「俺はなぁ…仲間を作りてぇとは思ったけどよ、俺と肩を並べられる奴がいなかったんだよ。」
「あぁ……」
力斗の言葉に三人は納得する。
「ま、これは仕方ねぇなと思って仲間作りは諦めてたんだよ。だが、まさかこうなるとはな。昔の俺にゃ、予想もつかない出来事だろうな。」
「あはは!そうかもね!」
「零はどうだったんだ?」
「俺は…冒険者ギルドに登録した途端選ばれた数字だと判明して、すぐに仲間ができたから、仲間が欲しい欲しくない考える前にできちゃったよ。」
「まじかっ。お前運いいな。」
「そうかも。」
「零と初めて会った時が衝撃的だったわ………」
二菜はあの時の事を思い出し、軽くため息をつく。
「何があったんだ?」
「えぇと……それは…………」
二菜は零と初めて会った時の事を簡潔に話す。すると力斗は目を見開いて零を見る。
「お前…………さては馬鹿なのか?」
「10体以上の魔物に囲まれて優雅に本を読むなんて考えられないわ…………」
「うぅ…………」
「まぁまぁ、結果二菜に会えたんだしいいじゃないか。」
「それもそうねぇ…………」
四人はその後も会話を続けた。
『13の目的』
(零達が探也と遭遇した後の話)
「~~~~~~♪」
毒道の森の中で、『知恵の数字』のリーダー 十三 探也が口ずさみながら歩いていると、目の前に大人の頭程の大きさを持った魔法陣が現れる。
「おや?この魔法陣は……」
探也は魔法陣に触れる。すると魔法陣が二回り小さくなり、女性の声が響く。
「あ~あ~、聞こえてる~?」
「聞こえてるよ~」
「よかったぁ~。こちら『14』、調子はど~う~?」
「収穫あり、かなぁ。」
「おぉ~、それじゃぁ、次の報告会が楽しみだねぇ~♪」
『14』と名乗る少し高い声を持つ女性は、歌っているかのように話す。
「そっちはどう?」
「こっちはぜぇんぜん~。事件の手掛かりが出てないよぉ~……………………」
「そっかぁ、まぁ、近頃『0』がそっちに行くと思うから、事件に関しては何とかなると思うよ。」
「あらそ~なの?そ~れなら安心だねぇ~。とうとう『0』が現れたのね~♪」
「そうだねー!やっとって感じ!」
「皆に報告しないと、だね~~。嬉しいなぁ~~~会えるのが楽しみだな~♪」
「もし彼らに会って何か困っていたら、手助けを願いするよー!」
「もっちろんだよ~~♪」
「…言葉は、ちゃんと選んでね?」
「ん~♪なぁんのことかな~?」
女性はふわふわした声を出し、探也は悩む動きを見せる。
「あぁ~~そ~だ~♪『21』と『22』は今フィシに向かっているんだっけ~?」
「うん、そうだね。どうかしたの?」
「しばらくフィシで待機してもらおうかな~な~んて♪」
「うーん……それはどうだろ……待機してくれるかなー………」
「理由がはっきりしていれば待機してくれるんじゃないかぁな~~」
「それもそうだねー」
「それじゃぁ、14はすることがあるから、そろそろ切るね~~♪」
「わかった。頑張ってー」
「は~い♪」
『14』はそう言った直後、魔法陣は消えた。
「…………リベルタージュは何とかなるけど、サフラー、フィシ、ヴォルカンでは上手くいくかな~?一番不安なのは、14が使う言葉だけど……ま~解決の手口につながるのならいっかー!さ、もーどろっ!」
探也はそう言って都市に向かった。
『兎と狸』
「三奇って兎の獣人なんだよね?兎族の皆は声帯がないの?」
冒険者ギルドのとある酒場で六人が四角のテーブルを囲むように座って話していると、零がふと疑問に思った事を話す。零の問いに対し、三奇は長い耳をかすかに揺らしながらホワイトボードにさらさらと文章を書き、零に見せる。
【一族全員声帯がないわけじゃないよ。むしろそっちの方が多数だね。細かい事はわからないけど、大体50人に1人いるかいないかなんじゃないかな。】
「すごく少ないんだね。そういえば、兎族には耳が垂れている人と垂れていない人がいると聞いたんだけど、それは本当かい?」
【そうだよ!耳が垂れている人は5人に1人くらいいて、私のお母さんは耳が垂れているよ!!】
「兎族の中でも様々な人がいるんだな………耳が垂れていて声帯のない兎族もいるのかな。」
【どうだろう………?私は聞いたことないなぁ。】
「兎族だけじゃなくても、狸族にもそういう変わった特徴を持つやつがいるんじゃねぇか?」
「変わった特徴って………………」
「無論、存在する。だがその差異は些細な物。せいぜい 尾 の長短程度に過ぎない。とはいえ、この世界では長き尾を宿す者の方が幾分多いようだがな…………」
・・・。
【もちろんいるよ。でも違いは尻尾の長さくらいで、尻尾が長い人の方が多いんじゃないかな。だって。】
三奇の翻訳に、力斗は少しため息をつく。
「前々から思っていたんだけどよ、どうして四炉はそんなしゃべり方をしてんだ?」
力斗の質問に四炉が立ち上がり、決めポーズをする中、三奇はペンを進める。
「それは幼き頃…肉親から授けられた書」
【子供の頃に親が買ってくれた本に好きなキャラクターがいたから真似をしているんだって。】
四炉が言い切る前に三奇は答えを出す。先に答えを言われた四炉は決めポーズをしたまま静かになる。
「親が買ってくれた本…………どんな本なの?」
【えーーーと……なんだっけ…………?ごめん、忘れちゃった。】
「我もあの存在の姿は、今もなお脳裏に刻まれている。だが、その器たる書の名は、深き霧に沈んだままだ。まるで何者かに封じられたかのように、題名のみ、何も思い出せないのだ……………」
「まぁ、昔の話だからね。覚えていなくても仕方がないよ。」
「狸とは関係がないの?」
【ないよ。】
「ない。」
二菜の問いに二人は同時に顔を横に振る。
「ないんだ……」
「あったらあったで少しおかしいとは思うけどね…」
正哉の言葉に、四炉は口を開く。
「関係があろうとなかろうと、そんな因果の鎖など、些末に過ぎない。それは各々の魂に刻まれし唯一無二の紋章…………すなわち 異能 の証明だ。光と闇、相反する性質すら混ざり合い、世界は歪にして完全となる。万人が同じである必要などない。否、異なるが故に、この現世は成立している…………それこそが、 生 という名の理……………………」
四炉は別の決めポーズをして言ったが、誰にも伝わらず、三奇でさえ思考が停止する。辺りが10秒程静かになると、四炉の顔が少し赤くなり、すっと座って俯きながら話す。
「………………関係があってもなくてもいいじゃん…………皆違って皆いいんだから……………………」
長い沈黙に耐えられなかった四炉の小さな声に、四人はぽかんとする。
「……………………ぷふっ。」
突然、二菜が吹き出して笑う。
「くくくっ…………」
「なっはははははははははは!!!!」
それにつられて零、正哉、力斗、三奇が笑いだす。五人は笑い続けたが、四炉は顔を見せずずっと俯いていた。
『学力』
「突然だけどテストしようと思うの!」
へルート魔法学校附属国立図書館にて、五枚の紙を持った二菜が裏があるかのような笑顔で言う。
「帰るわ。」
【私も】
「僕も常識という名の世界の理を、一通り頭に刻み込んである。だから問題はない。」
そう言って三人はその場を離れようとするが、二菜が行く手を阻む。
「正哉!零!」
二菜が叫ぶと、零と正哉は三人の腕を掴んで動きを止める。
「やめろっ!離せっ!もう勉強は懲り懲りなんだよ!!!」
【帰してーーー!!!!】
「知識など、時の檻に縛られるものではないはずだ……それでもなお、なぜ今この瞬間にそれを求める!?」
「今この瞬間だからよ!!あの勉強会の時、私と零は大丈夫だったけれど、皆は二、三時間で倒れていたよね!!だから一旦勉強し直さないっていう提案なのよ!」
「意味わかんねぇよ!意味ねぇって!!」
「意味あるよ!!」
「ねぇって!」
「あ・る!!」
【っていうか、零はともかく正哉はなんとも思わないの!?】
「いや、どうせ二菜の手からは逃れられないし、もう諦めるしかないのさ。」
正哉は死んだような目で言う。
【やぁだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!】
力斗、三奇、四炉は元の位置に戻された。
「さて、今からリベルタージュに関する問題と魔物に関する問題、そしてこの世界の常識についての問題を取り入れたテストをするわ!皆、準備はいい?」
裏返しにされた紙とペンを渡した二菜は元気に言ったが、返事をしたのは零と正哉だけだった。
「ちょっと、力斗と三奇と四炉!ちゃんと返事して!」
二菜は三人を叱ると、何もしていないにもかかわらず死んだような顔と声で返事をした。
「問題は全部で10問、満点取れて当然なんだから、頑張ってね!制限時間は五分、それじゃ、よーい、スタート!!」
二菜は元気に言った。
五分後…
「はいっ、しゅーりょー!皆、紙とペンを置いて!紙は私が回収するわ!採点するからちょっと待ってて!!」
二菜はそう言って五枚の紙を回収して席を外す。
数分後…
「採点が終わったわ!今から順番に点数を言っていくよ。」
五枚の紙を持った二菜が席に戻ると、力斗と三奇と四炉が祈る様子を見せる。
「まず、零、あなたは90点よ。一から学び始めたにしては十分ね。」
そう言って二菜は一枚の紙を零に渡す。そして二菜は正哉にたくさん丸を付けられた紙を渡す。
「正哉は100点、流石ね!」
「思っていたより簡単で安心したよ。」
正哉の言葉に、三人は固まる。その様子を見た零は察する。
「……………そして、残りの三人。」
二菜は三人に目を向け、影のある笑みをこぼす。
「90点よ。三人合わせて。」
二菜はそれぞれ『30』と書かれた紙を渡す。それを見た三人は体がかすかに震え、ただちに去ろうとする。しかし零と正哉が三人の腕をつかみ、動きを止める。
「っくそ!!正哉!!お前なんでこういう時だけ力強ぇんだよ!!!普段そんなに強くねぇだろ!!」
「力斗、時に人は普段の倍の力を引き出すものだよ。」
「意味わかんねぇよ!!」
「なるほど…火事場の馬鹿力というやつか……」
「違うと思う。」
零がはっとしたように言うが、二菜がすぐさま否定する。
「………………さて、力斗と三奇と四炉。」
二菜は正哉によって席に座らされた三人の前に立つと、満面の笑みで言った。
「今から、補習しよっか♡」
たくさんの参考書を見せる二菜に、三人は絶望して膝から崩れ落ち、零と正哉は三人の監視に徹した。
次の話は5月10日に投稿予定です。




