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定められた物語<ログストーリー>  作者: 霖雨 晴流
第一章 自由都市と言霊
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Rb.13 リベルタージュからの出発

 六人は城の中で採寸をした後、サフラーへ向かうための知識の準備としてへルート魔法学校附属国立図書館で知識を得ることにした。


「なるほど…サフラーって道がかなりごつごつしているんだな。」

「そうね。だから馬車だとガタガタ揺れて安定しないわ。だからリベルタージュとサフラーの国境までテレポートして、その後は歩いていくしかないわね。」

「リベラ王はここからサフラーの村に行くまで馬車で数日かかるといっていたけど、それは地形の問題があるからなのか?」

「おそらくそうね。ただそれはここからサフラーの村まで直線に進んだ場合の話であって、実際は複雑な道になっているかもしれないから、そうねぇ……4日はかかると思っていたほうがいいわ。」

「4日か……思っていたより時間がかかるな…」

「しかも仮についたとしても、体力はかなり減っているでしょうしね。何せ馬車の中はずっと不安定だもの。ちゃんと眠れるとは思えないし、揺れて頭をぶつけるかもしれない。最悪、馬車が倒れる可能性だってあるわ。」

「馬車が倒れる…そんなに揺れるのか…」

「サフラーが岩石の国と言われる原因ね。リベルタージュと比べて緑が少なく、辺りにあるのは砂と石と岩。あとメサと呼ばれる台地状の地形くらいかしら。道は作ってあるのだけれど、風の影響で石が道の上に乗ってしまうから、どうしようもないのよ。」

「じゃあ移動手段に馬車はあまりおすすめできないのか。」

「そうね……それでも馬車に乗るというのなら、一から荷台を作ったほうがいいわ。国を越えて移動する馬車は車輪が細いからサフラーでは倒れやすいわ。」

「なるほど。テレポートだと何日かかるんだ?」

「使用者の熟練度によるけれど、私の場合は半日で着くと思うわ。テレポートは自身を中心に一定の範囲内を自由に移動できる魔法。その一定の範囲内とは魔法使用者の熟練度と魔力量に比例するわ。まぁテレポート自体高難易度の魔法で多くの魔力量を消費するから、短くても50メートルは飛べるわね。」

「テレポートって真上にも飛べるのか?」

「飛べるわよ。使い道はあまりないけれど…テレポートは移動距離に比例して消費魔力量が多くなるから、使うなら気を付けておいたほうがいいわ。」

「なるほど…」

【零、二菜…………もう休憩しようよぉ………………】


 熱心に話し合う二人に、耳が垂れた三奇がホワイトボードを掲げる。


(なんか既視感が…)

「なんだかこの状況、既視感があるわね。」

「そりゃイロカ討伐の前にここにきて勉強会をしたからだろ…っていうかお前らよくそんな長い事勉強できるな……」

「まだここにきて2時間しかたっていないのに、もう疲れてしまったよ………」

「前回の勉強会と比べれば、今回は刻の流れなど微々たるもののはず…それなのに、この消耗はなんだ………以前よりも、明らかに深い…まるで見えぬ何かに力を喰われてしまったかのようだ………」


 死んだように机に伏せる四炉の丸い耳と尻尾は垂れたまま一つも動かない。


「うーん…前と比べて勉強のペースは落としているつもりなのだけれど……」

「どうりで、なんだか勉強の進みが遅いと思った。別にいつもの速さでいいと思うんだけど…」

「やめてくれ!もう脳が破裂しそうなんだよ!!」

「そうなのか……」


 零と二菜が残念そうな目で魂が抜けたかのように机に倒れている四人を見る。


「休憩って言っても、何をするの?私にとっては勉強が休憩なんだけれど……」

「学びながら休憩し、休憩しながら学ぶ。最高じゃないか。」

「どこがだよ!?俺にとっては苦痛でしかねぇんだよ!!!」

「あ、あの、お客様…どうか、図書館の中ではお静かに……」


 バンバンと机をたたく力斗に、司書が優しく伝える。


「す、すみません…」


 司書の言葉に、零と二菜は頭を下げる。司書はその場を去り、零と二菜は顔を上げる。


「はぁ…力斗、声を押えてくれ。あと机をたたかないでくれ……」

「悪いとは思ってる………けどよ、もう必要な知識は得たんじゃねぇの?気候、地形、歴史、魔物、特徴、全部調べたんだろ?もう出ようぜ。」


 力斗の言葉に、零は黙り込んで考える様子を見せる。


「……おい、零?どうした?」

「二菜、気になる事があるんだけど。」

「どうしたの?」

「へルート魔法学校附属国立図書館って、他国と比べてもここが一番本があるのかな。」

「えっ?ど、どうだろう………それはわからないけれど、他国に関する情報はたくさんあると思うわよ。」

「なるほど。」


 零は目を閉じて静かになる。


「お、おい、まさか………」


 そして零は目を開き、口を開けた。


「二菜、」

「ん?」

「今から、フィシとヴォルカンの勉強をしないか?」


 零の提案に二菜は目を開き、輝かせる。力斗は止めようとしたが、二菜が即答する。


「なるほど!いいわね!賛成!!!」

「おいまじかよ!?勘弁してくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 その後一日中、六人は図書館に閉じこもった。




翌朝




「国王様!選ばれた数字(ポインター)が二名、国王様に会いたいと訪れてきました!」

「む?二名………か。よろしい、通せ。」

「はっ!」


 兵士は王室を出ると、玉座に座っていたリベラ王はすっと立ち上がる。


「二名、二名か…何かあったのか……?」



 城のエントランスホールにて、零と二菜は兵士と話していた。


「今日はどのようなご用件で?」

「大した要件ではないんだ。サフラーに関する知識を身につけてきたから、あとは何をすべきか聞いてみようと思って。」

「そうでしたか。ただいまリベラ王をお呼び中ですので、しばらくお待ちください。」

「いや、待つ必要はないぞ!!!」


 真上から力強い男性の声が響き、数秒後、大柄な男性が高所から床を壊して着地した。


「はーーはっはっはぁぁぁ!!昨日ぶりだなぁ選ばれた数字(ポインター)達よ!!」

(なんだかまた既視感が…)

「お元気そうでよかったです。リベラ王。」

「うむ!有栖川 零も御守 二菜も元気そうだな!元気な事は非常に良い事だぞ!!他の選ばれた数字(ポインター)はどうしたのだ?」

「それが…」


 零は昨日起きたことについて話す。するとリベラ王は大きく笑った。


「はーはっはっは!まさか二人がそこまで勉強好きだったとはな!それだと、以前二人が来た時も、それが原因だったという事か?」

「そう、ですね。」


 零と二菜が頷くと、リベラ王はさらに大きく笑った。


「勤勉とはすばらしい!だが、勉強しすぎるのもよくないぞ?時には休憩もはさんでやらんとな!ところで、今日は何の用だ?この国を救ってくれた選ばれた数字(ポインター)の要件ならば、できる限り最大限の事をしよう!」

「いえ、大した事ではなくてですね…ある程度知識を身につけたので、他に準備すべき事は何かなと思いまして。」

「ふむ。それならもう準備することはないな。衣類についてなのだが、オーダーメイドを頼んだところ明日完成するみたいだ。だから、今日はゆっくりするといい。報酬と食料も、出発の日に渡すとしよう。」

「わかりました。ありがとうございます!」

「これくらい君達の活躍と比べれば些細な事だ。感謝される程でもない。」


 零と二菜はリベラ王に挨拶をして城を出た。


「…………さて、何しよっか?」

「完全に暇だ…そうだ!」


 零は思いついた動きをする。


「観光だ!観光をしよう!!」

「おぉ!いいわね!それじゃ、今日は遊ぶわよ~!!」


 零と二菜は一緒に走り出した。




「それで、零と二菜が思いのほか観光が楽しくてリベルタージュを一周した結果、疲労が溜まりに溜まって城の前で倒れてしまったと。」


 その夜、療養室にて、ベッドの上で横になった零と二菜の前で正哉があきれたような声で言った。


「正解…」

「はぁ……まったく、いったい何をしているんだい………?」


 正哉が右手を額に当てて悩む様子を見せる。


「いやぁ、やっちゃったね!」

【すっごく心配したんだよ!?フラフラな状態で城の前に来て、兵士と話していたら突然倒れただなんて…奇襲でも仕掛けられたのかと思ったよ!!!】

「ごめん…」

「これ、明日どうする?」

「明日も休んでおいたほうがいいかもね。半日いたるところに歩き回っていたならば、疲労も一晩で回復するとは思えない。」

「刻はまだ尽きてはいない。無理に進めば、己の器が砕け散るだけだ。今は静寂の中で力を蓄えるといい。」

【時間はまだあるから休んでおいたほうがいいって!】

「じゃあ、明日は休むとするか…」

「あはは…」




翌日、零と二菜は療養室で一日中休んだ。




そのまた翌日




「よし、やっと全員が元気な状態で集まる事ができたな。」

「主に零と二菜が原因だけどな…」

「まぁまぁこういう日があってもいいじゃない。」

「それで、この後はどうするんだい?」

「リベラ王は衣類と食料の準備はできているといっていたから、可能なら今日出発したいんだけど…」

「それ、昨日も言っていたよね…私としては、まだお母さんやお父さんに連絡していないから、ここを出る前に挨拶をしておきたいのだけれど…」

「この別れが永遠の断絶へと変わる可能性も否定できない。だからこそ、我の両親には、せめて最後の言葉を残しておきたいものだ。」

(両親、か………俺にはいないんだよなぁ…)

「うーん…………じゃあ、俺は先にサフラーに行って、力斗達は後で来るっていうのはどうだ?それなら問題はないはず。」

「なるほど。それなら確かに問題はないね。」

「そうかな?零の魔法は消費魔力量が多くて大変な事になるから、一緒に行った方がいいと思うんだけれど……」

「使わなければ問題はない…はず。」

「なんか、零の反応を見て俺も心配になってきたな…本当に大丈夫か?」

「なんとかなると思っている。」

「なんとかなるといいんだけれど………」

「二菜が零をサフラーの村の近くまでテレポートして、二菜だけが戻ってくるというのはどうだい?」

「魔力消費量が激しいから、国境付近までしか行けないかも…」

「それで問題はない。後は何とかする。」

【だ、大丈夫、なのかなぁ…?】


 五人が心配する中、零は決意したかのような声で言う。


「戦いは極力避けようと思う。もし魔物に会ったとしても、すぐに逃げれば何とかなると思っている。俺は皆と初めて会った時より強くなっているんだ。だから大丈夫。」

「それなら…いい、のかなぁ…?」

「ま、ここは零を信じようぜ。もしかしたら、サフラーで別の選ばれた数字(ポインター)に会うかもしれねぇし。」

「そうだね。零を信じるとしよう。」

【でも、地図とコンパスは持っていくべきだと思うよ!!】

「地図という世界の写し絵を手にしていようと、方角という導きの羅針を失えば人は彷徨うしかない。逆もまた、同じ運命をたどってしまうのだ……」

「じゃ、後で店に行くとするか。」


 六人はリベラ王に挨拶し、零だけ報酬と食料と衣類を得た後、城を出て地図とコンパスを買い、東の門へ向かった。




 東の門の出口には、黒の王衣に金色の刺繍が施された大柄の男が、仁王立ちで零達に背を向けていた。


「リベラ王!どうしてここに!?」

「む、そろそろ、君達がここを出るのではないかと思ってな。私の予想は合っていたみたいだ。」

「まさか、リベラ王直々に来てくださるとは思いませんでした。」

選ばれた数字(ポインター)の『0』を送り出すというのに、私の部下を送るわけにもいかん。国を代表する者が行った方がいいだろう?」

「そういうものなんですか?」

「そういうものだ。」


 門を出てすぐのところで力斗、三奇、四炉、正哉は足を止め、零と二菜は足を進め、数メートル進んだ後に足を止めて振り返る。


「じゃ、俺は先に行くよ」

「気ぃ付けろよ!何があっても、ぜっっっっっっっっっったいに死ぬなよ!」

「二菜、零をお願いするよ。」

「まっかせて!とはいっても、私もすぐに分かれるんだけれど…………」

【サフラーの村でまた会った時、案内お願いね!】

「たとえそれが束の間の離別にすぎぬとしても、この胸に落ちる影は消えはしない…………だが運命の歯車はいずれ再び交わる。再開の刻を、心の奥底で待ち望んでいよう。」

【一時的な別れとはいえ、悲しいものは悲しい。また会えるのを楽しみにしているよ。だって!】

「…………………………………………また、会おう。」

(…………?)


 リベラ王の含みある言い方に、零は疑問に思った。


「それじゃ、いくよっ!」


 二菜は武器石(ウェポンブロック)を杖に変え、魔法を唱えた。


「空間魔法 テレポート!!」


 その瞬間、零と二菜の姿が消えた。五人だけが残った東の門の前、小さな風が、リベラ王の王衣をかすかに揺らす。


「……………………………………………………………………………………」


 リベラ王は何も言わず、ただ遠くをじっと見つめていた。


「リベラ王?どうかなさいましたか?」

「いや、何でもない。選ばれた数字(ポインター)が、無事に帰ってきてくれる事を願っただけだ。」


 リベラ王は落ち着いた様子で言った。この後どうなるのか、漠然と知っているのにもかかわらず。




 リベルタージュとサフラーの国境で、零と二菜は姿を現した。


「っと、よし、ここが境界線ね。」

「あっちがサフラーか?草が全く生えていないな…………」


 零は緑のない地面を見て言う。


「まぁサフラーって岩石の国だし。見方によっては砂漠ともいえるからね。この道をまっすぐ進めば村に着くはずよ。」

「あぁ、ありがとう。」


 二菜は杖を武器石(ウェポンブロック)に変えて元の位置に戻し、零の手をそっと握った。


「…………また、後でね。」

「別に長期間離れるわけじゃないんだからさ、そんな悲しい顔しないでよ。俺まで悲しくなってしまうだろ?」

「だって、ここまで一緒に勉強に付き合ってくれた人あまりいなくて…………」

(そっちなんだ……)

「ま、どうせ数日後会うんだし、そんな悲しまないでよ。」

「…………零、無茶しちゃ、だめだからね?」

「しないよ。」

「本当に?」

「本当だから。じゃ、行ってくるよ。」


 二菜は手を離した。


「またな。」

「えぇ、また。」


 零は手を振り、二菜は手を振り返す。零はサフラーに入ってまっすぐな道を進む。二菜はその様子を、零が点になるまで見届けた。


「…………はぁ、悲しいわね。私も、そろそろ戻らないと。一刻も早く、準備を終わらせなきゃ。」


 二菜は後ろを振り返った。すると二菜は違和感を覚える。


「一刻も…早く……あれ?何を?っていうか…」





「私、さっきまで何をしていたんだっけ?」





「そもそも、ここ……どこ?」

次の話は5月7日に投稿予定です。

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