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見参!スライムハンター  作者: だる飯あん
Part 1. 第2章 追憶のレジスタンス 編
95/290

95. 容赦は一切ございません

雄太はジグザグに飛ぶ様に向かってくる芽衣の前へと、芽衣が振りかざす六叉の刀の剣撃を防ぐ為に土龍の盾を瞬時に発現させた。


ガッ!


ボッ!


芽衣が切りつけた土龍の盾は、芽衣の刀によって軽く切られた瞬間に、小さく切られた切り口から勢いよく炎を吹き出して小さく爆発した。


「!?」


雄太の膨張は、燃焼耐性や火属性耐性があるにも関わらず、土龍の盾は今尚、小さな切り口から小さな炎をチョロチョロと吹き出しており、雄太は土龍の盾を蹴ってその場から離脱し、芽衣から距離を取る。


「なんなんだよそのイカれたスキルは!?頭おかしいんじゃねぇか!?」


雄太は驚愕しながらも、離れている芽衣の一挙手一投足を見逃さない様に全神経を集中し、いつでも動ける様に身体中の感覚を研ぎ澄ませた。


「いえいえ。橘花さんのスキルも十分おかしいですよ。完璧に切ったと思ったのに急に壁が現れて防がれるとか、どうやって出したんですか?しかもカナリ堅いですし・・・普通はもっと爆発するんですけどねぇ」


芽衣の口元は笑っているが、メガネの奥に見える目は、雄太を威殺すかの様にギラついていた。


「いや、アンタの頭の中の事を言ってんだよ!爆発ってなんだよ!?マジで殺す気じゃねぇかソレ!」


「当たり前じゃないですか?私、本気出すって言いましたよね?」


完璧に雄太を殺す気で攻撃を仕掛けてきた芽衣は、雄太の言葉に対して、何か問題でも?と言った様に首を傾げていた。


「当たり前ってなんだよ!?本気イコール、殺すのが当たり前って事なのか?」


「え?そうなんじゃないんですか?」


雄太は、今初めて、あの親にしてこの娘ありと言う、どこかのネジがイカれている親子の遺伝子を感じた。


「そっちがその気なら、こっちも手加減しねぇからな。男女平等で容赦無くボコってやる」


雄太は芽衣を睨み付けて、まるでスライムと戦っている時と同じ様に芽衣へと殺気を叩きつけた。


「アハッ!凄い殺気ですね!やっと本気を出して頂けるんですね!」


芽衣は雄太の殺気を受け、ビクンッと身体を小さく震わせて、頬と耳を紅潮させながら濡れた様な目で雄太を見つめた。


どうやら、芽衣は大人しそうな容姿からは想像できないくらいの戦闘狂の様だった。


『シス。膨張を俺の足元から分離させて、アレにバレない様に薄くして地面へと広範囲に広げろ』


『ロジャー』


シスは雄太に言われた通り、雄太の足元から土龍で地面へと偽装させながら、まるでアーススライムの様に広範囲に渡って薄い膨張を拡散させた。


「それじゃ、次はこっちから行くぞ」


雄太は右手に発現している赤腕を瞬時に筒状へと変形し、芽衣へと向けて銃弾と同じ様なサイズのスライム弾を連続して発射する。


「!?」


芽衣は雄太から発射されているスライム弾を躱す為に、距離を取って大きく左右へと移動しながら走り出した。


芽衣はスライム弾の弾幕によって、雄太へと近づく事ができなくなった。


「クッ!?そうきましたか!橘花さんは遠距離攻撃もできるんですね!」


芽衣は雄太から連続して発射されるスライム弾を躱すので精一杯になり、走り回って無駄に体力を消費していく形となった。


(やはり、人間には飛び道具が効果的だな。数の暴力で無力さを味あわせてやる)


雄太が芽衣へと放っているスライム弾は、現在もスライムダンジョンでバルーンスライムを吸収し続けている為、いくら撃っても撃ち切るという事は無い。


更にはシスの補助によって、打ち出されてある程度の距離へいくと発現を解除し戻している為、まさに終わりのない射出となっていた。


雄太へと近づけない芽衣は、雄太から射出されるスライム弾を躱しながら、手にしている六叉の刀へと指で触れ、新たなスキルを発現させた。


「【十拳剣】転身!天羽々斬」


すると、今度は手にしている刀が緑色の風によってぐるぐると竜巻に包まれる様に姿を消し、芽衣の両手へと緑色の刀身をした忍者刀のような真っ直ぐな短刀が現れた。


両手へと短刀を発現させた芽衣は、今まで逃げ回っていた脚を、雄太へと向けて走り出す。


雄太へと向かって走ってくる芽衣は、腰を低くして腕を伸ばし、眼前で2本の短刀をクロスさせた後に勢いよく腕を開いた。


すると、短刀から、緑色をした無数の小さな斬撃が放たれ、雄太から発射されているスライム弾と激しく衝突した。


雄太の正面へと脚を止めて対峙した芽衣は、手にしている2本の短刀を何度も振って、雄太から発射されるスライム弾と正面から打ち合いだしたのだ。


雄太と芽衣の間には、雄太から放たれる無数の赤黒いスライム弾と、芽衣から放たれる無数の緑色の斬撃がぶつかり合い拮抗し膠着している状態となっており、その光景を見た木下は、口角を吊り上げて笑みをこぼした。


「芽衣に2本目をださせたか」


いきなりスライム弾の弾幕と撃ち合い出した芽衣を見た雄太は、エアロスライムとの戦いを思い出した。


(あの時は膨張もそこまでなかったし、必死だったからできなかったが、今、こうやってあの時の状況を改めて考えてみると、他にも色々とできそうだな)


この膠着した状況でもスライムダンジョンを踏破した雄太にはまだまだ余裕があり、エアロスライムの時に試していなかったことをし始めた。


『シス。スライム弾へと爆炎と一点突破を一緒にして付与しろ』


『ロジャー』


スライム弾へのスキルの付与が始まると、撃ち出されているスライム弾は芽衣の斬撃へとぶつかると爆発し、その爆発の中から現れる一点突破を付与されたスライム弾が、芽衣の斬撃を押し始めた。



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!



「嘘でしょ!?」


見た目の小さな弾に反して、盛大に次々と爆発しているスライム弾と、爆発の後からやって来る明らかに威力が上がっている弾によって拮抗していた斬撃を押し出され始めた芽衣は、短刀を振る手数をさらに増やすも、一向に押し返す事ができずに驚愕した。


(このままでは押し切られる!?)


芽衣は段々と迫ってきている爆発に対して焦りだし、爆発しながら近づいてくる弾幕が芽衣へと到着する前に右側へとサイドステップで躱した後に、弾幕から逃れる様にジグザグに走り出す。


「ハァハァハァ・・・」


芽衣は走り回ったり、激しく振っていた腕による疲労が溜まっており、目に見えて焦燥している。


(そろそろか)




一方、大鬼は、右手に力が抜けて気絶している細目の男の頭を掴んで持ち上げており、シニヨンの女は、細めの男が大鬼へと攻撃するための邪魔となって手が出せずに右手を前へと掲げて動きを止めていた。


「なかなかゲスい事するわね。でもね、それで私が攻撃できないと思ってるの?」


シニヨンの女は大鬼へと掲げていた右手下へと向け、スキルを発動させた。


「砂より生まれ、砂へと還れ!【シェティト】!」


シニヨンの女が地面へと手をかざしてスキルを発動させると、足元の地面が砂漠の様に細かくなり、シニヨンの女を中心に、円を描く様に波を打って蠢き出した。


大鬼は、右手に持っていた細目の男を横へと投げ、左手を前にして構えを取る。


シニヨンの女が下に向けていた手を前へと掲げると、持ち上がっていく腕と連動する様に地面から砂が柱の様に立ち上がっていく。


「彼者を冥界へと返せ!【ソカリス】!」


シニヨンの女がスキルを唱えると、立ち上がっている砂が隼の様に変形し、変則的な軌道を描きながら大鬼へと飛んでいった。


大鬼は変則的な軌道で飛んでくる砂の隼へと狙いを付けて拳を当てようとするも、スルリと躱されて拳を当てることができず、隼によって顔を下から打ち上げられた。


「ぐっ!?」


「これでお終いよ!【ソカリス】!」


シニヨンの女は周りに立ち上がっている砂の柱から大量の隼を発現させて大鬼へと嗾けた。


大鬼は、何体かの隼を叩き落とすことができたものの、変則的な軌道で襲いかかって来る隼の群れによって何度も激しく体を打ち付けられた。


大鬼が片膝をついたのを見たシニヨンの女は、手を上げて無数の隼を大鬼の周りへと滞空させる。


「あなたに勝ち目は無いわ。潔く負けを認めてくれるかしら」


シニヨンの女は勝ち誇った様に片膝をついている大鬼を見下ろしており、大鬼はシニヨンの女の顔を見ながら口角を吊り上げた。


「フン。ぬかしおる。少しは効いたが、お主の力ではワシを倒せぬのぉ」


大鬼は立ち上がって再度構えを取る。


「それじゃ、再起不能にしてあげるわよっ!!」


シニヨンの女が手を振ると、再度砂の隼が大鬼へと襲いかかった。


「もう軌道は見切ったわぃ」


大鬼は襲いかかってくる砂の隼へと拳を突き出して隼を爆散させて砂の姿へと散らす。


「なっ!?」


シニヨンの女は隼の軌道を捉えて拳を当てた大鬼へと驚いたが、それ以上に大鬼の背中から生え出ている巨大な2本の赤黒い腕へと目を奪われた。


同時に、大鬼のガントレットは、黄色いガントレットから、赤黒い色へと変わっており、大鬼は己の拳を覆っているガントレットに付与されている暴食にて、全ての理をむさぼり喰うかの様に、砂の隼を次々と砂の塵へと変えていった。


大鬼の両拳と背中から生え出ている赤腕による拳撃によって、シニヨンの女が発現させていた無数の砂の隼達は跡形もなく消え去ってしまった。


発現した全ての砂の隼を大鬼によって消されたシニヨンの女は、これ以上は大鬼をどうにかする攻撃方法がないのか、スッと両手を上げて降参の意を唱えた。


「・・・私の負けよ・・・これ以上は何をやっても貴方には勝てないわ」


大鬼は、両手を上げて降参の意を唱えたシニヨンの女へと向かって腰を落とし、虚空へと正拳突きを放って圧縮された拳圧を発生させて容赦無く吹き飛ばした。


「ガハっ!?」


「フム。なかなか楽しかったぞ」


大鬼は、周りの状況を確認し、吹き飛ばされて地面へと転がっているシニヨンの女へと背を向けて、エルダが座っている方へと向けてゆっくりと歩を進めた。

土日はストックの日となります!


次回、月曜投稿です!


引き続き楽しくお読みいただければです!

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[気になる点] 誤記報告 「それじゃ、次はこっちから行くぞ。雄太の右手に発現している赤腕は、瞬時に筒状へと変形し、芽衣へと向けて銃弾と同じ様なサイズのスライム弾を連続して発射した。 ⇒(カギカッコ…
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