46. 火山
雄太が火山に向かって走っていると、雄太の後ろから後を追う様に鬼人と大鬼が合流した。
雄太は合流した鬼人と大鬼をそのまま発現させた状態にし、火山へと向けて先を進める。
火山へと向かって走っている雄太達の前には、鬼人と大鬼に狩り尽くされた為なのか全くスライムが出てくる事がなく、雄太達は他を気にする事なく真っ直ぐに火山へと向かって脚を進める。
雄太達の眼前に見えて来た火山の麓には、山頂付近にある複数の穴から流れ出て来たマグマが堀の様になって火山をグルっと囲む様に溜まっており、眼前に広がっているマグマ溜まりによって雄太達は火口へと向かう脚を止めた。
「このマグマを渡れってのか? いや、多分アレだな。 何処かに橋的なヤツがあって向こう側に渡れる様になってんだろうな。 そうじゃなかったら誰がこんなの渡れるんだよ?」
雄太達がいるところから火山へは、幅が20m以上もありそうなマグマ溜まりが行く手を邪魔しており、通常だったらコレを迂回して向こう側へと繋がっている箇所を探す必要があった。
──そう、通常だったら。
「そんじゃ行くぞ」
しかし、雄太達はそのままマグマ溜まりの上を走り出す。
雄太が獲得した各種耐性により、雄太はマグマを触るのも水を触るのも同じと言う状態になっており、雄太達はマグマへと踏み込んだ脚が沈む前に次の脚を踏み出してと言う行動を交互に繰り返すと言った具合にマグマ溜まりの上を走り抜けた。
「なんとなくマグマの上を走ってみたけど、水より粘性があったから意外に楽に走れたな・・・」
雄太は、自身の背後に広がっているマグマ溜まりを見ながら火口へと向けて続けて走り出す。
火口へと向かう途中、火山に開いた横穴から麓へと向けてマグマが川の様に流れ出しており、雄太は火口から火山の内部へと入るよりはこの横穴を通った方が近道になるのでは?と思い、横穴から流れ出ているマグマの上を走って火山の内部へと入って行った。
雄太はマグマの川の上を走りながらエルダへと声をかける。
『エルダ。 これからガーディアンに接触する。 この階層のガーディアンの見た目は火? 炎? って事でいいのか?』
『あっ、ユータ? うん。 そうだけど・・・ 1層や2層と同じ様に大きくなっている筈だよ。 って言うか、アレ? 火口から火山に入らなかったの?』
エルダは雄太が火口から火山内へと入っていない事に対して疑問に思った。
『上まで行った後に、どうせ下に降りるんだろ? そんな事するより、マグマが垂れ流されていた横穴から入ればショートカットできんじゃねぇかなって思ってさ。 マグマが出て来てるって事は、このマグマの川も火山の中に繋がっているんだろ?』
『いや、繋がっているとは思うけど・・・ マグマの川の上を走るとか、人間としてはありえない行動だよね・・・』
エルダは雄太がマグマの川の上を走っている事に対してドン引きする。
『まぁ、確かに、人間的行動ではないよなコレ・・・ 俺もできたから何となくやっているってだけで、全く何も考えてなかったわ・・・』
『ユータらしいと言うか何と言うか・・・ まぁ、この事はとりあえず置いておいて、ここのガーディアンが守っている階段は石でできた祠みたいなのの中にあるから、今までと違って簡単に階段は探せると思うよ』
『そうなのか? まぁ、階段が簡単に見つかっても、どうせガーディアンと戦わなきゃいけないんだろ? 小さければ楽なんだが、どうせまたデカいんだろうな・・・』
『そうだねぇ。 戦わなきゃだねぇ〜。 確実に大きくなってると思うけど、下に行くには戦わなきゃだねぇ』
雄太は、どうせここも月日が経っているせいでデカいガーディアンと戦う羽目になると言う事に対し、少し面倒くさそうにガリガリと頭をかいた。
雄太がエルダと話しながらグネグネと曲がりくねったマグマが流れ出ている洞窟を進んでいると、急に開けた場所が現れた。
『あ!? ユータ!! ここだよ! ここにガーディアンが居るよ! 探知にも出ているよ!』
エルダの言葉と同時に、雄太のディスプレイへとスライムの存在を示すアイコンが現れた。
雄太が着いた開けた場所は、周りをマグマに囲まれた円形の広場があり、広場の中心にはまるでストーンヘンジの様な簡素な石の建物らしきものがあった。
広場の天井は火口から外へと向かって高く吹き抜けており、壁には火口をなぞる様に螺旋状に歪で長い階段が上へと向かって伸びていた。
「マジでショートカットできたな・・・ やっぱり登って降りるパターンだったな・・・」
雄太は、頭上の長い螺旋階段を見てショートカットできた事に心から喜ぶ。
『エルダ。 祠っぽいのはあったが、ガーディアンが全く見当たらないんだが。 どう言う事だ?』
雄太はディスプレイに映し出されているアイコンの場所を目で追うも、そこにはエルダが言う火の様なガーディアンらしき姿は全く無かった。
『もう少し祠に近づいたら現れるよ。 周りのマグマに隠れているから気をつけてね』
『マジか・・・ 先に聞いておいて良かったわ・・・ そんじゃ、さっさとやるとするか・・・ 赤腕はどれくらい出せる?』
『今、大きいの2体出しているから大体50本くらいかな? コントロールは私でやるから、ユータはいつも通りに指示をお願いね』
『あぁ、分かった。 そんじゃ一気に50いくぞ。発現!』
雄太はエルダとの会話を切って50本の赤腕を発現させる。
50本の赤腕は、雄太の背中からグニャグニャと蠢きながら発現されると、空中でシュルシュルと絡み合いながら2対の羽の姿へと変わり、雄太の背中へと位置をとった。
2対の赤腕の羽を発現させた雄太は、鬼人と大鬼を引きつれながら石の祠へと向けて歩を進める。
祠まで5mへと差し掛かろうとしたところで、円形の広場の周りにあったマグマがゴボゴボと激しく蠢きだし、至る所から天へと向けて大小様々なマグマの柱を立てながら円形の広場を囲い始める。
天へと向けて上がったマグマの柱は、空中で内側へと弧を描いて火の粉を散らせながら広場の中心にある祠の真上へと目掛けて一斉に落ちて来た。
空から雪や桜の花びらの様に無数に火の粉が降ってくる様は圧巻であり、周りを赤々と明るく照らしながらガーディアンは祠の上へと降り立った。
祠の上へと降り立ったガーディアンは、エルダが先に言っていた様に炎という事で間違ってはないが、その身体は凝縮され、まるで太陽の様な見た目であり、その体表からは無数のフレアの様な触手の様な炎の塊が吹き出して空中をゆらゆらと揺らめいていた。
「・・・見た目、完全に太陽じゃねぇか・・・」
現れたガーディアンの姿を見た雄太は、ソレの見た目に対して盛大に頬を引き攣らせる。
祠の上に現れたガーディアンは、直径約7m程の大きさの球体であり、1層や2層のガーディアンと違って若干小ブリではあるが、その身は炎やマグマと言ったものが凝縮されているのがパッと見て感じられる程に禍々しくて攻撃的な力を雄太へと見せつけていた。
しかも、周りには延々と湧き出てくるマグマで囲まれており、吸収した端からマグマによってその身を回復していく事が雄太には容易に想像できた。
「さて、どうしたものか・・・」
雄太がどうやってこの小さい太陽を吸収しようかと悩んでいると、まるで開戦の口火を切るかの様に小さい太陽からフレアの様な炎の触手が雄太達へと向かって伸びて来た。
「ぬぉ!?」
ドガン!!
雄太達は各自が散開する様に飛び跳ねる事で触手を躱すが、伸びて来た最初の1本を皮切りに、小さな太陽は無数の触手を伸ばして雄太達を襲い始めた。
今までのガーディアンは自身が攻撃されない限り攻撃をしてこなかったのだが、この小さな太陽は今までのガーディアンとは違って攻撃的且つ積極的に雄太達を襲いだした。
しかも、炎の触手が触れた箇所は、まるで爆弾で爆破されたかの様に弾けており、地面へとたくさんの小さなクレーターを作り出した。
丁度触手へと赤腕を纏った自身の腕で触って吸収しようとしていた雄太は、その光景を横目で見た瞬間に腕を引っ込めて全力で炎の触手を躱す。
「クソ! あんなの、 どうやって、 吸収すりゃ、 いいんだよっ!?」
雄太や鬼達は炎の触手への反撃を止め、少しでも身体を掠らせない為に全力で触手を躱しだした。
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