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第六百二十三話 苦渋の決断



 三万の偽獣兵に二万の偽人兵。

 その勢いに連合軍は押されていた。

 王都にそれなりの戦力が配置されていることは予想していたが、それでも偽獣兵と偽人兵を合わせて、二万ほどというのが当初の予想だった。

 しかし、実際はその倍以上。

 特に空を飛び回る偽人兵は厄介だった。

 地上部隊は偽獣兵の相手で手一杯であり、なかなか空と連携が取れない。

 偽獣兵の脅威があるため、航空戦力はなかなか降下もできない。

 だが、連合軍は総勢二十万。

 犠牲を出しながらも、徐々に偽獣兵を攻略し始めた。

 そうなると、地上との連携で偽人兵を排除できる。

 少しずつ、連合軍が優勢になっていった。


≪救済の光は天より降り注いだ・人々に救済をもたらすために・その輝きは神の慈悲・その金色は天上の奇跡・魔なる者よ懺悔せよ・天は善なる者を見捨てない・この金光は破邪の煌きである――ホーリー・グリッター!!!!≫


 王都の正面。

 偽獣兵の一団をレオは聖魔法で浄化した。

 そのままレオは低空で飛行し、偽獣兵を切り裂いていく。

 その後には竜騎士たちが追従する。


「レオナルト将軍!! 正門が見えてきました!」

「何があるかわからない! 周囲の敵を排除するまで王都への侵入は待つんだ!」

「さっさと王太子の首を取れば終わります!!」


 そう言って一人の竜騎士が低空飛行のまま正門へ向かう。

 空からの侵入は大量の偽人兵が防いでいる。

 だが、この低さなら偽人兵も止められない。

 レオの制止を振り切った竜騎士は、どんどん加速していく。

 そして正門をくぐったところで。


「ぐわぁぁぁぁ!!??」


 竜騎士は結界に阻まれ、飛竜と共に燃え尽きた。

 それを見て、レオは珍しく舌打ちをした。


「王都全体を覆う巨大結界……!!」


 元々あったものではない。

 帝都のように防衛機能を持つ都市のほうが稀なのだ。

 あったならばアンセムから警告がある。

 それがなかったということは、あれは新たに作り出された結界ということになる。

 あれほどの結界、作るには相当な魔導師が必要となる。

 それは仙姫クラスの魔導師を用意するか。


「やはり悪魔か……!」


 中で何が起きているのかはわからない。

 ただ、近づくこともできないのは確かだ。

 けれど、できることはある。


「王都は一時放置! 周辺の敵を完全に殲滅するんだ!!」


 魔導師たちを前面に出して、攻撃しようにも、この乱戦状態では落ち着いて魔法も唱えられない。

 とにかく周辺を制圧するのが先決。

 しかし、相手の数は多い。しかも王都の中は不明。

 現場の指揮官として命令を発した。


「総司令部に伝令!! 増援を乞うと!」

「はっ!」


 レオの指示を受け、早馬が走る。

 目的地は最も近い冒険者ギルド支部。

 そこにある遠話室で、総司令部と連絡を取れる。

 冒険者ギルド本部が事態の変化を知りたがっているため、特例として許可された。

 情報はすべて本部にも届く。

 当然、この一報も届いていた。




■■■




 冒険者ギルド本部・バベル


「連合軍苦戦のもようです! 多数の疑似モンスターに加え、王都には結界が張られていると!」

「一国の首都を覆う結界が、そう簡単に作れるわけがない。大陸でも数えるほどしかできない芸当だ」


 そして候補者は全員、規格外の化け物。

 それが相手にもいる。

 その規格外が人間であれ、悪魔であれ。

 人間を材料とする疑似モンスターを使う王国に協力しているならば、人類の敵といえる。

 冒険者ギルドの指導者、ギルド長としてクライドは難しい選択をする必要があった。

 それは冒険者ギルドとして戦闘に介入するかどうかの選択だ。

 国と国との戦争に冒険者ギルドが介入するわけにはいかない。

 しかし、王国はすでに国なのか怪しい。

 あまりにも行動が異常すぎる。

 魔奥公団が裏にいることは間違いないだろう。

 そして魔奥公団は悪魔と繋がっている。

 ならば、王国は討伐対象となる。

 とはいえ。


「形だけでも中立を守り続けた冒険者ギルドが戦闘に介入する前例を作るか……」


 完全な中立ではなかった。

 それでも人の組織としては、よく頑張ったほうだ。

 できるだけ冒険者ギルドは中立だった。

 だが、冒険者ギルドは大陸の敵を排除するためにある。

 遅れるわけにはいかない。中立を維持したのは、対悪魔を想定した際にしっかりと動けるように、だ。

 クライドは目を瞑り、数秒考えこむ。

 大した時間ではない。

けれど、クライドは覚悟を決めて、ゆっくりと立ち上がった。

 そのまま部屋に飾ってある愛剣を掴む。

 現役はすでに退いた。またこの剣を手にする日が来るとは思わなかった。

 だが、今は冒険者ギルドの存在意義を証明するとき。


「ギルド長が指揮だけでは示しがつかんからな」


 そう言ってクライドは自らの愛剣を腰に差す。

 そしてクライドはバベル全体に声を届けた。


「ギルド長のクライドだ。これより我々、冒険者ギルドは王国を討伐対象に指定する。よって、現在、王国と交戦中の連合軍の下へ援軍として向かう。ギルド長命令として――AA級以上の精鋭でもって、現地に向かう。AA級以上の冒険者は地下へ集合せよ」


 クライドはそう伝えると、自らも地下へと向かったのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 水の悪魔いたから今度のは火の悪魔か
[良い点] 毎日の楽しみです。体調に気をつけて頑張ってください [気になる点] 一覧の章が54章ではなく51章になっています
[気になる点] 天球と違って中からは出れる結界なのかな
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