表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

第九話

最終話です。どうぞ。

 ハダルビーチに突如として現れたサハギンと目覚めたヒートオクトタコス。その両種の魔物から市民を守り抜いたイザベラとヒルダは、正体がバレて全員にひれ伏せられたが、新たな英雄伝説を作り上げ、多くの市民に感謝の念を送られた。

 サハギンとヒートオクトタコスのハダルビーチ襲来事件から半年。季節は雪が降り注ぐ冬。

 カノプス国リギル都市には至って平穏な日々が続いている。リギル都市には柔らかな雪が降り積もり、荷馬車の通った跡、人の歩いた跡が雪上に刻まれている。外の気温は低いため、外出している人の数は少ない。露店を出している人も見当たらない。

 そんな人気(ひとけ)のない中を、ヒルダは歩いていた。厚手の毛深いコートを羽織り、首にはマフラーを巻いて後ろに流している。マフラーの隙間から漏れる息は白く、ゆっくりと空へ立ち上り消えていく。

「うぅ~……さ、寒いですね」

 今は冬の早朝。今日もイザベラのいる居室を訪ねようと、王宮を目指して夏とは全く違う姿の広間通りを、手をすりあわせながらヒルダは一人歩いている。

 数十分ほどして、ようやくイザベラが普段過ごしている部屋の前へ辿り着いた。

「イザベラちゃん、おじゃまします~」

 イザベラの部屋の様子は夏と大きく違いはない。あるとすれば、部屋の中央にある低いテーブルに毛布がかけられてこたつとなっている所。その近くに魔道具の暖房機が置かれている所の二箇所だろう。その他は、配置の模様替えが行われた様子さえ無かった。

「イッザベッラちゃ~ん、あっさでっすよぉー」

 いつも通りキングサイズベッドで寝ているであろうイザベラの元へと近づくヒルダ。しかし、ベッドの上で盛り上がっているはずの掛け布団は、平らなままだった。

「あ、あれ? イザベラちゃんはもう起きてるのでしょうか……。あ、もしかして……」

 ヒルダはベッドからUターンし、部屋の中央に向かう。

 寒がりで面倒くさがり屋なイザベラがベッドにいない場合、居る可能性がある場所は唯一つ。それは――

「こたつの中ですっ! おはようございます!」

 ヒルダは勢い良くこたつのカバーをめくり上げる。ヒルダの予想通り、こたつの中には小さく丸まって寝ているイザベラが居た。

「イザベラちゃん、こんな所で寝てたら身体を壊しますよ」

 ヒルダの声に僅かな反応を見せるも、イザベラはその場所から動こうとしなかった。

 ヒルダは掴んでいたカバーを離して元に戻し、こたつの中に脚を入れる。そしてテーブルに肘を突きながら呟いた。

「ん~……残念ですわ。今朝はパウンドケーキを作ってきたというのに……」

 そんな誘い文句をわざとらしく言うと、こたつの中で、「ゴツン!」と、どこかをぶつける痛そうな音が聞こえる。するとヒルダが座っているこたつカバーがもぞもぞと動き始め、ヒルダの太ももの上にイザベラの顔が、にゅっと飛び出す。

「……た、食べたいの」

 首から上だけをこたつ中からヒルダの太ももの上に出し、髪を乱したイザベラは一言呟いた。

「それならこたつから身体を出してください」

「……はい、なの……」

 背の関係もあって、二人のその様子は母と娘に見える。まだ幼い少女に若い母親が行儀を教えているかのように。

 イザベラはヒルダの言葉に従いこたつから全身を出す。柔らかく、座り心地抜群のヒルダの太ももの上に。ヒルダはそれを「しょうがないですね」と微笑みながら後ろから抱きかかえる。

「では食べましょうか」

 そう言ってヒルダは右手を空中に伸ばす。すると何もなかった空間に揺らぎが生じ、ヒルダの腕はその揺らぎへと侵入して見えなくなる。そしてその空間から引いた手に、二つの皿に乗せられたパウンドケーキだった。

「……おぉー、美味しそうなの」

「ふふ、一気に目が覚めたようですね」

 イザベラはヒルダお手製のパウンドケーキを見て目を輝かせる。これはイザベラのお気に入りの内の一つだ。

「……いただきますなの」

「はいどうぞ」

 二人はケーキをしっかり味わうように、よく噛みながらゆっくりと食べる。

「……流石はヒルヒルなの。……美味しすぎるの」

「ありがとうございます」

 二人の間には食器のこすれる音と、静かな咀嚼音(そしゃくおん)が流れていた。外の雪は今もしんしんと降り続けている。

「そういえばイザベラちゃん。なんか今日は様子が変だと思うのですが、何かあったのですか?」

 ヒルダの問いにイザベラは身体をびくっとさせる。どうやら余程面倒くさいことでもあったのだろう。

「……王様の姪が結婚するの。……だから、その娘の結婚パーティーをする時に、何か一言言ってくれって王様に頼まれたの……」

「そんなことでしたか。それでしたら簡単ではありませんか」

「……面倒くさいの」

「そんなことないですよ。そこはシンプルに、『おめでとうございます。いつまでもお幸せに』、と言えれば上出来ですよ」

「……分かったの」

 パウンドケーキを食べ終わった二人は、午前中いっぱい何でもない世間話に花を咲かせて過ごした。



 ◇◇◇



 数日後、カノプス王の姪の結婚式が行われた。式場には自国の貴族や他国の王族等が参加していた。

 イザベラは無事に祝辞を述べ終わり、今は壁のシミとなっている。そこに飲み物を両手に持った、目立たないようで目立つ、大人な色気を撒き散らす美女が近付いて来る。

「イザベラちゃん、お疲れ様でした」

「……面倒くさかったの」

「でもすごく立派で、大人な雰囲気が出ていましたよ」

 ヒルダもまた、カノプス王からイザベラを通して結婚パーティーに招待されていた。

「……あっ、イザベラちゃん。ある意味予想通りの人がこのパーティーに来ていましたよ」

「……えっ?」

 イザベラは壁から背を離し、ヒルダの後方に視線を向ける。そこに居たのは――

「イザベラお姉ちゃん!」

「イザベラちゃんお久しぶりです」

 レグルスとシャウラ、そして二人の両親だった。

 ハダルビーチでのヒートオクトタコス討伐完了後、彼らと合流することは出来ずに分かれてしまっていた。

 しかし、ヒルダはある程度予想していた。この家族の正体はどこか小国の王族だということを。

 そして、ヒルダがイザベラから結婚式のことを教えられた時、「あぁ、レグルスくんたちもきっと招待されてるでしょうね」と予想できていた。

「……レーくん、シャーちゃん。……久しぶりなのっ」

 元気を取り戻したイザベラはレグルスとシャウラにハイタッチする。その様子を少し離れたところで、アトリアとアンタレス、そしてヒルダは楽しそうに見ながら、微笑みを浮かべていた。

 この物語は、高貴な身分により普段は会うことの出来ない関係にある二人の英雄が、『秘密の親友』となり、一日一日を大事に生きていく、そんなお話。


 最後まで読んで下さりありがとうございました。

 作品評価や感想をしてくださると嬉しいです。次作に向けて、作者はどこがダメなのか、読者はこれを読んでどう感じたのかなど、文章作成スキルを上げるためにも評価してもらいたいと思ってます。よろしくお願いします。


 さて、最後まで読んでくださった読者の方には、次作についての報告をさせていただきます。

 次作ですが、タイトルはほぼ決まってます。ではタイトルだけ紹介。

 『NO SAVE』

 タイトルから分かるように、次作は秘密の親友シリーズから外れます。目標文字数は10万から15万文字(もちろん大幅に超える可能性あり)の作品にするつもりです。大体小説一冊分くらいですね。ついに、王道(男主人公とヒロイン)という道に近づく作品となる予定です。一人称で物語は進みます。是非楽しみにしていてください。

 あ、『NO SAVE』ですが、本来は入れたい物語のキーワードが、作品内容の秘密に関わるので、キーワードは少なくなりそうです。(「???」とか入れたりするかも)

 目標としては1~2ヶ月後くらいに、投稿をゆっくり開始したいです。5万文字程の書き溜めができたらですかね。


 それでは改めて、『秘密の親友 ~歴戦の英雄~ (女ver.)』を最後まで読んで下さり、ありがとうございました。次作の『NO SAVE』を楽しみに待っていてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ