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位相戦線  作者: 神代零


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第四十九話 「帰還」

 青空だった。


 白でもない。


 黒でもない。


 ただの空。


 世界が静かに呼吸している。


 銀色の光は、

 もう薄く空気へ溶け込んでいた。


 人類位相。


 新世界法則。


 それは世界の裏側へ存在しながら、

 静かに人類を支えている。


 崩壊した白域固定塔は消えた。


 黒域深層も閉じている。


 観測戦争は終わった。


 そして今。


 俺とユナは、

 境界の果てから現実へ戻ろうとしていた。


 銀色の海が静かに遠ざかる。


『境界核解除を確認』


 世界の声。


『個体存在維持を開始』


 身体の感覚が戻る。


 重力。


 風。


 温度。


 全部が懐かしかった。


「玲司」


 ユナが俺の袖を掴む。


「帰れるんだね」


「ああ」


 少し笑う。


「多分な」


 ユナも笑った。


 泣きながら。


 その時。


 銀色の光の向こうへ、

 一つの景色が見えた。


 崩壊しかけた白域固定塔跡地。


 東京湾沿岸。


 そこで。


 紗那が空を見上げていた。


 銀色の風が吹いている。


 彼女は泣きながら、

 それでも笑っていた。


「……帰ってきてください」


 小さな声。


 でも。


 確かに届いた。


 その瞬間。


 世界が光に包まれる。


          ◆


 次に目を開けた時。


 風の音がした。


 潮の匂い。


 青空。


 崩壊した都市跡。


 そして。


「玲司さん!!」


 紗那の声。


 振り返る。


 彼女が走ってくる。


 無機質だった灰色の瞳。


 今は涙でぐしゃぐしゃだった。


「本当に……

 本当に……!」


 言葉にならないまま、

 紗那はその場へ崩れ落ちる。


 ユナが困ったように笑った。


「泣きすぎだよ」


「うるさいです……!」


 紗那が涙を拭く。


「帰ってこないと思ったんですから……!」


 俺は空を見る。


 青い。


 静かだ。


 白域反応もない。


 黒域侵食もない。


 ただ。


 普通の世界があった。


 その時。


 遠くでサイレンが鳴る。


 人々の声が聞こえる。


 生きている。


 世界は続いている。


 黒瀬真琴が瓦礫の向こうから歩いてきた。


 侵食痕は消えていた。


「終わったな」


「ああ」


「これから忙しくなるぞ」


 黒瀬が空を見る。


「世界法則が変わった。

 永久機構も崩壊する」


 確かに。


 世界はもう以前と同じじゃない。


 白と黒による管理も終わった。


 これから。


 人類は自分たちで進まなきゃいけない。


 不完全なまま。


 迷いながら。


 それでも。


 ユナが静かに俺の手を握る。


「玲司」


「ん?」


「生きてるね」


 胸が少し熱くなる。


「ああ」


 空を見上げる。


 青空。


 どこまでも広がっている。


 その景色は。


 何よりも人間らしかった。

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