第四十六話 「新世界」
銀色の光が世界を満たしていた。
境界の果て。
現実の空白。
その中心で。
新世界中枢が静かに脈動している。
白でもない。
黒でもない。
第三位相。
人類位相。
人間同士の繋がりから生まれた、
新しい世界法則。
『新世界定義を確認』
世界の声が響く。
『承認を開始』
銀色の海が広がる。
その瞬間。
俺とユナの中へ、
無数の感情が流れ込んできた。
喜び。
悲しみ。
孤独。
愛情。
全部。
人類が積み重ねてきたもの。
ユナが静かに笑う。
「温かいね」
「ああ」
こんなにも不完全で。
矛盾だらけで。
それでも。
人間は綺麗だった。
『新位相構築開始』
世界境界が修復されていく。
裂けていた空が閉じる。
崩壊していた現実が、
少しずつ安定を取り戻していく。
東京湾。
世界各地。
銀色の光が、
傷ついた世界を包み込んでいた。
紗那が崩壊寸前の塔内部で空を見上げる。
「……綺麗」
涙が頬を流れていた。
黒瀬も静かに笑う。
「終わったか」
その声は、
どこか救われたみたいだった。
世界中で。
白域災害が消える。
黒域侵食も止まる。
人々が空を見上げていた。
銀色の空を。
新しい世界を。
その時。
新世界中枢が、
最後の問いを投げかける。
『境界核を確認』
銀色の光が俺たちを包む。
『新世界維持には、
恒久核が必要』
沈黙。
分かっていた。
世界を維持するには、
誰かが境界へ残らなければならない。
ユナが少しだけ俯く。
「やっぱり……」
怖い。
消えたくない。
でも。
ここまで来た。
世界はもう、
俺たちだけのものじゃない。
「玲司」
ユナがこちらを見る。
「後悔してる?」
少し考える。
それから。
「してない」
即答だった。
苦しかった。
怖かった。
それでも。
ここで出会えた。
ユナとも。
紗那とも。
みんなとも。
だから。
「お前は?」
ユナは泣きながら笑った。
「……わたしも」
銀色の光が脈動する。
境界核同期率が上昇していく。
『恒久核接続を開始』
身体が軽くなる。
存在が世界へ溶け始める。
その時。
遠くから声が聞こえた。
「玲司さん!!」
紗那。
泣きそうな声。
「帰ってきてください!!」
胸が痛む。
帰りたい。
本当は。
普通に生きたかった。
だけど。
ユナが静かに俺の手を握る。
「玲司」
「ん?」
「最後まで一緒だよ」
その瞬間。
銀色の光が、
世界全体へ広がった。




