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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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歓迎会

「おやおやノートン君、こんばんは。最近忙しそうだね」

 ランド亭のドアをくぐると、開店準備中のララさんが意味深な笑みを浮かべながら俺を迎えてくれた。勘の良いララさんのことだ。昨晩の伯爵邸での騒ぎを聞きつけ、俺のことに気づいているのだろう。

「レイナ、入ってくれ」

「おじゃまします」

 ララさんは彼女の姿を見ると「ほう!?」と目を見開く。

「紹介するよララさん、ウチで働くことになったレイナだ」

「はじめましてララさん、レイナと言います」

 とりあえずウチの助手ということにした。ちなみにレイネシアという貴族名と違い、レイナという名前は庶民でもありふれた名前なので、そのままで通すことにした。

「あらかわいい。しかも礼儀正しい良い子だね」

 ララさんは満面の笑みで返してくれる。ララさんは誰とでも気さくに接してくれるので、レイナとすぐに仲良くなりそうだ。

「とりあえず、これが約束の品だ」

 俺は伯爵邸から奪った美容グッズをララさんに渡した。これで取り引きは完了だ。いわくつきの美容グッズばかりだが、ララさんなら使い道があるのだろう。

「確かに受け取ったよ。ところでレイナちゃんは、どこに住んでいるんだい?」

「ノートン君の家にお世話になっています」

 ララさんは「ほほう」と再び目を見開き、すぐに口元にニヤついた笑みを浮かべる。

「こんな可愛い娘と同棲とは、ノートンちゃんも意外とやるねえ」

「同棲ではない」

 それは恋人同士で住むことであって、あくまでも住み込みで働いているという形だ。

『ご主人、恋人同士で同棲しているという設定の方が、自然だと思いますよ? いつも一緒にいてもおかしくないわけですし』

 イエローストーンも隙あらばそっちの方向に持っていこうとする。

「同棲とか、レイナがかわいそうだ。そもそも猫人の呪い付きの俺と釣り合うわけがない」

「わたしは、そんなことないと思うけどなあ」

 イエローストーンとの密談に、レイナが嬉しそうに割って入る。小声だったが、俺たちの会話が聞こえていたようだ。

「まあいいじゃないか。とりあえず今日は歓迎会だ。おごっちゃうぞ」

 さすがはララさん、太っ腹だった。この店も趣味でやっている店だし、ララさんの魔法具の収集癖からしても随分と裕福なようだ。俺もこの人のことについては、詳しくは知らないのだ。

「ねえノートン君、ララさんって綺麗な人だね。何歳なの?」

 ララさんが料理のために厨房に行っている間に、レイナが尋ねてくる。

「さあ、そういえば知らないな」

 何年も前からあの姿のままな気がする。

「行方知れずの美魔女ヴィラの正体が、ララさんだったりして?」

「だとするとララさんは六十歳は超えていることになる。聞こえたら怒られてしまうぞ」

 そもそもララさんが姿を消した美魔女ヴィラだったら、ヴィラの魔法具を集めているわけがない。謎が多い女性ではあるが、ヴィラでないことは確かだ。

「それにしても、綺麗な大人の女性って感じ、憧れるな~」

「あっ、ノートンさん、ここにいたんだ。探しました」

 ドアを開けサーシャが入ってきた。メイド服を着ているので、職場からすぐに来たらしい。

「聞きましたよノートンさん、同棲したとか」

「どっから聞いたんだ」

 開口一番、サーシャはわけのわからないことを言い、店の窓にたまたま座っていた野良猫に話しかけた。

「ノートンさんのお嫁さんの猫ちゃんは、この猫かな? よ~しよし、お似合いだよ」

「お前は何を言っているんだ」

「ノートンさんが寂しくて、猫と同棲したって聞きました。かわいそう」

「どういう噂だ」

 あと、哀れな生き物を見るような目で見るな。

「だって人間の女の子に相手してもらえるわけないじゃないですか。だからメス猫と暮らしているんでしょ?」

「それはただの野良猫だ」

 ようやく、サーシャは野良猫から目を離し、レイナの方を向く。

「ノートンちゃんと一緒に暮らしているのは、この娘だよ、レイナちゃんっていうんだって」

 厨房から料理を手に戻ってきたララさんが、レイナを紹介してくれた。

「えっ、人間の女の子! しかもかわいい! ガ~ン!」

 レイナを見て、サーシャはなぜかショックを受けていた。

「えっと、ノートン君、このコは?」

「近所の可哀そうなコだ」

 レイナの質問に対して、俺は雑にサーシャを紹介する。

「かわいそうなコって、ノートンさんひど~い」

「よろしくね、えっと、サーシャちゃん。メイド服を着てるってことは、メイドさんなのかな?」

 レイナはいつものスマイルで自己紹介しながら、サーシャの衣服について質問をした。

「はい、レイナちゃん。私は近くのお屋敷でメイドとして働いてます」

「ノートン君とはずいぶんと親しいんだね」

「ポンコツな妹分みたいなものだ」

「ポンコツってひど~い! でもまさか、ノートンさんが女の子と同棲しているなんて」

「同棲じゃなくて、助手として住み込みで働いてもらっているだけだ」

「でも、一緒に暮らしているという噂は本当だったんですね、びっくり」

 とサーシャは驚いている。そもそもなんで噂になっているんだ。

「ノートンちゃんは、自分で思っている以上に女子に人気なんだよ」

「へ~、やっぱりそうなんだ」

 余計なことを言うララさんに対し、レイナは興味深そうにうなずいている。

「とりあえず、サーシャちゃんも夕食は食べるだろ? レイナちゃんの歓迎会だから、私のおごりだよ」

 サーシャは「やったー!」と嬉しそうに席に着き、料理に手を付けた。

「それはそうとノートンさん、私にもちょっとした報告があるんです」

 サーシャは美味しそうにスープをすすりながら、やや改まった口調で話しかけてきた。


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