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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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サーシャの依頼

「ほう、どうかしたのか?」


「実は私、マホジョに通っているんです」


「マホジョ!? 魔法科女子学園か」


 サーシャの発言に俺は驚いた。魔法科女子学園とは、王都でもトップレベルの女子校であり、貴族や金持ちの令嬢が通う学校だったからだ。王国有数の魔法研究施設であり、また裕福な女子が多いこともあって、王都の流行の発信源の一つでもあった。


「しかしマホジョはかなりの成績優秀者しか入れないし、そもそも学費はどうしているんだ?」


「特待生ということで、免除になりました。すごいでしょ?」


 サーシャはえへんと得意げに胸を張った。特待生とは信じられない、アホの子なのに。


「私が触れると、魔法具が変調をきたすことが多くて、奥様が私をマホジョの研究機関に連れて行ってくださったんです」


 なるほど。マホジョは教育機関だが、魔法研究機関の側面も持っていた。その枠か。


「そしたらですね、珍しい〝賦与魔法〟の素質があることがわかったんです」


「ほう、賦与魔法か」


 普通の人間は、魔法具を使わないと魔法は使えない。だが魔法具を使わずに、魔法を使える者が存在する。それらは神様が賦与した魔法ということで、〝賦与魔法〟と呼ばれていた。古の賢者達が言うには、賦与魔法とは人間の魂の形、天命が具現化したものだという。


「それはすごい、どんな魔法だ?」


「なんでも触れた魔法具の効果を変えてしまう効果、つまり〝変化〟らしいです」


『あわわわ、やっぱり……』


 イエローストーンが珍しくおびえた声で、俺にだけ聞こえるようにつぶやく。


「どうしたんだイエローストーン?」


『変化は、魔法具にとっては天敵みたいな魔法なんです。何せ、触られると壊れちゃうので』


 なるほど、サーシャが持ってくるアイテムの多くが壊れていたり、本来と異なる効果を持っていることが多いのは、彼女の賦与魔法が影響していたのか。


『例の〝不幸のお守り〟も、元はきちんとした幸福のお守りだったのが、サーシャさんの能力で変化したんだと思います』


「もはや〝変化〟と言うより〝劣化〟だな」


 イエローストーンは以前からサーシャを避けている気がしたが、そういうことだったのか。


「おかげで特待生になり、研究に協力する代わりにタダでマホジョに通えることになったんです」


 イエローストーンとの密談が聞こえていないサーシャは、ドヤ顔で胸をはる。


「それは特待生というより、モルモッ……」


『し~、それはいっちゃダメですよ、ご主人』


 つまりは実験体ということだが、イエローストーンの言うとおり黙っておくことにした。


「マホジョか~、貴族のコも通っているよね、楽しそう」


 話を聞いていたレイナが会話に入ってきた。同世代の女子として、学校には興味があるようだ。


「それでねノートンさん、実は相談があって、聞いてほしいんです」


「相談?」


「はい。通ってから分かったんですけど、いま、学校で少し事件がおこってるみたいなんです。何でも、怪盗に入られたとか。でも、盗まれるものが特殊で」


「特殊? 靴下でも盗むのか」


 女子校に忍び込む怪盗か。変態の泥棒の考えることはよくわからん。


「いえ、どうもそれが〝記憶〟みたいなんです」


 俺は意外な答えに、思わず「ほう」と猫目を細め、話の先を促す。


「学園内の生徒の記憶が無くなる事件が、あったみたいなんです」


「でもモノを盗まれたわけではないんだな?」


「はい。あと、着衣の乱れもなく、みんな眠っていたところを発見されたらしいです。だから警察も動いてくれなくて、誰かアイテムに詳しい人に調べてもらおうという話があり、担当の先生から適任者を探すように言われたんです」


「ふ~む」


「ノートンさんは記憶を盗む魔法具とか、あると思いますか?」


「かつての大怪盗ドレットノートは、記憶さえも盗んだという。つまりそういう魔法具を持っていたと言われている」


 俺もまた幼少のレイナとの記憶を最後に、それ以前の記憶はない。その理由が魔法具の仕業だと考え、その手の魔法具について調べていたことがあった。


「ノートンさん、この依頼を受けてくれませんか?」


 アイテム商である俺は、探偵まがいの仕事をすることがたまにあった。


 だが正直、さほど気は進まない。記憶を盗む魔法具なるものが本当にあるなら興味はあったが、今はレイナの件でそれどころではないからだ。


「その依頼、興味ある!」


 意外にも、はっきりとした口調で興味を示したのはレイナだった。


「レイナはそんなことしている場合ではないはずだ」


「ううん、この件はわたし〝達〟にとっては重大な案件だと思うよ」


 レイナは俺にだけわかるようにウィンクする。つまりマホジョの事件は怪盗エルフの次のターゲットにふさわしい、ということか。ならば異論はない。レイナがなぜこの事件に関心を持ったかについては、あとで聞けばいい。


「わかった。引き受けよう」


「よかったです」


 サーシャ嬉しそうに微笑む。


「ただ学校から正式な依頼が必要だ」


 女子高ということなら調査には正規の依頼がいる。サーシャや教師からの個人的な依頼ではなく、学校からの依頼という形をとる必要があった。


 俺とレイナは料理を食べたあと、店を後にした。

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