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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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勝利の美酒

「かんぱーい」

「とりあえず、初仕事の達成に、乾杯だ」

 盗みが終わり無事家にたどり着いた俺とレイナは、無事な帰還を乾杯していた。

 街からは騒ぎの声は聞こえない。内大臣の動きが早かったため、火事はすぐ鎮火されたのだろう。

「おいしい! ノートン君、この飲み物、すごくおいしい。見た目はビールみたいだけど、アルコール入っていないよね。なんて飲み物?」

「これはビールを元にして作ったドリンクだ。〝バッカスの杯〟は何でもお酒にしてしまうが、逆にお酒を入れると、アルコール分を飛ばして極上のジュースを作り出してくれる。名前は……ビールを原料にしたから〝ルービ〟でどうかな?」」

「変な名前、でもルービ好き。こんなおいしい飲み物、飲んだことないかも」

 ビールは庶民の飲み物であり、貴族は好まないという。だがレイナはそんなことは気にせず、口元に泡をつけながらも、ルービを美味しそうにのんでいる。このルービには効果も呪いもない、帰ってきてからすぐにバッカスの杯を使って作ったものだ。

「でも、バッカスの杯って、こんなに早く飲み物って作れるの?」

「いや、これを使ったんだ」

 俺は調理場の小さな枕をレイナに見せる。枕の上にはバッカスの杯が斜めに置かれている。

「枕??」

 調理場の枕の上に杯を置くという奇妙な光景に、レイナは不思議そうに首をかしげている。

「これは〝熟成枕〟といって、上に置いたものの時間の経過を早めることができるんだ」

 俺が普段から調理用に利用している魔法具だった。

「今回はバッカスの杯を枕の上に置いて、大急ぎで酒を造ったんだ。枕に耳をあててみてくれ」

 レイナは言われた通りバッカスの杯が置かれている枕に耳を近づけた。

『ZZZZZZZ』

「杯がいびきをかいてる!」

「ああ、食材を〝寝かし〟ているんだ」

「寝かすってそういうこと!? 変なの~」

 レイナはクスクスと笑いだした。ルービのせいだろうか、ご機嫌は最高に良いらしい。

「この〝肉じゃが〟っていう煮込み料理もおいしい。ノートン君、お料理上手だね」

「これは〝きまぐれ料理人の釜〟という、中に食材を入れておくと自動で料理を作ってくれる魔法具で作ったんだ」

 欠点は何の料理ができるかは釜が判断してしまい、完成するまで誰にもわからないことだ。幸いビーフシチューを作ろうと思って入れた食材でできた肉じゃがは、レイナのお気に召したらしい。彼女は王室の教育上、嫌いなものはないとのことだったので心配はしていなかったが。

「ノートン君はいつも自炊しているの?」

「いや、いつもはララさんのところ……外食で済ますことが多いかな」

「へ~、そこも美味しそう。今度連れて行ってね」

 呑気なレイナを前に、俺は内心で葛藤していた。あの伯爵が使っていた〝隔世の糸〟は何なのか、伯爵はなぜ魔獣に変化してしまったのか、伯爵を始末したあの魔法は、王家が持っていないと言っていた天位魔法なのか、今回の件で聞きたいことは山のようにあったからだ。

 だが嬉しそうに食事を楽しんでいるレイナの姿を見ていると、質問責めにする気が引けてしまった。とりあえず別のことをする。

「とりあえず、食後は今回のお宝のチェックだ」

「了解で~す」

 俺は伯爵の宝物庫からくすねてきた美容具以外のアイテムをチェックする。

「これは珍しい。〝みがわりパンダ〟のぬいぐるみだ」

 俺はパンダのぬいぐるみを手に取る。流石は貴族だ。面白いものを持っている。

「〝みがわりパンダ〟ってな~に?」

「餌として魔法具を与えると、持ち主の姿に変身して身代わりになってくれる魔法具だ」

「すごい、餌はどんな魔法具でもいいの?」

「効果は問わないが、呪われた魔法具を食べさせると壊れるから、そこだけは注意が必要だ」

「へ~、ノートン君、これわたしにくれないかな?」

「ああ、別にいいよ」

「えへへ、ありがとう」

 レイナは嬉しそうにパンダのぬいぐるみにほおずりした。よほど気に入ったらしい。

「いけない、もう朝日が昇りかけてる、戻らなきゃ」

 夜明けの光に、レイナが慌てだす。朝の公務が始まるまでに戻らなければいけないはずだ。

「ノートン君、わたしもどるね。明日もよろしく」

「ああ。わかった」

 レイナはいそいそとパンダのぬいぐるみをわきに抱えると、そのまま駆けるように家を後にした。あわただしい奴だった。

『伯爵さんの隔世の糸やレイナさんの天位魔法について、聞けなかったですね』

 俺の心情を察したイエローストーンが話しかけてくる。確かにいろいろと聞きたいことがあったのだが、レイナと話しているといつも時間があっというまに過ぎてしまって、聞きそびれてしまうのだ。

『ご主人があまりに楽しそうだったので、わたくしも何も言わなかったんですけどね」

「そうなのか?」

『はい。まあ次の機会に聞けばいいでしょう。とりあえず少しお休みください』

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