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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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伯爵

「ぬう、曲者か!?」

 無数のゴーレムが飾られた大部屋の中心で、豪奢な装いに身を固めた小柄な初老男性が叫んだ。彼こそ城主であるディーク伯爵その人だった。

『ガハハ、でっけーあたま』

 イマジンドレスの指摘するとおり、伯爵は長い髪を束ねるため、体に不相応に大きいターバンをしている。

「ディーク伯爵、貴様のお宝をいただきに来た」

「内乱なんて、この怪盗エルフと怪盗キャットが許さないわ!」 

「地下倉庫を見たな? だが貴様らを処分すれば、目撃者はいない。ゴーレムの量産後には、ワシがこの国の支配者となる!」

「そんなことさせないわ!」

「ふん、貴様らはこのワシ自らの手で、処分してくれる」

 伯爵がターバンをほどくや否や、頭から大量の髪が、まるで火山の噴火のように天を突く勢いで伸びた。自在に変化するその毛髪は、まるで別の生き物のようだ。王国一と称される伯爵の毛髪魔術。黒い髪は巨大な影のように部屋中に広がり、俺たちを包囲するように展開する。 

「毛髪魔術は、妖艶な美女が使うものと決まっている。おじさんの毛髪魔術は気味が悪いな」

 俺は包囲されながらも、余裕のそぶりで悪態をつく。

「確かに、白髪とか混じってるしね」

「戯言を! それが貴様の最後の言葉だ!」

 伯爵は天井いっぱいに展開させていた髪を槍のように尖らせるや否や、俺たちを串刺しにするべく襲い掛からせた。

「この髪に良いものをプレゼントしてあげよう」

 俺は髪の槍の襲撃をかわすと髪の一束を鷲掴みにし、伯爵の髪にリボンを結ぶ。

「なんだこれは!?」

 瞬間、伯爵は自身の髪に起こった異変に、驚愕の声をあげた。

 伯爵の長い髪はうねりをあげて丸くまとまり、無数のドリルのような髪型になっていく。それは巨大な縦ロールだった。

「ワシの髪に何をした、ですわ! 何だこの語尾は!?」

「これは〝悪役令嬢のリボン〟と言って、髪が強制的に縦ロールになる効果がある。ついでに語尾に〝ですわ〟がつく呪いがついている」

「くそう、動けぬ、ですわ!」

 縦ロールになった巨大な髪が邪魔をして、伯爵は身動きがとれない。

『ガハハ、変な語尾!』

「クスクス、縦ロールは結構カワイイと思うよ、伯爵さん」

 俺は動きを封じた伯爵の喉元に、剣を向けた。

「き、貴様、ワシにこんなことしてタダですむと思うなですわ!?」

「覚悟の上だ。さて、まずはバッカスの杯を返してもらおうかな」

 俺は部屋に大切そうに置かれていたバッカスの杯を、ジャケットのポケットに回収する。今日の昼に高額で売ったこの杯を盗み出すのだから、我ながら酷い話だったが、この杯は今後の活動に必要なものだった。

「続いて、お前が持っている賢者の石を見せてもらう」

 俺は伯爵の胸ポケットから、強引にアイテムを奪い取る。大切そうに持っていたそれは、糸を縫い合わせてつくったミサンガのような魔法具だった。

「……これは賢者の石、ではなさそうだな」

『そもそも、かなりの呪いを受けている魔法具のようですね』

 本物の賢者の石なら、呪いの反動なしに天にとどくほどの大魔術を行使できるという。呪われたこの魔法具は、どうみても噂に聞く賢者の石ではなさそうだった。

「──えっ、これって!?」

「レイナ、知っているのか?」

「う、うん。でもそんなはずが……」

 珍しく歯切れの悪い様子のレイナは、確かめるように魔法具をまじまじと見つめる。

「これは、何という魔法具なんだ?」

「……えっとね、〝隔世の糸〟って言うアイテムで作ったミサンガだと思う」

 隔世の糸? アイテム商をしている俺でも知らない魔法具だった。

「な、なぜ貴様がその存在を知っている!?」

 対する伯爵は驚愕の声をあげる。その反応からして、この魔法具が隔世の糸というのは事実らしい。加えてレイナがその存在を知っていることが、よほど予想外らしかった。

「答えなさい。ディーク伯爵。これを、どこで手に入れたの?」

 レイナは普段とは違う毅然とした声で、伯爵に詰め寄った。

「──貴様、王族の者か!?」

「質問しているのはわたくしです、伯爵!」

 伯爵の疑問を気迫で制し、レイナは詰問する。口調こそ上品なものに戻っていたが、その美しい瞳から発せられる眼光は鋭く、バルコニーで見た凛とした雰囲気を称えていた。

「まさか……レイネシア姫か!?」

 ついに伯爵はレイナの正体に気づき、驚愕に目を見開く。エルフ耳を除けば、顔と声は姫のままだ。見知った人に間近で見られれば、バレてしまう。

 だが狼狽しているのは伯爵の方で、彼の顔中から滝のような汗が流れ落ちている。

「これだけの魔力を使いどれだけの厄災をため込んでいるのか、わかっているのですか? 貴方は魔力を前借りしているにすぎません。そのことは、当然理解しているのでしょう?」

 姫であることがバレても臆せず、レイナは矢継ぎ早に厳しく問いただす。

 彼女に対しついに観念したのか、伯爵は堰を切ったようにしゃべりだした。

「くくく、そうか、怪盗エルフの正体はレイネシア姫だったか。だがすでに手遅れた。この魔法具を手に入れたワシは現王制を倒し、この国を手に入れる」

 刹那、伯爵の髭が大蛇のように伸びて、俺とレイナを吹き飛ばした。

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