表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/39

強襲

「火事だぞ!」

「火の手があがっているよ!」

 俺とレイナは火事を叫びながら、屋敷の階段を駆け上がっていた。見つかるのは覚悟の上での強行突破だが、幸い地下倉庫から大量の煙が噴き出し、俺たちの姿を隠していた。 

「あちち……にしても、火が回るのが早くない?」

「ああ、サラマンダーの火酒を、ばらまいておいたからな」

 バッカスの杯で作っていたものだ。それを備蓄されていた食料と火薬に放ち、地下倉庫を火の海に変えた。

「火を放つとか、わたしのイメージじゃないんだけどなあ」

「問題ない。俺たちではなく、外からの襲撃だと思うはずだ」

「外って結局、誰が攻めてきているの?」

「大商人ブランの私兵だ」

「ブランの私兵!? どういうこと??」

 ブランはレイナが盗み出したバッカスの杯の前の所有者だ。その名を聞かされ、レイナは驚き目を丸くした。

「順を追って説明するとだ、まず俺がバッカスの杯を売った相手は、ディーク伯爵だ」

「これから盗みに入る伯爵に売ったの!?」

「伯爵は魔法具の収集に目がないから、高値で売れた」

「なるほど。でも、あえて伯爵に売った理由はそれだけじゃないよね?」

「ああ、その後、伯爵が杯を持っていることを、元の所有者であるブランにリークした」

「ええ!?」

「当然、ブランは取り戻そうとする。しかし、たとえ盗品であっても正規のルートで買い取ったものは、返還する義務はない。伯爵が自分の持ち物であると人々に周知すれば、奪還は不可能になる。なら、その前に奪い返すしかない」

「それで、力ずくで取り戻しに来たってこと!?」

「杯の酒の力でのし上がったブランにとって、杯は生命線だ。すぐにでも奪い返しに来ると思っていた」

 拙速なブランの性格と動員能力からして、間違いなく今夜、夜の闇に紛れて襲撃しに来ると判断していた。共に私兵を有する大商人ブランとディーク伯爵の抗争。その混乱に紛れて、目当ての品を奪うというのが俺の計画だった。

「……ノートン君って、本当に盗みは初めてなの?」

「まあ、ウチはまっとうなお店だからな」

「だとしたらすっごい才能だと思うよ」

 盗みを褒められるのは変な気持ちだが、彼女に褒められるのは嬉しく、ついつい饒舌になる。

「褒めてくれるのはまだ早い。もう一つの仕掛けが発動しているはずだ」

「まだ何か仕掛けたの?」

 事実、屋敷の兵士たちはレイナたちの侵入に気づかないほど、混乱の極みに達していた。あちこちから兵士たちの怒声のような声が聞こえる。

「ブランの私兵だ、お前ら、早く迎撃しろ!?」

「火事だぞ! 地下から煙が上がっているぞ!!」

「小便が止まらないんだ!」

「既に地下にまで侵入されたのか」

「こら! こんなところで立ちションするな!」

「火事を小便で消すんだ!」

「無茶言うな! も、漏れる!!」

 塔の中はトイレを奪い合う男たちで、大混乱だった。兵士たちの多くが持ち場を離れ、屋敷の中にあるトイレの前で列をなしている。

「あれは、なんの魔法具の効果なの?」

「バッカスの杯でつくった、クイーンコブラの酒だ。激しい利尿作用がある」

「そんなものを、屋敷の水路に流していたのね」

『がはは、クイーンコブラの酒こえ~、おしっこまみれだガハハ』

 火事とトイレをめぐる大騒ぎに紛れ、俺たちは屋敷の最上階の扉にたどり着く。ここまでの障害はなく、まるで無人の中を走るようだった。

「貴様ら、何者だ?」

 最上階の扉の前に立っていたのは、古風な甲冑に剣を携えた大男だった。

 男が俺たちに向けて抜刀する。見たところクイーンコブラの解毒酒の影響はない。上階だけあって、別の水源を使っているのか、あるいはマイボトルでも持っているのか、どちらにせよ突破するしかない。

「すまんが相手している間はない」

 俺は小さな酒ビンを投げつけ、中の液体が男の顔にかかる。

「──酒? うおおお、なんだこれは!? 甲冑が、体が、とけるうううう!」

 男が姿勢を崩しながら、奇声をあげる。

「それはスライムで作った酒だ。しばらく体は軟体になる」

「……ノートン君、こんなものを、わたしに飲ませようとしたの?」

「まあ、酔いがさめたら元に戻るさ」

 ドロドロになりもだえている門番の男を素通りし、伯爵の私室のドアの前に立つ。予想していたことだったが、重厚なカギで施錠されていた。

「レイナ、頼む」

「おっけい」

 レイナは戦闘形態のキャロットスカートにイマジンドレスを変化させる。そして右足を大胆に上げ、「チェストー!」という掛け声と共にかかとを落としを放ち、錠を粉々に破壊した。

 俺は扉を開け、中に侵入する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ