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【怪盗ドレッドノートの秘宝と天にとどく魔法の姫】  作者: 蒼空 秋


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初デートは泥棒

 翌日、俺は自宅のリビングで待機し、レイナが来るのを待っていた。

 

(本当に来るのだろうか?)


 もうすぐ夜九時、昨日レイナと会った時間になる。こうしていると、昨日彼女と会ったのが夢のようで、実際の出来事だったという自信がなくなってきた。


『大丈夫です、昨日のレイナさんとの件が夢でないことは、わたくしが保証します』


 俺の不安な心を察したのか、イエローストーンがそう答えてくれる。


 昨晩から店を閉めて、今夜の盗みのための準備時間にあてていた。一晩で、何もかも変わってしまった。まっとうに生きていたはずなのに、今や怪盗の一味(?)だ。レイナのことを思い出すと、思わずため息がでる。


『ため息なんてついちゃって、お年頃ですねご主人』


「そんなんじゃない」


『わたくしは、あんまり気乗りしませんね』


「レイナのことが嫌いなのか? イエローストーン」


 これは意外だった。イエローストーンは、レイナのことを気に入っている風だったからだ。


『いえ、あの娘についてではなく、内大臣を敵に回すことです。レイナさんのために王国の敵にまでなってしまうなんて、いつもの慎重なご主人らしくないなと思いまして』


 イエローストーンの気持ちはわかる。我ながら軽率だと思うが、放ってはおけなかった。


「じゃあどうすればいいと思う?」


『レイナさんを連れてどこか遠くに逃げてしまってはどうでしょうか?』


 とんでもないことを言うやつだ。


「店はどうするんだよ?」


『ご主人の愛の逃避行の為なら、店をつぶしてもララさんは笑って許してくれますよ、きっと』


「どうしてそういう話になる」


『あんないいお嫁さんはいませんよ?』


「猫人のアイテム商の俺が、姫とつりあうわけないだろう?」


『つまりつりあう立場なら、お嫁さんにしたいと?』


 イエローストーンの質問に、言葉が詰まる。俺は一体、何を考えているんだ? 身分も容姿も何もかも、不相応にもほどがある。


「そんなことをしたら、この国はどうなる?」


 そうだ。王太子が逃げ出したこの国は、恐慌状態になって滅亡してしまうかもしれない。


『それこそ、内大臣さんが考えるべき案件ではないでしょうか?』


 イエローストーンの言葉は、確かに一理あった。そもそも内大臣は天位魔法もなしに、いったいどうやって魔獣に対抗するつもりなのだろう? 


 まあそんなことを考えても仕方ない。とにかく、今日の盗みを成功させないといけない。


『はあ、初めてのデートが泥棒とはねえ』


「デートではない」


 イエローストーンの言葉を否定するが、このドキドキ感は本当に最初の盗みに挑む緊張感なのだろうか? それにしては妙に甘酸っぱい感覚があった。


 またため息が出てくる。レイナに協力をすることに関しては、後悔は微塵もない。だが鏡に写っている猫人の俺の顔を見るたびに、不思議とため息がでてくる。猫顔であることを気にすることなど、いつ以来だろうか。


『まあ前向きに行きましょう。至高の宝を得ることで、猫化の呪いを解くことができるかもしれませんし』


「そうだな、そうだったらいいな」


 もしドレッドノートの隠した至高の宝が呪いに関係するものなら、現状は変わるかもしれない。前向きに考えよう。


 そうこうしているとドアがひかえめにノックされた。俺は慌ててカギを開け、ドアを開ける。


「こんにちは」


 頭からフードをかぶり微笑んでいるレイナが、目の前にいた。俺は周囲を確認しながら、レイナを家に入れる。


 レイナは部屋に入り、かぶっていた大きめのフードを脱ぐ。フードの下は変装用のエルフ耳に戻っていた。服装は動きやすそうな可愛らしいミニのワンピースに、俺があげた浮気者のニーソックスを合わせている。いわゆる絶対領域というやつだろうか、ニーソックスとミニスカートの間からのぞく太ももが、妙に魅力的に見えた。


「えへへ、来ちゃった」


 はにかむ彼女の姿をみるだけで不思議と花が咲いたような明るい雰囲気になる。


「ああ」


 俺は言葉につまり、気の抜けた返事をした。やはり昨日の出来事は幻ではなかったらしい。


『何しているんですかご主人、とりあえずレイナさんを誉めて、どこでもいいですから~』


 言葉が見つからない俺に対し、イエローストーンが小声でアドバイスしてくれる。


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