▼ネムリヒメ
「姫様の、御学友ですか?」
私に、という声は掠れていただろう。
何かの間違いでは?とはもう声にも出せなかった。
「そうなんだよ、アリシアちゃん。今年のご入学に際して、姫様の御学友としてアリシアちゃんが選ばれたんだ。」
目が覚めて弟に授けられたナイスなアイディアを、6年もの眠りから目覚めた愛娘に狂喜乱舞する両親に伝えると勿論だと請け負われそのまま手続きをすることになった。
【茨に抱かれた眠姫】として世の同情を買い、有名になってしまっていたらしい私の目覚めの噂は千里を駆けたらしく、翌日からポンポンと祝いの花や手紙が届いたが、眠る前の私は社交界にも殆ど出ておらず身に覚えのない名前が多かった。というか、殆ど知らない名前だったし男だった。
これは聞くところによると、アレクシスが私を目覚めさせるべく名だたる医者や魔法使いを呼んだとかで、なのに私には指1本触れさせずまるで茨に守られているようだとそのうちの一人が零した事から発するらしい。それで治せとは、確かにお手上げだろう。
手紙や花は、悲しいが噂の独り歩きの弊害だ。いつの世も深窓の姫君は美しいと皆妄想する。こんな平凡な私ではあるが、眠りこみアレクシスは近寄らせずの状態であれば容姿は分からないも同然であるし、噂好きな周りにどんな令嬢か聞かれれば世辞でも「美しい」言わざるを得ない。結果、周囲の思い込みによって【茨に抱かれた眠姫】は花束と手紙に覆われることになったのだ。
そんな訳で、今、まさに私は国で時の人となっていた。
まぁ、6年も寝てたのだから。納得であるし、ここに1つ付け足す事がある。
起きたらピアスを着けていた。
左右に小さな石で、薄いピンクの光を反射しているそれを、アレクシスは説明しなかったが、父母の反応で気付いた。
大精霊との契約、魔力の供給をどうやってするのか。それがこの魔法石を介してということなのだろう。なんとなく加護も感じるような気がする。
そう、加護。加護だ。
6年もの眠りから目覚め眠姫に、どう見ても大精霊の加護が付いているのだ。
わわわわわっと人が沸いてしまった。
一時的にしてもなんにしても、流行りのものが大好きな人がいる。王宮の皆々様だ。
疎くても政治に支障が出るので困るが、こんな時に好奇心を出さなくてもと泣いてしまいたい。
「アリシアちゃんに無理はさせたくないんだが…王宮直々の命なのだ…」
これはいくら娘溺愛のお父様でも覆せない。
かくして、私の春よりの学園入学は華々しく決定してしまった。




