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文化祭編第三話 ポップコーンと相棒

「スイ!しっかりして!」

気づけば僕は、ホタルの腕の中にいた。ホタルの制服が濡れている。あっ、泣いてたんだな。



「大丈夫?急に泣き始めたから、びっくりしたじゃん。」

あたりを見回すとここは休憩所らしい。一方で、いつもとは違って、心配そうな顔でホタルがポップコーンを差し出す。



「これ、さっき買ったもの。よかったら食べて。」

ポップコーン?あ、そういえばあの時!




『さて、最後のカード。これはカップの7。幻想的な選択肢を示します。まるで、金色のカップがポップコーンみたいな色ですね。もしかしたら、今日のあなたを守るラッキーアイテムかもしれません。』

って、黒田さんが言ってた!本当に、占いって当たるんだな。ホタルからもらったポップコーンをバリボリ食べていると、妙に真剣な雰囲気になった。



「スイが取り乱したとき、あたしすごい動揺しちゃってさ。正直、あの時スイが何を考えてたかわからないけど。」

ホタルが右耳に髪をかけて、僕に笑顔でこう言った。



「楽しもうよ!一年に一回しかないせっかくのお祭りなんだよ!お祭りを楽しまなくってどうするの!」

その言葉が荒くれている僕の心にやさしく染み込む。あの時の自分を思い出させてくれる。そうだ、僕はただ、みんなと笑いあいたかっただけなんだ、と。空気が読めてるよか、読めてないとかそんなの関係なく、ただみんなで楽しく過ごしていたかっただけなんだ。




少しだけ目尻から涙がこぼれ出る。でも、この涙は拭えない。拭えるわけがない。

「そうだね!」

だって、今この瞬間の僕の気持ちは本当にかけがえのないものだから。僕は、初めてホタルに笑顔をみせた。


「さあて、そうと来れば事件の調査を始めますか!」

ホタルが元気よく立ち上がってガッツポーズを決める。今までなら、うるさくて、元気な奴だと毛嫌いしていた。でも、今は少し安心感がある。コイツといたら、なにかが変わるかもしれないという、淡い期待が僕の胸の中に現れた。



「でも、どうやって犯人を捜すの?」

まあ、だからと言って、コイツがまともな方法を考え付いているなんて、露にも思わないけどな。

「それは、もちろん大きな声で『犯人いませんか?』って言えばいいじゃん。」



やっぱり、ろくでもない方法だ。

「それで、僕ですって言って、犯人が出てきたら怖すぎだろ。」

「確かに。」

おい、そこで納得すんのかい!

「スイは、思いつく?」




内心どきっとした。正直言って、一番確実な方法は思いついている。でも、それを実行に移す勇気がまだなかった。また、一人になるんじゃないかって。でも、信じてみたい気持ちもある。本当にコイツが、小三の時の僕の性格に似てるなら。



「実はさ…」

そこから僕はポツリ、ポツリと自分の能力のことを話し出した。「物体」の声を聞くことができること。だから、人がたくさんいるところに行くと、情報がたくさん入ってきて、疲れること。過去に自分の能力のせいでいじめられたこと。それによって、能力を制限して使うようになったこと。話し終わってホタルの顔を見てみると、とてもキラキラしていた。




「それって、すごくない!?」

「え?」

「だって、探し物をすぐ見つけれるじゃん。」

すごいって、言ってもらって僕はすごいうれしかった。自分の能力なんて何にも役に立たないって思ってたから。

「よし、そうと決まれば…。行こ、スイ!」

ホタルが何かを考えてから、僕の手を握って走り出した。




まず、最初に向かったのは放送室。ホタルによると、放送委員会にお化け屋敷で起きた騒動を伝えて、校舎にいる人たちにも協力してもらうためらしい。その間にも僕とホタルは校舎を駆け回っていた。



「スイ、まずはお化け屋敷から近い順に回ってくよ。あたしは、並んでいる人とかに聞くから、スイは物の声を聞いてみて。」

ホタルが早歩きをしながら、僕に言う。大丈夫。今なら、ホタルがいる。そう自分自身に言い聞かせて

「分かった。僕は、物。ホタルは人ね。」

と返した。



最初に、お化け屋敷の近くにある化学室に行った。謎解きを科学部を企画しているからか、たくさんの人が並んでいる。これは、いい情報が得られるかもしれない。

「すいません。懐中電灯を持っていった人を見なかったですか?」

ホタルは、初対面の人とも臆することなくしゃべれるから、スムーズに行く。それに反して、僕はどの物の声を聞けばいいのか悩んでいた。なぜなら、くだらないことしか喋らないやつが多すぎるからである。例えば、入口に置いてある消毒液。



「どうせ、わたしのことなんて誰も見てくれないのよ。それに比べてあのテレビ君は、みんなから見られていて。あーあ、なんでわたしってこうなの?」と、根暗で嫉妬深い。で、そのテレビ君から話は聞きたいが、なかなか行けそうにない。なぜなら、テレビは化学室の中にあるからだ。一人だけ、何も言わずに化学室に入ったら、順番ぬかしをしているように思われる。仕方なく、壁に貼ってある模造紙の声を聞くことにする。すると




「ギャーーーーーー!いったいわ!なんで、四隅に画鋲が刺さってるの?これじゃあ、いつか私の身体が裂けちゃうじゃない。ほんっと、人間って最低ね。」

悲鳴の嵐が僕の耳をつんざく。これじゃあ、まともな情報は得られないな。そう思った瞬間



「でも、さっき懐中電灯を持って、走っていった子がいたわね。あんなに走って、どうしたのかしら。あの時だけ、痛みを忘れることができたわ~。」

え、どっちに向かって?僕は、模造紙に疑問を投げかけた。

「どっちって、人だかりがない方よ。すぐに左に曲がっていったわ。」

人だかりがない方?ってことは、お化け屋敷とは反対方向ってことか。あの時、お化け屋敷にたくさんの人が並んでいたから。




「ホタル!犯人は、職員室の方向に向かっていったらしいよ。行こ!」

在校生に話を聞いていたホタルが振り返って、走り始めた。僕も慌てて追いかける。化学室の先にある階段を上り、3階に着く。目の前には、たくさんの人。そうだった。ここは、縁日だった。人でごった返している廊下をなんとか通って、僕は根暗なアルコールの声や廊下装飾の声を聞こうとする。アルコールは根暗だけど、廊下に出ているから、一番情報を持っている。でも、話が中々通じずに困ることがほとんどだけど。そんな時だった。




「ごめんなさい!景品が誰かに盗まれてしまったので縁日は、一時閉店します。申し訳ございません。」

周囲の人々から、残念がる声が上がる。僕も、その一人だった。嘘だろ。犯人は、逃走中にここも盗んだのか!一体、何が目的なんだ!



「スイ!これは、チャンスだよ!犯人がここに来たっていう足跡を残していっている。まだ、追えるよ。」

ホタルがすかさず僕に声をかける。確かに、そうとも捉えられる。それじゃあ、ここに飾られている花紙で作られた造花に聞いてみるか。




「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とは、まさに私のことよ。」

おい、こいつ歩かないのに、歩く姿とか言ってるぞ。

「おやまあ、私の声が聞こえるんだっていうんだい?世の中、奇妙なものね。」

「で、早く話せよ。犯人のことを。」




こいつの喋り方お嬢様みたいで、なんか腹が立つ。ゆっくり喋っているし。こっちは、早く情報が欲しいのに。

「短気ね。せっかく、いい情報を教えてあげようっていうのに。」

「じゃあ、早く話せよ。」

「あなたが追いかけている子は、そのまま4階にいったわよ。」



その言葉を聞いて、すぐに僕はホタルの手を掴んで、階段をまた上り始めた。

「もしかして、犯人は4階にいる感じ?」



ホタルも察したらしく、僕の行動に理解を示してくれた。

「うん。これ、僕たちの知らない間に、結構被害が広まっているかもしれない。いち早く、止めなきゃ。」



僕たちはまた、かけだした。


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