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新しい五人目

今週はストックが余分に作れたので、金曜夜に更新してみました。

最終決戦まであと少し。

主人公達の因縁にも徐々に決着がついていきます。

よろしければもうしばらくお付き合いください。

「まあ、良くやったんじゃないかな~。相手の戦力を見極めて戻ってきたわけだしね~」

「いつになく憎まれ口を叩かないんだな」

 リッカの言葉に、セツナはむしろ苦い表情になっている。いっそ、詰られたい気分なのだろう。同じ気持ちが、ジンの中にもある。

 何しろ、ジン達は仲間の一人を犠牲にして地上に戻って来たのだから。

「私も、仲間を失ったばっかりの連中に毒を吐くほど外道じゃないからさ。せっちゃんこういう時に一番へこむタイプでしょ~?」

 その優しさが、今のセツナにとっては毒となる。リッカもわかってはいても、他に言いようが思いつかないのだろう。

 ソウフウ隊の会議室で、サキリ、ゲッカ、セツナ、リッカ、ジンが卓を囲んでいる。

 三大領剣士隊の代表者と、ソウフウ隊の隊長と副隊長が揃っての会議だ。

「連中が入った門はすぐに見つけました。彼らを導きいれた門番達も、今は牢の中です」

 サキリが説明を始める。

「連中が出て来たところを叩こうと兵を配置していますが、いつまで経っても出てくる気配はない」

「そろそろ、食料が尽きてもおかしくない頃だよね~」

「我々の基準ならば、とうの昔に尽きている頃合です」

「なら、そろそろ連中も息継ぎをする為に浮上してくるはずだけど~。してこない、と」

「どうしたものでしょうね。セツナさん達が持ち帰った情報を基にすれば、生半可な戦力はただの犠牲となる」

「なに、この問題は簡単に解決できる」

 サキリとリッカの会話に割って入ったのは、セツナだった。彼の目は据わっていた。覚悟などとうに決めた、とでも言いたげだった。

「僕達が連中を斬れば良い。前回も良い勝負は出来た。ただ、勝利には今一歩届かなかっただけだ」

「……連中と良い勝負が出来る貴方達が死んだら、それこそ詰みなんだけどね~」

 リッカが、真剣な眼差しでセツナを見つめる。

「慎重に行動して欲しいな~。貴方達は、この町に残った最後の希望なんだから」

「……わかっている。これだけ良いメンツを預かって勝てないのは、リーダーである僕の責任だ」

 セツナをリーダーに選んだ覚えはあっただろうか。どうでも良いがそんなことを思ってしまったジンだった。

 もっとも、肩書きからすればリーダーに相応しいのはセツナだろう。だから、反論も特にはしなかった。

 ジンは卓の一点を見て、考え込んでいる。

「ジンさん」

 ゲッカが、口を開いた。

 また、何か小言を言われるのだろうか。そう思い、ジンは身構える。

「はい、なんでしょう」

「大怪我を、するのでしょうね」

「まあ、無傷ではすみますまい」

 ゲッカは、苦笑した。泣き笑いのような顔だった。

「それでも良い。戻ってきてくださいね」

 予想外の台詞に、ジンは一瞬言葉を失った。

 そして、苦笑して、彼女の言葉に答えた。

「善処します」

「善処ではなく、こんな時は約束すると言うものです」

「……ゲッカさんは相変わらず手厳しいな」

「貴方達には苦労させられたのだから、それぐらいは良いでしょう」

 過去を懐かしむようにゲッカは微笑む。

 ジンもそうだった。この町で冒険をするようになったばかりの頃のことは、最早懐かしく思えた。




「クロウの穴、どうやって埋めます?」

 剣士隊宿舎への帰り道、ジンはセツナに訊ねた。空には欠けた月が輝いている。

 相手が悪かったとはいえ、クロウもかなりの達人だ。この町で十本の指に入る実力者だろう。だから、その穴を埋めるのはそう容易ではなかった。

「考えてある。お前は気にせず休むことだ」

「俺も命を賭けている。考えを知りたいものです」

「僕に任せろと言っている。この町における最適解はもう見えている。お前は、新婚なんだから家に帰ればどうだ」

「……新婚ごっこは、終わりましたよ。俺も弟子も、命を捨てる覚悟をした。今、あの家に戻っても、覚悟が揺らぐだけです」

「……あまり気負い過ぎぬことだな。野生の動物はつがいようと強いものは強い。そういう風に出来ている」

「それでも、自分の先がどうなるかは気になるものです」

 セツナが、ふと足を止めた。ジンもつられて足を止める。ジンを見つめるセツナの表情には、迷いが見えた。

「お前、クロウを倒したあの男と、やりあう自信はあるか?」

 それは、唐突な質問だった。

 ジンはしばし、返答に窮した。

「わかりませんよ。俺は魔術戦に必死だった。クロウの戦闘までは見ていません。ただ、あのクロウが神術のフォロー付きで負けた。相当相手とレベル差があったってことだ」

「この町でクロウより強い人間がいるとしたら、それは誰だ?」

 セツナの問いに、ジンは黙り込む。

 答えは明白だ。

「そうだ。お前と僕しかいない。そして僕はウラクの相手をする必要がある。お前がクロウを倒した男に勝てなければ、僕達にそもそも勝利はないんだ。逆に言えば、僕とお前のどちらかが死ねば、そこで勝負は決する」

「……気負わせてくれるな」

「だから、気にせずに寝ろと言ったのだ、僕は。後は任せておけ」

「先生がいれば、勝てるんじゃないでしょうか」

「……お前の師は、戦地で行方不明だそうだ」

 苦々しげに言うと、セツナはさっさと宿舎に戻って行ってしまった。

 師が行方不明。その事実に、ジンはショックを覚えなかった。いつかはあの人はそうなるだろうという予感があったからだ。その通りに、ことが進んだだけだ。

 ただ、この局面で彼の手が借りれないのは痛手と言えた。

 ジンは、剣の柄に手を伸ばした。鞘から剣を解き放つ。月明かりを受けて輝く剣には、ジンの顔が映っている。

 憂鬱げな表情だった。覚悟を決めた表情にも見える。

 元より、覚悟は決めていた。自分が死ぬ覚悟も、弟子が死ぬ覚悟も。

 ジンは剣を鞘に収めると、なんとなく海に向かって歩き出した。砂浜に行くと、先客がいるのが見えた。

 マリだ。その背中に話しかけることをせずに、ジンは宿舎に戻った。

 覚悟が揺らぐことを、ジンは恐れた。頭の中には、既に彼女と手を繋いで歩いた夜の砂浜の情景が蘇りかけている。

 最早、事態は変わってしまった。今の状況は、ジンとマリの逃走を許してはくれそうにない。




 マリは、海を眺めていた。

 呪法解放の影響で、まだ気分は悪い。しかし、いつもより症状が治まるのが早まっていた。

 あのバクと言う男の呪いの拳と触れ合うことで、マリの体内の呪いが変化したようにも見えた。

 バクの呪いは、マリの呪いとは種類が違っていた。どう違うかと言われるとマリは上手く説明できない。ただ、バクの纏う呪いの方が、底のない闇のように見える。

 マリとて、絶望の中で死んだ魔術師達の呪いを身に受けている。ならばそれも、底のない闇のようであるべきだ。

 けれども、マリの呪いは、バクの呪いに比べれば色が薄いように思えたのだ。

 その種類の違いが、勝負の明暗を分けかねないような予感が、マリにはある。

「まあ、どす黒くなるほどあいつが嫌われてるって考えることもできるけどさ」

 マリはぐっと腕を伸ばして、手を開閉した。

 傷は完全に癒えている。腕輪に封じられた呪いが生み出す魔力も、十全に発揮できる。

 まだ本気を出していないと相手は言った。

 だから、どうしたと言うのだろう。自ら退くと言う道はない。ぶつかる道しか、マリには残っていない。

 その結果、遺跡に眠る遺体の一個になろうとも、マリに悔いはなかった。

 マリは拳を握って、自らを奮い立たせようとした。

「マリさん」

 声をかけられて、マリは振り向いた。

 ハクアが、立っていた。

「どうしたの? ハクア」

「眠れなくって。マリさんは?」

「考え事。また、あいつとぶつかるんだろうなって思ってさ」

「不思議な方ですね、マリさんは」

 ハクアは、苦笑顔だ。

「活き活きとしているように見えます」

 マリは、唖然とした。今のマリは、程よい緊張感の中にいた。確かにそれは、活き活きとしているようにも見えるかもしれない。

「……私にとっては、全ての決着がつくからね。長かった、旅の」

 マリは、真っ直ぐ前を見た。

 夜の闇の中で、月に照らされた遺跡の島が見える。

「私にとっては、クロウを取り戻すための戦いです。お互い、もう逃げられなくなってしまいましたね」

「そうだね。気がつくと、引き返す道はもうなくなってる。こういうことも、あるものなんだね」

「マリさんはこんな時、どんなことを思います?」

「……私は、考えるほうじゃないからな」

 マリは、苦笑する。元々、頭が良いほうではないのだ。

「前にしか道がなくて、そこに壁があるなら、当たって砕ける。それだけかな」

「私も、そうありたいものです」

「決意が、定まらないの?」

「私は、争いと言うものが苦手なのでしょう。ここに至っても、殺意が沸いてこない。何故、争わねばならぬのか。何故、彼らはこんな真似をするのか。そんなことすら、思うのです」

「……師匠なら、何か良い台詞も思い浮かぶんだろうけどなあ」

 マリは、腕を組んで考え込む。あのぶっきらぼうな師なら、こんな時にどんな台詞を吐くのだろう。冷たい台詞を吐く気もしたし、暖かい言葉をかける気もした。

「……けどね、それも人としては間違ってはないんだと私は思う」

「そうでしょうかね」

「うん。皆が皆、殺意でギラギラしていたら、もしも平和に解決できる可能性が残っていてもそれを自ら断ってしまうかもしれない。優しい人もいなければ、バランスが取れないよ」

「……そうかも、しれませんね」

 ハクアは、まだ躊躇っているようだった。

 マリは、言葉を続ける。自分に言い聞かせるように。

「けど、それとは別に、前線に立つ人間には戦士としての覚悟も胸になければいけないんだと思う」

 ハクアは、静かにマリの言葉を聞き続けている。

「それは、人の道とは違う道。自分の守るべきものは譲らない。前歯が折れようとも相手に噛み付く。例え相手を踏みにじろうとも、自らの大事なものの為に歩み続ける。その決意の有無が、戦士と戦士じゃない人を分けるんだと思う」

 ハクアは、返事をしない。考え込んでいるようだった。

「私は、戦士だ。そういう風に、なってしまっている。ここに至って、未練も、迷いも、ないんだから」

 それを支えているのは、村を滅ぼされたと言う恨みだ。恨みを晴らすためにマリがいると言うよりは、マリの根幹にその恨みがあると言えた。

 ハクアは、答えない。

「偉そうなことを言うみたいで恐縮だけど、戦場に出るまでに、迷いは捨てることだよ。戦場での迷いは、死に繋がるからね」

「ええ、私もそれを、実感していたところです。私の迷いが、クロウを失わせた。ならば、私はもう、迷うべきではないのですね」

 それはまるで、自分に言い聞かせているような言葉だった。

「ただ、最後に平和的な解決は望めないか。そんな話もしてみたいと思うのです」

 呟くような、ハクアの言葉だった。




 遺跡に再び入る日は、すぐにやってきた。

 今回は、他に遺跡に入っているメンバーもいないので、体を休めたらすぐに再出発と言う話になっていたのだ。

 部屋の扉をノックされて、マリは腰を上げた。扉を開けると、そこにはリコが立っていた。

 彼女は神妙な表情で、俯いている。

「そっか、ごめんね。最近、皆に読み書きを教えてなかった。サボって悪い先生だ」

 マリは苦笑する。その柔らかい表情の奥に、バクへの殺意を抱え続けている自分の醜悪さに、自身で嫌気がさす。

 リコは、けしてマリに視線を向けずに、首を横に振った。

「違うんです。なんだか最近、町の様子がおかしいって、わかってるから」

「別に、おかしくなんかないさ」

 マリは癖で、男の声を作って優しく話しかけている。

「先生。私にだってわかります。町に剣士の人が一杯で、話してることも不穏で。そして、先生達だけがずっと篭っている。何かあったんだって、わかります」

 リコは、マリに花冠を差し出した。

「先生、リコは悪い生徒でした。勝手なことばかり言って、先生を振り回しました」

 マリは苦笑する。

 彼女の言葉を、否定できなかったのだ。リコを可愛いと思っているマリだが、彼女が勝手ではないとは思えない。

「けど、私は先生が大好きです。恩人だと思ってます。だから……どうか……死なないで」

 リコは、花冠を差し出したまま頭を下げる。

 マリは、それを受け取った。

「懐かしいな。子供の頃、良く作ったよ」

「男の人の声、無理して作らなくて良いんですよ」

 リコは、顔を上げて苦笑する。

「本当の先生の声を、聞かせてください」

 マリは、落ち着かない気持ちになった。今まで男声を作っていたのだ。リコに自分の本当の声を聞かせることに、抵抗があったのだ。

 しかし、最後の別れになるかもしれない。マリは、師の前で普段出している声を、口にすることにした。

「わかったよ、リコちゃん」

 リコは、微笑んだ。目に、涙が浮かんでいた。

「先生の本当の声、可愛い」

 リコは、嬉しげに言う。

「帰ったら、女の先輩として、色々教えてくださいね。マリ先生」

「……うん、必ず、帰るよ。約束だ」

 どうして必ずなどと言ってしまったのだろう。マリは、自分で口にした言葉に後悔した。

 けれども、帰れるかはわからない、などと言って心配をかけることも、躊躇われた。

 リコは微笑む。

 彼女はその表情でいれば良いとマリは思う。




「大体の事情はわかった。だから、あのフードの女は炎の魔術に長けていたのだな」

 薄暗い部屋の中で、セツナの言葉に、ジンは頷いた。

 ジンは二人に、敵の黒いフードの女魔術師の話を、つまりはシホの話を説明していたのだ。

「ジン君も、その相手の女の子も、フクノ家の傍流か。本当なら貴族だったんだね~、君達」

 どうでも良さげにリッカは言う。

「里には十数人の魔術師がいた。彼女……シホはその中でも一番の天才でした。手足が伸びきる頃には、うちの両親の魔力を追い抜いていた程です」

「しかし、剣がメインウェポンのお前でもそれなりにやりあえただろう?」

「俺はマリと共有している呪いがあって、そこから魔力を引き出すことが出来ます。つまり、魔力の底上げをしてやっと、相手との均衡を維持できていたってことになる」

「なるほど。相手は天才児と言うことか」

 セツナは投げやりに言った。

「リッカ。魔術の対策は何かないか?」

「距離を詰めることだね~」

 リッカは、いつもののんびりとした口調で淡々と言う。

「魔術と言っても万能じゃないんだよ~。高度な魔術は極度の集中力を必要とするし、魔力を消耗する。魔力を消耗したら集中が出来なくなるって悪循環に陥る。つまり、他のこと……例えば走ったり飛び跳ねたりしながら大魔術を放つのは事実上不可能。さらに魔力を消耗したら、剣士としての腕も落ちる。燃費の悪い固定砲台みたいなものなんだよ~。ジン君が魔術を多用してこなかったのも、そのデメリットを理解しているからだよね?」

「まあ、そうです。相手との距離が近ければ、魔術を使おうとするとこちらが無防備になるし、いざという時に集中力が欠如していては負けにつながります」

「つまるところ~、接近して集中できない状況に追い込めば、相手の魔術はある程度は封じられるの」

「ある程度、なのか」

 セツナは不満げに言う。

「不意打ちで簡易的な魔術を打たれることはあるからね。例えば火球一個ぐらいなら、走りながらでも打ち込むことは出来る。威力はお察しだけどねえ」

「それに、相手と相打ちする覚悟なら剣での戦闘中でも魔術を使うことが出来ます。結局は、それなりの魔術を使うには他の細かな動作を行なうことは諦める必要があるということです」

「つまるところ、迅速な接近さえ可能ならば魔術師は封じられる、と」

「その迅速な接近が難しいんだけどね~。魔術師側だって近寄られないように魔術で牽制してくるからさ~」

「全員で最初に魔術師を狙うというのはどうだ」

 セツナの案に、リッカは首を横に振る。

「相手側も魔術師を守りに入るから、混戦になって収集がつかなくなるね。射手を用意すると言う手もあるけど、相手側が矢を防ぐ役割の人間を別に用意したらとたんにこっちが不利になる」

「結局のところ、魔術合戦に期待するしかないわけか」

 セツナは、溜息混じりに言った。

「そういうことになりますね」

 ジンは、正直にそう答えるしかない。

「で、ジン君。君にその覚悟はあるのかな~?」

 リッカが、ジンの表情を覗き込むように言う。心の中を見透かそうとするかのような、真面目な表情だった。

「その覚悟は、と言いますと?」

「幼馴染の死を見る覚悟、だよ」

 痛い所を突くな、とジンは思った。

「……過去のことに関しては、整理はついています。幼馴染が現れて動揺していますが、それも長くは続かないでしょう」

「つまり、幼馴染が死んでも良いと?」

 リッカは、真剣な眼差しでジンを見つめる。

 ジンは苦笑して、素直になることにした。

「……本当なら、故郷の両親の元にあいつを連れて行ってやりたい。けど、そんなことを言っていられる状況でもありません」

「そっか、そっか~。まあ、そうだよね、幼馴染だものね」

 リッカは、納得したように言う。

「これは、ジン君に魔術を期待するのは間違いだね、セツナ」

 リッカの言葉に、セツナはしばし考え込んだが、苦い表情で頷いた。

「いざという時に迷われたら困る。魔術師対決から、ジンは外れてもらうのが妥当だろう。どの道、僕はジンの剣の腕を買っていた。なら、誰が魔術師の相手をするか、だ」

 セツナが、真面目な表情で言う。

「……せっちゃんらしい、遠まわしな台詞だね」

 呆れたような表情で、リッカは言った。




 そして、五人は再び、遺跡のある島へと辿り着いた。

 前回使用した門では四人しか入れないので、今回はフクノ領の門からの出発となる。

 遺跡の中へ入ってしばし経つと、敵の大群が襲い掛かってきた。

 小柄なゴブリンが十体ほどだ。

「十秒、稼いでくれる~?」

 のんびりとした口調で、女性が言う。

 ジン達はゴブリンの足を止めるために、剣を鞘から抜いて時間を稼ぐ。

 その周囲に、五十は超える火球が浮かび上がった。

 火球が周囲に飛び散る。

 そして、その一個一個が意思を持ったかのように、ゴブリンに向って襲い掛かっていった。

 火球はゴブリンに触れては爆発をする。相手の顔が、肌が、赤黒い色に染まっていく。

 さらに、火球は最初に浮かび上がった分で最後ではない。次から次へと追加が出てくる。

 そして最後には、そこにはモンスターの遺体の山が出来ていた。

「たいしたものだ。統一王が魔術を禁忌としたのもわかる」

 セツナが、苦々しげな表情で言う。

「まだベストコンディションじゃないな~。火球のコントロールが甘い。けど、魔力を万全にしとくには乱用も出来ないから、練習もほどほどにしないとな~」

 女性が、苦い顔で言う。

「こんなの反則ですよ。戦場に置いておけばこちらの勝ちじゃないですか」

 ハクアが、感心したように言う。

「そんなに大勢を相手取れるほど集中力も魔力も続かないし、戦争じゃ相手には鎧もあるし、矢で率先的に狙われるし。こういった閉鎖的な環境じゃないとそこまで脅威じゃないんだよね~」

 そう言いつつも、目の前には彼女が作った魔物の遺体の山がある。

 誰もが彼女を、フクノ・リッカを脅威と見なし、同時に強力な仲間だと認識したのだった。

 新たな五人目の仲間は、こうして見つかった。

 最後の決戦が、始まろうとしていた。

次回

遺跡の謎かけ

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