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オバケな幼馴染と以心伝心、初恋注意報!?  作者: 雨宮ツムグ


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勝負注意報

「おい」

「……」

「こら」

「……あ、何むぐ」

昨日すやすやと俺の隣で眠っていた拓己の様子を思い出していたら、口にご飯を詰め込まれて食べる。

膝の上に置いたお弁当を見る拓己の、伏せられた目を見ていたらいつの間にか意識がそちらへ飛んでいたようだ。

「考え事か」

「……ああ、いや、うん」

「あ?」

「今日、図書館行ってみる?」

「あー?ああ、うん」

なんだか今日はお互いぼんやりしている。

また差し出されたおかずを食べながら、ぼうっと考えて。

首筋を汗が伝うから、ハッとした。

「暑いね」

「おー」

そろそろ梅雨だし、夏だし。

体育倉庫の横でお弁当を食べられる日もあと僅かかなと思う。

体育倉庫が開いていて、エアコンがあって、二人でお昼を食べられたらいいのに。

そんなことを考えながらまたぼうっとしていたら、暗くなって、唇に、柔い感触。

「隙あり」

「こら」

突然キスしてきた拓己に怒りはするものの、こういうこともできなくなってしまうのだなと思うと少し寂しい。

じっと拓己を見ると拓己もこちらを見ていて、少しだけ悩んで、「おかわり」とおねだりする。

拓己はおかずの『おかわり』ではなく、ちゃんとキスの『おかわり』をくれて、お腹だけでなく心も満たされていくのを感じた。


「また明日ね!」

「また明日、小春さん」

「……」

「こら拓己」

相変わらず小春さんを威嚇し続ける拓己を引っ張りながら、図書委員の仕事で図書室へ行く小春さんと別れる。

オバケの拓己をなんとかする為に行ったきり行けていない学校の図書室も、また遊びに行くのもいいなと思った。

「小春さんもあのファンタジー小説知ってるかな?」

「浮気か」

「えっ!?」

えらく飛躍した返事が返ってきて驚くけれど、拓己は至って真剣といった表情だからちょっと真面目に受け止める。

拓己の小春さんへ対する威嚇も冗談混じりだと思っていて、でも、実は結構本気なのだろうか。

「ご、ごめんね」

「分かればいい」

「うん……」

冗談だよバーカ、じゃないところを見るに、本気だったようだ。

二人のじゃれ合いのように思っていた俺は、認識を改めなくてはと思う。

俺の中では拓己が一番なんて当たり前のことで、けれどほんの数週間分の俺の記憶しか持たない拓己からすれば、小春さんは十分脅威たり得る存在なのだと解釈する。

今すぐ拓己を抱き締めて、沢山撫でて、拓己が好きだよと伝えたいけれど、周りには人が沢山居て。

スマホの電源を入れると、靴を履き替えるタイミングで拓己に『好き』と、一言だけメッセージを送る。

すぐ受信に気付いた拓己がスマホを見た瞬間駆け出した俺は、その後猛スピードで追い掛けてくる拓己から声を上げて笑いながら逃げた。

結局あっさりと捕まってしまったけれど、直接言えボケって言われて、この暴言は照れ隠しだな、とか。

あと百回は言えって公園で言われた時のことを思い出して拓己を見る。

「……好き」

「……」

「ちょ、こらっ、こら!」

走った分周りに人が居なくなったから言えば、顔を近付けてくるから全力で拒否する。

さ、流石に外でキスは無理!と、また走って逃げようとするけれど今度はすぐに腕を掴まれてしまった。

「はーなーしーてー!」

「諦めろ」

「あああ」

頭をめちゃくちゃに撫でられて、目が合えば嬉しそうに微笑まれて。

俺にとって拓己が一番であることは当たり前のことだけれど、拓己が俺の傍に居てくれることは当たり前ではないことを思い返す。

拓己にこれからもずっと好きでいてもらえるように。

拓己にこれからもずっと傍に居てもらえるように。

拓己にこれからもずっと傍に居たいと思ってもらえるように。

不安にさせたり、嫌な気持ちにさせたりすることは避けなくてはいけないと改めて思った。

「拓己が一番ってこと、当たり前すぎて蔑ろにしちゃってた。もっと特別だってことが拓己に伝わるように頑張るね」

「……」

「だ、だからあの……好きって言うたび、襲わないで、ね」

「……無理な相談だな」

「えっ」

勇気を出して伝えた交渉は一瞬でダメになってしまった。

じゃあどうしようかな……と考えていたら、拓己が少しだけ耳元へ寄ってくる。

「お前からキスしてくれたら解決だぞ」

「っ、ばか!」

わざと低い声で言われて、拓己の狙い通りゾクゾクしてしまった俺は拓己を押しやる。

俺からキスしたって、結局返り討ちにされて襲われる未来しか見えないのだからなんの解決にもなっていなかった。

「俺がお前からの好きに耐えられる日と、お前が俺からのキスに耐えられる日、どっちが早く来るか勝負だな」

「……一生無理かも」

「はは」

きっと俺はおじいちゃんになっても、拓己からのキスには照れている気がする。

それからおじいちゃんになっても傍に居られたら、本当に産まれてから死ぬまでの一生を共に過ごすことになるのだなと思って、胸がじんとした。

「大好き」

「……キスしてってか?」

「あっ、ちが……わ、ないけど、今はだめ」

「お……前まじ……はあ」

大きく溜め息を吐いた拓己が先を歩く。

伝えるって、素直になるって、難しい……。

そう思っていたら、少し先で拓己が振り返って。

「行くぞ」

「……うん」

手探りでも伝えていこうと思う。

俺が追い付くのを待って、また歩き始める拓己の隣は、これからもずっと、俺の居場所であってほしいから。


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