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#顔出ししてみた  作者: 佐和多 奏


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40/40

俺にとっての音楽とバレー

一番前で聴いているのは、俺たちと多分おんなじ世代くらいの人。


曲が終わった。


その人に、話しかけてみた。

「え、ロックとか、好きなんですか?」


「あ、あー、好きですよ。特にブルパミがとっても好きなんです」


「そうなんですね! え、大学でバンドとかやられてたりするんですか?」


「え、あ、あの……僕、26歳です」


えっ!? てっきり、同い年くらいの人に見えた……。


「じゃ、じゃあ、社会人ですか?」


「一応……」


3人とも、ポカーンとしてる。


俺はドラムの方を見つめた。


機材はある。インターフェイスもある。


「これ、って、ギター繋げるんですか?」

「うん、繋げるよ」


俺たちは、ライブ終わりの3人とドラマーの4人で、演奏をした。


1番前には社会人の人、その周りにたくさんの人が集まってきた。


最初はその人が1人でしか聴いていなかったのに。

30人、40人と。真夜中の都会の暗闇の中で。



幻想的なライブが、幕を閉じた。


演奏を終えたドラマーが、ハハハと笑いながら言う。


「プロなんてさあ、ならないほうがいいぞ」


その気持ちは、とってもわかる。


ドラマーの人から少し離れて、その社会人の人とも4人で話した。


「まあ、これから俺は就職して、それで……」



「正直、なんでもいいと思うよ。キャリア選択なんて、どれがいいのかなんて言う答えはないし、安定した企業に入ったところで辞める奴は辞めるし。ただ、俺が何社か転職して思ったのは、やっぱ……好きなものだったら、ほんの少しだけ、モチベが上がるかな」


俺が、バレーから音楽に逃げていた時もそうだった。


俺はバレーが好きだったのか、音楽が好きだったのかはわからない。


でも、確かにあの時、高校の入学式で友田と2人で海に行った時、俺はバレーが楽しいって思えた。


それが、春高優勝に繋がったのかはわからないし、別にプロからオファーが来たわけでもない。来てはいたけれど、なんか断った。


続けられたのは、バレーが好きだったから?



でも、中学では、バレーを辞めていた。


俺は、バレーが好きだったんじゃない。みんなと切磋琢磨して、いろんな仲間と出会って、それが好きだったんじゃないのかな。


でも、たまたまバレーだっただけ。別にサッカーだってバスケだって、良かった。


でも、音楽は違った気がする。


俺にとって中学からの、冬月としての音楽活動は、音楽じゃなきゃダメだった気がする。



俺はあの時、全力で受験に取り組む隆斗を横目に、音楽があったから頑張れた。


俺にとってバレーと音楽は、似て非なるものなんだと……


「なにしてんだ、帰ろうぜ」


2人が手を振ってくれている。


ああ、そうか。


顔出しをしていなかった冬月の頃の俺には、こんな風に手を振ってくれる仲間なんていなかったから。


さっきの社会人の人は、いつの間にかいなくなってる。


「ああ、今行くよー」


俺は2人の方に、ギターを背負いながら走っていった。




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