俺にとっての音楽とバレー
一番前で聴いているのは、俺たちと多分おんなじ世代くらいの人。
曲が終わった。
その人に、話しかけてみた。
「え、ロックとか、好きなんですか?」
「あ、あー、好きですよ。特にブルパミがとっても好きなんです」
「そうなんですね! え、大学でバンドとかやられてたりするんですか?」
「え、あ、あの……僕、26歳です」
えっ!? てっきり、同い年くらいの人に見えた……。
「じゃ、じゃあ、社会人ですか?」
「一応……」
3人とも、ポカーンとしてる。
俺はドラムの方を見つめた。
機材はある。インターフェイスもある。
「これ、って、ギター繋げるんですか?」
「うん、繋げるよ」
俺たちは、ライブ終わりの3人とドラマーの4人で、演奏をした。
1番前には社会人の人、その周りにたくさんの人が集まってきた。
最初はその人が1人でしか聴いていなかったのに。
30人、40人と。真夜中の都会の暗闇の中で。
幻想的なライブが、幕を閉じた。
演奏を終えたドラマーが、ハハハと笑いながら言う。
「プロなんてさあ、ならないほうがいいぞ」
その気持ちは、とってもわかる。
ドラマーの人から少し離れて、その社会人の人とも4人で話した。
「まあ、これから俺は就職して、それで……」
「正直、なんでもいいと思うよ。キャリア選択なんて、どれがいいのかなんて言う答えはないし、安定した企業に入ったところで辞める奴は辞めるし。ただ、俺が何社か転職して思ったのは、やっぱ……好きなものだったら、ほんの少しだけ、モチベが上がるかな」
俺が、バレーから音楽に逃げていた時もそうだった。
俺はバレーが好きだったのか、音楽が好きだったのかはわからない。
でも、確かにあの時、高校の入学式で友田と2人で海に行った時、俺はバレーが楽しいって思えた。
それが、春高優勝に繋がったのかはわからないし、別にプロからオファーが来たわけでもない。来てはいたけれど、なんか断った。
続けられたのは、バレーが好きだったから?
でも、中学では、バレーを辞めていた。
俺は、バレーが好きだったんじゃない。みんなと切磋琢磨して、いろんな仲間と出会って、それが好きだったんじゃないのかな。
でも、たまたまバレーだっただけ。別にサッカーだってバスケだって、良かった。
でも、音楽は違った気がする。
俺にとって中学からの、冬月としての音楽活動は、音楽じゃなきゃダメだった気がする。
俺はあの時、全力で受験に取り組む隆斗を横目に、音楽があったから頑張れた。
俺にとってバレーと音楽は、似て非なるものなんだと……
「なにしてんだ、帰ろうぜ」
2人が手を振ってくれている。
ああ、そうか。
顔出しをしていなかった冬月の頃の俺には、こんな風に手を振ってくれる仲間なんていなかったから。
さっきの社会人の人は、いつの間にかいなくなってる。
「ああ、今行くよー」
俺は2人の方に、ギターを背負いながら走っていった。




