勇者シリウス!
「もう竜王なんてタイトルは御免だ!返上してやる!」
誰もいない玉座の間に虚しい声が反響する。
「誰か来いよ!!」
ちょうどその時だった。
「お前が竜王か。ここに魔王がいると聞いたが本当か?」
暗い廊下の方から声が聞こえる。
「ああ、本当だとも。お前が求めてるものとは違うかもしれないがな」
「魔王と戦うにはどうしたらいい?先にお前を倒せばいいのか?」
竜王である俺など、眼中に無いと言いたいかのような口ぶりである。ただ、その声は口調とは対照的に俺と同じくらいの青年の声だ。
その不相応さは、まるで扇風機で空を目指すようなものだと言ってもいい。
「ははぁ、お前無理してるな?その様子だとまだ若いように見えるが、俺を見くびる余裕などあるのか?」
「僕の敵はお前じゃない。父の仇を取りにきた。邪魔するのなら、誰であろうとただ斬るのみ!」
仇?何のことだ?
バルバロスと何か関係があるのか?
「出でよ聖剣!」
竜王っぽさを出すため、足を組みつつ頬杖をついていたが、やつが何か唱えた時、その能力が異常であることを空気の揺れから知った。
「何だ?こいつ......」
「手加減はしないぞ!」
まさしくその影が見えたのは一瞬だった。部屋に繋がる回廊から何か動くものを見たかと思うと、閃光の如く数メートルを駆け抜けた。
「危ない危ない、1秒遅かったらマジで死んでたよ」
俺の目の前で奴の剣を受け止めていたのは、例の双騎士の片割れ改め、Mr.デリシャス。
「主人。これは一体?」
「わからん、わからんが【時止め】の能力を封印してるから、悪いが話している余裕はなさそうだ」
俺の能力はこの世界に来た時、ゼロに戻してある。もちろんいつだって本気は引き出せるが、出来るだけ控えたい。
「全く本気を出さないってつもりもないけど」
目の前にいる少年に不敵に笑ってみせる。たぶん年齢はそう変わらないだろうが。
「今のはなんだ......?」
「さあな。それよりお前は何者だ?そのいかにも『勇者』って感じの鎧、それと後ろで構えてる仲間......魔法使いと、剣士と、僧侶か?全員女の子とは恐れ入った。なろう作品に出て来そうな顔してやがる。転生者か?」
「何の話だ?」
平気そうな顔して喋ってるけど、俺の内心はあんまり平和じゃない。タブレットに映った【勇者】の表記。オールラウンドなステータス。
本気出さないと死ぬ。
「シリウス!何してるの!?」
後ろのピンク髪の剣士が少年あらため、シリウス君に発破をかける。
「ソフィア、まだ手出しは無用だ。ここは僕がやる」
は?このやり取りはなんなんだ?
「なんだこいつら.....」
剣と剣が擦れ合ってギリギリという音を立てる。戦ってるのはデリシャスだから、その間俺は玉座に腰掛けているだけなのだが。




