第1話 カツ丼
『年金が足りなそうなので、小説書き始めました。』
の初めての産物です!
楽しんでいってください。
街外れにある廃線の終着駅。草に埋もれるように、その店はある。
暖簾は色あせ、看板の文字も半分消えかかっていた。
『追分食堂』
それが本来の店名だ。
しかし、代々「六九」が付いた主人が暖簾を守り続けてきたことから、人はここを『六九食堂』と呼ぶ。
現在の親父の名は六九郎、通称ろくさん。
メニューはない。
出せるのは、代々受け継がれた馴染みの出汁が効いたつゆの、駅そばと駅うどんだけだ。
だが、この食堂にはもう一つの顔がある。
店の中にだけ存在する、次元の裂け目。
ここは人生のどうしようもない岐路に立ち、行き止まってしまった者だけが、たどり着ける食堂。
そして、その迷い人だけが頼める『特別なメニュー』があった。
――今日、岐路になってしまったのは‥‥
その日、礼服姿の男が入ってきた。
四十を過ぎた頃だろうか。
男は席につくと、小さく言った。
「カツ丼を一つ」
親父は黙ってうなずいた。
しばらくして、湯気の立つカツ丼が置かれる。
男は箸を取った。
遠い昔を思い出す。
学生時代のサッカー部、
OBの先輩がいつもご馳走してくれたカツ丼
いつも腹を減らしていた俺たちに
「もっと食え」と勧めてくれた。
あの日もそうだった。
人生のどん底にいた。
仕事もなく、先も見えなかった。
最後の日、先輩がカツ丼をおごってくれた。
『どうだ』
『居心地のいい場所でした』
『そうか』
先輩は少し笑った。
そして言った。
『今度はちゃんとやるんだぞ』
その言葉だけは忘れなかった。
だから頑張った。
今いる場所を大事にしよう。
そう思って生きてきた。
今日、その先輩の葬式だった。
男はカツ丼を一口食べる。
あの日と同じ味がした。
「ごちそうさまでした」
席を立つ。
お勘定を済ませようとすると、親父が言った。
「今日は奢りだ」
男は苦笑した。
「参るなあ」
「最後まで同じことするんですね……私はいつも、もらうばかりだ」
親父は首をかしげる。
男がいた席には、空になった丼だけが残っている。
男が扉を出た瞬間
===異空間への継ぎ目が、音もなく閉じてゆく===
「三十年たってもカツ丼ですか」
男は笑った。
「おやっさん、いや先輩」
「やんちゃな俺は、もういませんぜ」
いかかがでしたでしょうか?
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これからも、
『六九食堂』
『年金が足りなそうなので、小説書き始めました。』
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