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ロード・オブ・エリクシル  作者: ナムル
第三章 闇照らす燈火
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閑話 ヨシュア

「……裏切ったか」


「まあラルクという男は一種の狂人だ。別に何らおかしなことではないが」


「――それはともかく、これはおかしな状況になったものだ」


 青髪の少女、アストラフィア・グローリーソードは眉を酷く曲げながら、長閑な農村の入り口にいた。

 

「なぜ貴君がここにいる?教師、……たしかヨシュアといったか」


 目の前には、ピンク色の髪をツインテールにした肩ほどの身長の少女が。

 彼女はふふんと笑うと、指先を彼女に向けた。


「私が約束を破ることはないわ」

「……」

「おっと、詳しく話す気はないわよ。どうせアンタには分かるでしょうし。……グローリー王国()()()、アストラフィア・グローリーソード」


 数年前から隠居状態ではあったが、先代王アラエストル・グローリーソードは数日前に崩御した。

 アストラフィアは王になって数日、父の国葬に出ることもなくこの寒村を訪れていた。


「相変わらずアンタは現場に出てくるわよねー。王になったのに、暇なのかしら」

「自分の運命くらいには、責任を持たねばならんからな」

「ああ、アルマの親友の家族を傷つけるのだから、せめて自分の手を汚そうってこと?悪人のくせに、変に生真面目ね」

「……」


「ところで、何でまだ攻撃してこないのかしら?せっかく囲んでいるのに」


 アストラフィアの護衛の騎士団――人数で言えば、20人程度だろうか――が、一斉に彼女の周りを取り囲んでいた。


「殺せば楽でしょうに」

「無駄に殺しはしない。貴君は王命に反する人間であり、この国にとっての禍となるやもしれんが、」

「しれんが?」

「……さりとて無益なわけでもない。河川の氾濫も湿地帯を作り農業を活発化させる。福も厄も全てを利用する度量が王には必要だ」

「ふぅん」


 その言葉の裏からは、ある意図も読み取れた。……役に立たないのなら、降参しないのなら殺すという意図も。

 されどヨシュアはつまらなそうにあたりを一瞥して、すぐにアストラフィアに向き直る。


「私が言えた事じゃないのは分かっているけれど、誰も彼も、命を軽んじ過ぎなのよね」

「……?」

「人が苦しんでいいはずも、死んでいいはずもないというのに」


 ばさりと、ヨシュアが立ち上がった。

 そしてゆっくりと、アストラフィアを下から見下ろした。


「やっぱり、どうしても傲慢な王様だけは好きになれないわ」

「……ふむ、回りくどい言い方はするなよ。勘違いを招くかもしれん」

「アンタが勘違いするわけないでしょ」

「そうか」


「では死ね」


 刹那、無数の剣閃がヨシュアを襲った。


 ヨシュアはラルクが今までに見てきた中で、最も優れた人徳を持った少女である。

 ゆえにヨシュアは、傲慢なる王の手先によって殺されたのだった。


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