#13 堂島隊
堂島は、気を取り直して、立体地図に新しい点を打ち込んだ。
その場所は現在堂島達がいる町の郊外にある山の中だった。
「前に「スカルヘッド」と戦った「掃除店」の掃除人が殺される間際にスカルヘッドに付けたと思われる発信器を、地元の警察の皆さんが追跡した結果、ここで動きが止まったと言うことらしい。………居場所が割れたのに未だに捕まえる事が出来ていないのが、スカルヘッドの危険性を表してるな」
堂島は付けたポイントを見ながら言った。
「それで……僕達は今日にでもそこに突入すると?」
「ああ、出来るなら早いうちに討伐してくれと言われているからな。スカルヘッドは夜の9時から10時くらいに発信器の動きが止まった場所にある廃墟から出てくるらしい。そこを奇襲して一気に叩こうと思うんだが……、大丈夫か?」
堂島の問いに、それ以外の一同は頷く。
「うっし!それじゃあそれぞれの待機場所と、周辺の地図を配るから、しっかり頭に入れとけよー」
「「「うぃーす」」」
そして、その日の夜9時半。
郊外の森に吹く風が、少し肌寒い。
口田は動き安い様にするため、軽装にしてきた事を少し後悔していた。
森の中は、背が高く太い木々と夜の闇、そして背の高い雑草と中々見通しが悪い。
そんな中を堂島隊の四人は、背を低く保ち、一定の距離を離しながら、前から南沢、堂島、月島、口田という風に進んでいた。
既に、スカルヘッドがいるとされる廃墟まで500メートルを切っているため、どこから襲われても全く不思議ではない。
そんな環境なせいか、口田は普段気にしないような物音まで恐怖の対象となっていた。
(おい口田!離れてるぞ!)
「す!すいません!!」
右耳に付けた小さな無線機から、月島の声が聞こえた。どうやら、意識しない内に、隊列を乱していたらしい。
(………口田、俺の話を覚えているか?)
ボソッ、と呟くような南沢の声が、無線機から発せられる。
(話……ああ……)
おそらく、ホテルの中でされた「恐怖をなんらかのそれ以上の気持ちで押されつけて一時的に無くす」……。そんな話の事だろう。
(……スカルヘッドに比べれば、こんな闇など大したことないだろう……?)
それは恐らく、南沢なりに後輩を気遣って口田を励ましてくれたのだろう。
「………はい!」
そんな気持ちを無駄にするわけにはいけない。
口田は無理やり自分を奮い立たせ、明るい声で無線機の向こうの南沢に答えた。
(……そうか)
(………おやおやぁ?南沢と口田はいつの間にそんな仲良くなったんだ!?あの話ってなんだあの話って!!)
南沢の口田のやり取りを聞いて口を突っ込んできたのは堂島だ。やはり口田がめちゃくちゃ緊張していたこんな時でも、堂島は普段と変わらない様子だった。
(………うぜぇ)
そんな堂島に南沢は小さく毒づく。小さな声だったが、その声に込められた感情は口田や月島には痛いほど伝わった。
(………つーか、もう目標のギタイの言わば縄張りの中だぞ……。こんな油断してて良いの…………)
無線機から聞こえていた南沢の声が唐突に途絶えた。
口田達の中に一気に嫌な雰囲気が蔓延する。
(南沢!おい!聞こえてるか!?)
堂島の声のトーンが変わる。これが口田の中にうっすらと発生していた疑惑を確信に変えた。
南沢さんは………死んだ。
ギタイに、殺されたのだ。
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