#11 堂島隊
堂島達は、取り敢えず荷物を宿に置いてこようと言うことになり、駅の近くにあった安いビジネスホテルに入った。
小さな部屋に小型のテレビとベッドが2つ。トイレと風呂が一緒になっている三点ユニットバス、そして冷蔵庫となんら特徴のない部屋だ。
そんな部屋を2つとり、月島と堂島、口田と南沢と言うペアで使うことになった。
(………体が重い……。ステージ3のギタイの討伐なんて初めてだからな……。緊張してるのか……。)
先程までは、月島達と会話していたため、まぎらわされていた暗い不安の感情が、口田の中でむくむくと膨らんで来ていた。
「もしかしたら……死んじゃうのかもなぁ……」
口田はボソッと、小さく弱音を吐いた。
「………」
その声が聞こえているのかいないのか、部屋の窓から市内の様子を眺めている南沢は微動だにしない。
「……あの、南沢さんは、緊張しないんですか?」
「……何?」
「あ、いや、今回みたいにステージ3のギタイを相手にすれば、少なからず怪我したり……ましてや、死んでしまうかもしれないのに……。そんな中で緊張したり……怖くなったりしないのかと思って……。」
「………成る程、そんな事を思っていたから、あんなことを言ったのか」
南沢は市内を見ていた顔を室内に戻し、長い髪に埋もれた目を口田に向ける。
「まぁ……もちろん俺も怖いさ。俺は前衛でギタイの近くで戦わねぇといけないからな。1番死ぬ危険性もある。」
「………」
口田は少し驚いていた。堂島という歴然の猛者と共に戦ってきた一流の「掃除人」。そのレベルになるとギタイと戦うのなんて怖く無くなってるのかと思っていた。
「………だが、まぁ、俺個人としては、俺がギタイの猛攻を最後まで止めて死ぬより、俺の中途半端な防御で俺の後ろにいる仲間が死んだほうが………まぁ、俺としては怖いな。」
「そう……ですか」
「………ま、自分が死ぬって言う「恐怖」より、何らかの強い気持ちで、その「恐怖」を抑えこんじまえば、耐えれるんじゃねーの?今回の戦いもよ」
南沢はそう言うと、話はおしまいと言うかのように、再び窓から外の市街に目を戻してしまった。
(………死の恐怖より強い気持ちか……。僕にはそんな大層なものあるだろうか………?)
ギタイから家族や町の人を守りたい。その一心で掃除人になった口田は、最近、それが並大抵の事ではないと実感し始めていた。
今の自分の力では他の人を守ることなんて出来ない……。
そんな事をまた考え、暗い気持ちに口田がなっていると、
コンコン、と入り口のドアを叩く、軽い音がした。
口田がその音に気付き、ドアを開けると、そこには月島が立っていた。
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