↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/108

第4章 孤高の女豹③

「もう少し、楽しめそうね」

 暫く退屈そうに車を走らせていたターニャが、バックミラーを見て微笑んだ。

 バックミラーには、猛スピードで追いかけてくる、連なった三台のジープが映っていた。

 多分、アッサムが応援を呼んでいたのだろう。

 全滅したジバルたちを見て、激怒して追いかけてきたに違いない。

 三十人の兵士を皆殺しにしたとはいえ、ターニャは物足りない気持ちでいっぱいだった。

 ターニャからしてみれば、どれも小物過ぎて歯ごたえがなく、ただただつまらない戦いだった。

 追っ手のジープを認めても、ターニャはスピードを上げることもせず、悠然と車を走らせている。

 バックミラーに映る車体が大きくなったとき、先頭の車の助手席から、男が身を乗り出した。

 RPG7を、両手で構えている。

 道幅は狭く、両端は砂漠になっている。

 踏み入れば、砂にタイヤだ取られるだろう。

 至近距離から放たれるRPG7の榴弾は避けようがないというのに、ターニャはうすら笑いを浮かべていた。

 男の手から、榴弾が放たれた。

 弧を描く間もなく、真っ直ぐに飛んでくる。

 ターニャは、急ブレーキを掛けると同時に再度ブレーキを引き、絶妙なハンドル捌きで車をターンさせながら、車体が倒れるぎりぎりまで片倫を浮かした。

 ほとんど真横になった車の腹部を掠めるように、榴弾が通過していった。

 直後に、車体を元に戻し、四輪を地面に着ける。

 先頭のジープとの距離は、二十メートルとない。

 ターニャは、一度アクセルを思い切り踏み込むと、素早くドアを開けて飛び降りた。

 砂漠の上を、背を丸めて猫のようにしなやかに回転し、落下の衝撃を吸収する。

 ターニャが立ち上がったとき、先頭のジープが、無人のランドクルーザーと衝突した。

 ランドクルーザーより小型のジープは、宙を舞うように後方に跳ね飛ばされ、二台目を走るジープに激突する。

 そのときには、ターニャは豹のような速さで、砂漠を走っていた。

 右手には、腰のホルスターから抜いたハンドガンを握っている。

 最後尾のジープがブレーキを踏んで、かろうじて衝突の難を免れたときには、ターニャは宙を飛んで、そのジープの屋根に乗っていた。

 屋根越しに、車内に向けて引鉄を引く。

 全弾を撃ちつくしたターニャは、ジープから飛び降りた。

 そのときには、もう弾倉は交換されていた。

 ターニャが、油断なくジープの中を確かめる。

 前部座席に二人、後部座席に三人乗っていたが、五人とも頭頂部の真ん中を撃たれて絶命していた。

 瞬時でそれを見てとると、炎上している二台のジープに目を向けた。

 生きている者はいないと思われたが、それでもターニャは、銃を構えながら、油断なく近寄っていった。

 一人だけ、炎上する車から這い出してきた。

 それを認めるなり、ターニャが男の眉間を撃ち飛ばした。

 暫くそのまま銃を構えていたが、もう、誰も出てくる者はいなかった。

 ターニャは、ポケットに残っていた最後の手榴弾を、ひとつの塊となって炎上する二台のジープに向けて放った。

 それから、無傷のジープのところに行き、無表情に五人の死体を引き摺り出した。

 フロントガラスに飛び散った血を、死体から剥がした服で拭い、奪った武器を助手席に置いた。

 運転席のシートにもべっとりと血が付いていたが、ターニャは気にも留めずに座る。

「あんた達が、何人掛かってきたって、わたしは倒せない」

 ぞっとする笑みを浮かべ、血まみれで転がっている男たちへ、冷ややかな視線を投げた。

「やっぱり、もの足りない」

 仏頂面に戻ったターニャは、新たな敵が現れてくれることを願いつつ、延々と続く砂漠の道を走り続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。