9『私物……ほとんど無し』
すっと立ち上がって………ドンドン叩かれている扉を少しだけ開く。
「あの…どなたですか?」
外にいたのは少なくとも『砂漠のオアシス』の幹部でもライト村で見たことある人でもなかった。
装備から見るに…タンク、ヒーラー、魔法使いかな。ちなみに魔法使いが気に障る声を出していた女性のようだ。後のふたりは、男性。
「えっ……と、ここ、シャードさんの家…だよね…」
男性は慌てて扉を見て、そこに書かれた家の持ち主を見てから…目を丸くして私を見下ろしてくる。そして女性は敵意を隠しもしないで私を睨みつける。
「……貴女、シャードのなんなの?」
「教える理由、ありますか?シャードさんは今、朝食を買いに行ってくれてます。もう少し待てば帰ってくるのであまり扉を叩かないで貰えますか、ちょっとうるさいので」
そう言えって扉を閉めようとすると、ヒーラーの男性が慌てて扉を止めてくる。
振り切って閉めるのは簡単だけど
シャードさんと彼らの関係性が分からないので躊躇われる。多分、仲良さそうには見えないけども。
「あ!あの、中で待たせてくれないかな!?」
「嫌ですよ、私まだ着替えとかもしてないですし…」
目も腫れてて、まだちょっとぼんやりしているのだ。
失礼だと思ったけれど眠過ぎてふわ、と欠伸をすると涙が滲んだ。
言われて私がパジャマということに気づいたのか…す、すまないと言ってヒーラーの男性は扉から手を離してくれた。
ーーーーー瞬間、横で見ていたタンクの男性が吹っ飛んだ。
「……何、僕の番を泣かせてるの」
激おこ状態の修羅様のおかえりである。シャードさんはタンクの人を後ろから引っ張って投げ飛ばすとするりと扉を開けて中に入り私を守るように立ち塞がった。
「ち、違う!泣かせてない、その、番出来たんだな…お、おめでとう。お前の家を見かけたから良ければパーティ組まないかなって…」
「絶対組まない」
ヒーラーの男性はちらっと魔法使いの女性を見てからシャードさんを見た。パーティはきっと彼女の希望だったのだろう。とうの彼女はめっちゃ私を睨んでいるけれども。
シャードさんの服を引っ張って一瞬意識をこちらに向けると「あくびしただけ」と泣かされた冤罪は一応晴らしておく。どうでもいい相手だけど、泣かされたとかちょっと不名誉だ。
「目も腫れてるし声も掠れてるから中で冷やしてきな……こいつらの相手は僕がするから」
「はーい」
当たり前のように髪を撫でられ、頬を撫でられ…熱の篭った目で唇を撫でると、修羅様に戻って外を向いたので大人しく寝室に戻って着替える。
なんか今日は行動や仕草がいちいち甘いんだよなあ。
そういえば、今日のシャードさんはローブ姿じゃなかった。あれは…アバター衣装(見た目装備)かな?
アバター衣装って種類無限にあるから荷物がかさばってたなあ、私もおしゃれした方がいいのかなあと思って気づく。
………今の私はアバター衣装(見た目装備)を1枚も持っていなかった。
ゲーム廃人な自覚はある。
課金のために色々と節約した記憶もある。
朝から夜まで、なんなら24時間やりこんだ日もある。
……だが、さすがにこれは酷いのではないだろうか。
私服無し
アクセサリー無し
化粧なし
私物……ほとんど無し。
なんなら……鏡もないので自分を客観視したことも無い。
こんな私をなぜ選んだのシャードさんって聴きたくなるくらい…女子力が無い。
この世界での生活が楽しすぎて、色々なものを忘れ去っていた。
こ、これも神の仕業かもと思いたかったが
これはどうしようもなく好きな物以外興味無い私の生来の気質だった…。




