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王国を読む者たち 0 - 選ぶ先の道 -  作者: なみみか


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第6話 【世界メモ】エルヴァ王国の教育制度

(お読み頂かなくても、ストーリーには影響ありません。)



1 教育制度の基本構造


エルヴァ王国には、基礎教育修了後の選抜教育として、主に二段階の教育機関が存在する。


第一段階が地方国立学院(通称、地域学院)、第二段階が王立統合高等学院(通称、王立統学院)である。


両者は単なる中等教育と高等教育の関係ではなく、法的性格と設置目的が異なる別種の教育機関である。


地方国立学院は教育院所管の公教育機関であり、本人の将来選択を広げるための高度教育を行う。


王立統学院は、国家が将来の中央官僚、軍士官、専門行政官、外交官などを育成するための国家中枢人材養成機関であり、入学時点で学生と国家の間に将来の服務を前提とした関係が成立する。


⸻


2 教育対象人口と選抜規模


エルヴァ王国の総人口は約四千万人。


同一年齢人口は、おおむね八十万~九十万人である。


十二歳前後で基礎教育を修了した者のうち、学術、魔法、身体能力その他の適性を認められた約一万二千~一万六千人が、毎年、地方国立学院へ進学する。


したがって、地方国立学院への進学者は同一年齢人口の約一・四~二・〇%に相当する。


その後、地方国立学院生を中心とする候補者から、毎年約千百人が王立統学院へ入学する。


統学院の卒業者は年間約九百五十人、全学生数は約四千百人である。


項目規模

王国総人口約4,000万人

同一年齢人口約80~90万人

地方国立学院進学者約12,000~16,000人/年

王立統学院入学者約1,100人/年

王立統学院卒業者約950人/年

王立統学院全学生約4,100人


3 王立地方国立学院(地域学院)


地方国立学院は、十二歳前後から学ぶ教育院所管の選抜型公教育機関である。


目的は官吏や軍人の養成に限定されない。


高度な一般教育、魔法教育、行政基礎教育などを行い、将来、行政、軍務、商業、技術、教育、医療、魔法実務その他の分野で高度な職務を担いうる人材を地域社会から育成する。


したがって、地方国立学院を卒業しても国家への服務義務は発生しない。


卒業生は、王立統学院への進学、地方官吏への採用、軍・警察等の採用試験、民間企業・商家・工房等への就職、家業への復帰、その他の高等教育への進学などを自由に選択できる。


地方国立学院は、国家が才能ある子供に高度な教育機会を与える制度であって、国家への人材供給を義務づける制度ではない。


⸻


4 地方国立学院の評価制度


地方国立学院では、全国共通の評価制度が採用される。


評価対象には一般教科だけでなく、数量推論、交易構造分析、変則資料解析、魔法実務、身体教練、共同課題など複数の領域が存在する。


専門分野ごとの全国上位十名については、氏名と所属学院が全国に公示される。


一方、総合順位は公開されない。


総合成績を知ることができるのは、原則として本人、所属学院、および進学選抜など正当な権限を持つ機関に限られる。


したがって、専門分野の全国上位者であっても、総合成績まで優秀であるとは限らない。


⸻


5 王立統学院への選抜


王立統学院への進学候補者は、地方国立学院の最終学年を中心に選抜される。


地方学院での監査、行政、商業、軍務その他の実地研修も選抜資料となりうる。


選抜は単純な総合順位では決まらない。


主な審査対象は、総合成績、専門分野での能力、魔法適性と制御能力、実習成績、共同課題、協働能力、教員評価および推薦などである。


このため、総合成績が突出していなくても、特定分野で高い能力を示し、他の評価項目も一定水準を満たす学生には進学の可能性がある。


反対に、一科目だけが突出していることのみを理由として入学できる制度でもない。


最終的には、国家中枢人材として育成する価値があるかを総合的に判断する。


⸻


6 王立統合高等学院(統学院)


王立統合高等学院は、国費によって将来の国家中枢人材を育成する機関である。


標準的には十六歳前後で入学し、二十歳前後で卒業する四年制とする。


学生は行政、法、統計、経済、外交、軍務、魔法実務などの共通教育を受け、その後、適性と本人希望に応じて専門課程へ分かれる。


統学院は単なる名門高等教育機関ではない。


入学そのものが、将来国家へ服務する意思の表明を伴う。


⸻


7 服務誓約


統学院の合格者は、正式入学前に服務誓約書へ署名する。


未成年者については保護者も連署する。


ただし、保護者が子供を国家へ提供する契約ではなく、本人の服務意思と、服務義務を履行しなかった場合に発生しうる教育費債務について確認するための制度である。


学生は、


統学院卒業後、王国の指定する公的職務に就き、原則十年間服務する


ことを約束する。


⸻


8 国家服務義務


服務義務期間は、原則として卒業後十年間。


十六歳で入学し、二十歳で卒業した場合、おおむね三十歳までが義務服務期間となる。


ただし、特定官庁への十年間の所属を義務づけるものではない。


服務義務は特定組織ではなくエルヴァ王国に対して負う。


したがって、中央官庁から地方行政機関への転任、複数省庁間の異動、軍務機関から関連行政機関への配置転換なども、制度上認められた公的職務であれば服務期間に算入される。


⸻


9 国家側の義務


服務誓約は、学生だけに義務を課す契約ではない。


統学院を正式に卒業した者に対して、国家も正規公職を提供する義務を負う。


卒業生には、正規官吏、士官その他の公的身分と、それに伴う給与、宿舎または住宅手当、転任費用、公務上の傷病保障、遺族保障などが与えられる。


したがって国家は、国費で四年間教育した学生に対して、


「人員が余ったので任官先がない」


という扱いを原則として行えない。


学生が国家へ十年間を約束する代わりに、国家も卒業後の職業上の身分と生活基盤を保証する。


これが統学院制度の重要な原則である。


⸻


10 卒業後の初任配置


最終学年後半に、卒業後の配置調整が行われる。


判断材料となるのは、主として以下の四点である。


1. 本人の希望

2. 統学院における評価と専門適性

3. 各官庁・機関の採用希望

4. 国家全体の人員需要


学生は希望官庁、職種、勤務地などを提出できる。


ただし、これは希望を表明する権利であって、希望先への配属を要求できる権利ではない。


最終的な任官権は国家にある。


一方で、国家側も学生の専門教育や適性を恣意的に無視することはできず、著しく不自然な配置については学院側の人事委員会等に合理的な理由を示す必要がある。


⸻


11 軍務課程


軍務は専門資格との関係が強いため、一般文官とは一部異なる。


軍務志望者は在学中に軍務専門課程へ進み、卒業後は原則として、卒業後に士官学校の3年次に入学し、2年の教程後に士官として任官する。


文官課程の学生を、本人の意思と専門教育を無視して戦闘士官へ任官することはできない。


同様に、士官学校に進学し軍務専門課程を修了した学生が卒業直前に自由に一般文官へ転向することも原則として認められない。


ただし、兵站、調達、軍事情報、軍務行政など、軍務教育を活用できる関連分野への配置転換は可能である。


⸻


12 任官拒否と途中退職


卒業時に任官を拒否すること自体は法律上可能である。


統学院制度は強制労働制度ではないため、国家が本人を物理的に拘束して服務させることはない。


ただし、正当な免責事由なく任官を拒否した場合は服務誓約違反となる。


原則として、在学中に国家が負担した教育費等の償還義務が発生し、同時に正規公職への任官資格を永久に失う。


義務服務期間中の自己都合退職も可能だが、残存服務期間、勤務成績、特殊勤務実績などに応じた教育費償還が発生する。


なお、正規公職資格を失った後でも、民間人として非常勤委員、外部専門家、期間限定顧問、請負技術者などの立場から国家に協力することまでは禁止されない。


⸻


13 教育費償還


償還対象には、授業費、教材費、寄宿費、食費、魔法教育費、演習費、実地研修費など、統学院教育のため国家が負担した費用が含まれる。


金額は一般家庭が容易に支払える水準ではない。


途中退職の場合には単純な残存年数比例ではなく、服務実績、勤務成績、危険・特殊勤務などを考慮して減免される。


したがって、国家に十分な貢献をした者と、卒業直後に服務を拒否した者が同じ負担を負う制度ではない。


⸻


14 懲戒免官と免責


重大な犯罪、不正、職務上の背信その他の故意または重大な非違行為によって懲戒免官となった場合は、残存教育費の償還と正規公職資格喪失の対象となる。


一方、通常の能力不足、善意の判断ミス、政策上の失敗、戦闘指揮上の結果的失敗などは、それだけでは服務誓約違反として扱わない。


また、疾病、負傷その他の理由により公的医務審査で継続服務が困難と認定された場合には、服務義務を終了し、教育費償還も免除される。


戦傷、公務上の障害についても同様である。


死亡または公務中の行方不明等の場合、教育費債務を遺族へ承継させない。


⸻


15 貴族・王族・家業継承


貴族子弟も、統学院へ通常の学生として入学した以上、原則として十年間の服務義務を負う。


貴族であること自体は免除理由にならない。


むしろ官僚貴族層では、統学院を卒業して国家へ服務することは家格を支える名誉の一つと考えられている。


ただし、予期しない事情によって本人が爵位や家督を継承しなければならなくなった場合には、服務義務の免除または猶予を申請できる。


これは自動的な免除ではなく、個別審査となる。


王族については、王族として別個の国家的職責を負っているため、一般学生の服務誓約制度の対象外とする。ただし、統学院に在籍する場合の教育・成績評価まで免除されるわけではない。


一方、民間の家業を継承することは服務義務の免除理由にならない。


統学院入学時から近い将来の家業継承を予定している者は、そもそも統学院へ進学すべきではない、という制度文化が存在する。


⸻


16 服務拒否に対する社会的評価


裕福な家庭であれば、法律上は教育費を償還して国家服務から離脱することも可能である。


しかし、それによって社会的責任まで消えるわけではない。


統学院は国家中枢層の人的共同体でもあり、卒業生の任官先や服務状況は記録される。


国費による高度な教育を受けた後、金銭によって服務義務を解消した者は、


「王国との約束を金で解決した者」


と見られやすい。


特に高位貴族や有力商家では、本人だけでなく家の信用にも影響する。


ただし、政府調達からの自動排除など、法律上の追加制裁を課すものではない。


これは法的制裁ではなく、国家エリート社会における信用と名誉の問題である。


17 制度の基本理念


地方国立学院は、地域から才能ある子供を選抜し、高度な教育を与える公教育機関である。卒業後の進路は本人の自由であり、国家への服務義務はない。


これに対して王立統学院は、将来の中央官僚、軍士官、専門行政官、外交官などを育成する、国費による国家中枢人材養成機関である。


統学院への入学に際して、学生は卒業後十年間の国家服務を誓約する。一方、国家も卒業生を正規公職へ任用し、身分、給与、生活および公務上の保障を与える義務を負う。


したがって、両者の本質的な違いは教育水準の上下ではない。


地方国立学院が本人の将来選択を広げる教育機関であるのに対し、王立統学院は本人と国家が相互に将来を約束する国家中枢人材養成機関である。

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