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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第三回・レアー様の信仰心を回復させ隊!

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79/138

『大根ラン、ダーイコンラン!』

 ◁

 爆発魔法エクスプの雨が降ったという事は、救世主は一人ではない事が確定している。

 

「やっほー少年。 やばそうだから助けにきてあげたよ?」

 

「ハートちゃん! 来てくれたんですか!」

 

「む、貴方のその声、昨日話した同志ですか?」

 

「こんにちはルゥーファちゃん。 推しを助けるために颯爽と登場しました。 アサシンのトト・ハートです、よろしくねー」

 

 滑空するペガサスに向け、建物の隙間に隠れていたハートちゃんから声がかけられる。

 

 軽いトーンで挨拶を交わすルゥーファちゃんとハートちゃん。 珍しく喧嘩腰になっていないルゥーファちゃんに驚いている間に、爆発魔法の影響で巻き起こった砂煙が徐々に晴れていく。

 

 『心強い援軍登場w』

 『大丈夫なの? トト兄妹もこれで指名手配確実だけど』

 『ナイル海賊団結成の瞬間』

 

「おいおい、被害が少なすぎないかな?」

 

 屋根の上でカッコつけていたホープさんは思わず苦笑い。

 

「爆発魔法の連続発動、おそらく貴様らの固有スキルであろうな?」

 

 兵士たちに盾で守られていたハレンドスさんがケロリとした表情で、屋根上で杖を構えていたホープさんを睨む。

 

 爆発魔法の被害はほとんど見られなく、負傷した兵士が少々、意識を失ってそうな兵士は少ししか見られない。

 

「殺してしまわないよう手加減したとは言え、ここまで被害を抑えられると自信をなくすな」

 

「誇るがいい、この私にダメージは与えたのだ。 中々の魔法であったぞ?」

 

 余裕綽々とした表情でそんなことを言い出すハレンドスさん。

 

「まさか、セフメト以外にもとんでもない猛者がいたか。 これは盲点だったよ」

 

 肩をすくめながらそう吐き捨てるホープさん。 しかし皮肉めいた笑みを浮かべながらも、ペガサスに跨って空中待機していた俺たちへ視線を送ってくる。

 

「そういうわけだ坊や。 こいつはマジでヤバイだろうから全戦力を投じて全力逃避。 合流場所は後で連絡するよ」

 

 それだけ告げて詠唱を始める。 するとすぐさまハレンドスさんは指示を送り始める。

 

「屋根上のウィザードに三千、建物の影に潜んだアサシンに二千。 他は全て黒湖ナイルに当たれ!」

 

「つまり俺達は五千も相手しないといけないわけね、俺達はどんだけ危険視されてるのさ?」

 

「そりゃあてめぇは、偽物とは言えあのセフメト様を退治したほどのバケモンだからな!」

 

 そんな物騒なセリフを聞き慌てて振り返ってみれば、上空八メーターほどの高さを浮遊していた俺たちの背後に突然現れる団長が視界に映る。 八メーターといえば建物でいえば三階位の高さだ。

 

「ちょっ! どんなジャンプ力してんだよ!」

 

「油断したなクソガキ!」

 

 咄嗟に鋼の戦棒で団長の拳をガード。 しかし威力が予想以上に高く、ネイちゃんごと吹き飛ばされてしまう。

 

 『地面にトランポリンでも仕組まれたか?』

 『団長ならあり得るだろ』

 『低空飛行しすぎてたなw』

 

「叩き落としたぞ! ハレンドスさん!」

 

「よくやったぞバースィラ団長、全軍突撃だ!」

 

 地面に叩きつけられると同時にハレンドスさん先頭に五千の兵士が徒党を組んで襲いかかってくる。 俺は慌てて武器を構えながらルゥーファちゃんを護るよう立ちふさがった。

 

「ルゥーファちゃんは上空から援護できますか?」

 

「伴侶様が、わたくしをヒロインのように守ってくださっただなんて! 血が滾る! たかが雑兵ごとき、わたくしが蹴散らしてご覧に入れましょう!」

 

 八メーターの高さから叩き落されたのだ、ペガサスはもちろんのことルゥーファちゃんにも相当なダメージが入っているだろう。 かなり元気みたいだけど。

 

 しかし元気良い返事をしてくれたとはいえ俺ですらHPの三割削られたのだ、いくらHPが高めに設定されているレンジャーだからといってもこの一撃は痛すぎる。

 

 襲いかかるのは五千の兵士、さらに一人ひとりがとんでもないステータスときた。 強がりを言ったとはいえこんな相手、俺一人でできることなど限られてしまう。

 

 まさに絶体絶命だ。

 

「やっちゃうんだわさバーサーカー!」

 

 『あれれ! ありたむ氏が戻ってきた!』

 『やっちゃえバーサーカー』

 『ありたむ氏は隠れて好機を伺っていたのだろう』

 

 尻込みしていたのだが、背後の建物の影からそんな叫び声が響く。 ほぼ同時に俺の前に真っ黒な巨体が落下してきた。

 

「何だこの生き物は!」

 

「ぐをぉぉぉぉぉ!」

 

 突然現れた真っ黒な筋肉ダルマを見て瞠目するハレンドスさん。 これはつい先日の戦いでママが召喚したガングロマッチョ君。

 

「ナイルきゅん! 混乱している内にネイちゃんに乗って脱出するんだわさ!」

 

 ママが叫びながら伝えてくる。 なぜあのペガサスの名前を知っているのかはさておき、ママの言葉を合図にしたようなタイミングで戦場のど真ん中から鼓膜を破るような爆発音が響き、視界が一気に真っ白な煙に覆われた。

 

 そして、待ってましたとばかりに心強い声が響く。

 

「【挑発】! さあ王国軍の精鋭たちよ! これより世界最強のタンクである私が相手をして差し上げよう!」

 

「よっ! さすがラーザ様! 今日もいつもより素敵です!」

 

「なに? ラーザだと? てめぇまでアタイを裏切る気か!」

 

 『ナイル氏、煙のせいでまったく見えません』

 『ホープさんが詠唱してたってことは上級魔法の組み合わせかな?』

 『状況が見えないので解説求む』

 

 視界が煙に覆われているためよく見えない。 そのため心眼スキルを発動させてすぐさま状況確認。

 

 一万の兵士たちの大半は俺に背を向ける形で構えていた。 声に反応したのが半数、残りの半数は挑発の効果範囲に入っていた王国兵。 

 

 つまり挑発スキルを使った味方は俺の対角線上にいる。

 

 さらには視界が煙で覆われている戦場で、上空を跳び回る影も発見した。

 

「あれはまさか!」

 

「ナイル君、助けに来たにゃ!」

 

 ヒッポグリフに騎乗したサナさんが、戦場で孤立しかけていたハートちゃんを乗せて空を駆けている。

 

「出たなブス! 貴様性懲りもなく伴侶様の前に現れおったか!」

 

 『またしても修羅場』

 『ナイル氏は心眼スキル使えるから色々見えてんだろうな』

 『ずるいよナイル氏、元実況者なら俺達にも分かるように解説してくれw』

 

 憤るルゥーファちゃんをどーどーとなだめていると、一万の兵士たちの横で再度巨大な衝撃波が発生。 状況が急変し続けていて解説している余裕なんて無い、すまない視聴者たちよ。

 

 けれどこの一撃には見覚えがある、異常なまでの攻撃範囲とこの威力。 間違いない。

 

「あれは、亜空間薙ぎ払い!」

 

「おいこらナイル、俺の技に変な名前つけるんじゃねえ!」

 

 『サラマトスさんの亜空間薙ぎ払いか!』

 『皆様、ナイル君は混乱しています。 暫くの間音声だけでお楽しみください』

 『久々にラーザ様との喧嘩が聞きたかったな』

 

 ラーザさんの挑発によって視線を奪われた兵士たちの横っ腹に、サラーマさんが【間合い延長】【剛腕】などのスキルを重ねて超広範囲攻撃と化した【薙ぎ払い】を発動。

 

 斧の間合いから予想できる物理法則を無視した広範囲攻撃が、数百の兵士を宙に舞わせていた。

 

「てめぇサラーマ! ったく、次から次へとアタイを裏切りやがって! そんなにも舎弟が恋しいかよ!」

 

 同じモンクであるバースィラ団長も心眼スキルが使えるのは自明の理。 よってこの煙の中でも俺達に向けて【飛燕衝波】を放ってくる。

 

 ラーザさんの挑発が発動しているとはいえ、団長の固有スキル【墓守の加護】のせいで視線の操作はできない。 よってこの状況でも一人だけ自由に行動できてしまう。

 

 けれど、飛燕衝波は直線上に飛んでくる単純な軌道。 来るとわかっていれば反応するのは難しくない。

 

「俺だってモンクの端くれだ! 立ち回りではあんたには勝てないが、この程度の単純な攻撃なら簡単に避けられるぜ!」

 

「くそっ! 舎弟の分際でなまいきだぜ」

 

 飛燕衝波をひらりとかわした俺へ、苛立ちをあわらにする団長。

 

 『なるほどよく見えん』

 『あーさっぱりさっぱり!』

 『さっぱり妖精現るw』

 

「ナイルきゅん! ルゥーファちゃん! ホープちゃんが放った煙が晴れる前にここを脱出するんだわさ!」

 

「機動力じゃペガサスには勝てねえか! けどな、アタイの傭兵団からこんなにも裏切り者を出しちまったんだ! アタイ一人しか自由に動けなかったとしても、一矢報いるくらいはしねえとなんねえんだよ!」

 

 おそらくペガサスで跳び回るルゥーファちゃんや、ステータスが高い俺を相手にするのは分が悪いと判断したのだろう。 団長が突進したのは兵士たちを側面から襲ったサラーマさん。

 

 どうやらこの中で唯一、団長が簡単に倒せる相手と判断されたようだ。 ここに来てまさかの行動を取られた俺は呆気にとられてしまい、足が固まってしまう。

 

「ああ団長、ごめんよ? 貴方には闘技スキル意外通用しないけどさ、闘技スキルって使い方によって化けるんだよね」

 

 そんな状況下、何故か余裕な声音を送ってくるホープさん。 団長はそんな言葉には耳も貸さず、脇目も振らずサラーマさんに拳を突きつけようと踏み込んだ。

 

 瞬間、思い切り踏み込んだ地面が、ポッカリと抜け落ちる。 不意を突かれたのだろう、目を見開く団長。

 

土魔法サンドを応用したテクニックさ。 それは闘技スキルで作り出した、ただの落とし穴さ?」

 

「ラーザの挑発と目くらましは囮、この落とし穴の存在を勘ぐらせないための罠?」

 

 『ホープさんと団長がナイル氏よりもわかりやすい解説してくれてる件』

 『大根ラン、ダーイコンラン!』

 『ドサクサ妖精まで現れたw』

 

 視聴者たちからやじが飛んできているが、俺はとにかく心眼スキルで状況把握に専念する。

 

 ホープさんの意図を察した団長は、足場を失い体制を崩しながらも悔しげに歯を食いしばる。

 

「わりいな団長。 俺はナイルに就くって決めたんだ。 だからすまん。 あんたはここで、ぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

 無防備な団長へ遠慮なく斧を叩きつけるサラーマさん。 鈍い殴打音と共に、ポッカリと空いた大穴の底から衝突音が響き渡る。

 

「今だわさ! 存分に暴れるんだわさバーサーカー!」

 

「ぐをぉぉぉぉぉ!」

 

「落ち着くのだ! 一度陣形を立て直せ! モンクにジョブチェンジした経験のあるものは心眼スキルを使用しろ!」

 

 好機とばかりに暴れまわるガングロマッチョ君。 そして混乱する兵士たちを必死になだめようとするハレンドスさん。

 

 隙をついたルゥーファちゃんがペガサスに跨がったまま高速接近し、俺へ向けて手を伸ばしてくる。 迷うことなくその手を取った俺はルゥーファちゃんの後ろへ飛び乗り、ネイちゃんはそのまま上空へと羽ばたいた。

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