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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第三回・レアー様の信仰心を回復させ隊!

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『うまうまうまほーす』

 ◁

 ルゥーファちゃんが指示しているくまさん大事件ペアは、ゲームだった場合AIが動かすノンプレーヤーキャラ。

 

 とは言ってもこの世界ではおそらく野生の熊が闘っていると仮定していいだろう。 ではなぜ、団長ほどの実力者と拮抗した実力を発揮できているのか。

 

「わたくし、調教師でしたの」

 

「あ、はい。 でもルゥーファちゃん、あれは馬じゃなくて熊だよ?」

 

 『くまくまくまべあー』

 『うまうまうまほーす』

 『一文字しか合ってねぇw』

 

 競走馬を強い馬に育て上げるという調教師。 レースに向けた餌の調整からトレーニング方法の考案、他にも様々な仕事があるだろうが、実際にその仕事に就いた事がない俺には深く語ることはできないだろう。

 

 わかることと言えば、調教師は狭き門を潜る事ができたエリートしかならないと言う事のみ。

 

「この世界に来てからすぐにレンジャーの職を選んだのは、前世の知識を活かせると思ったからですわ。 そうして転移してから今日までの日々、レベルを上げながら試行錯誤を重ねてまいりました」

 

 今なお激しい攻防を繰り返す熊さんたちを眺めながら、首に回されていた腕に力が入る。

 

「ですが、貴方様が言う通り、専門分野はお馬さんですのよ?」

 

「熊とかを手なづけてるだけでも凄いっすけどね」

 

「うふふ、なんと嬉しい言葉でしょうか。 でしたらわたくし、あなた様のご期待に応えられるよう、これより本気を出させていただきます」

 

 背後から覆い被さるようにひっついていたルゥーファちゃんが、俺の真横をゆっくりと歩いていく。

 

「幻獣召喚・おいでなさい、ネイ!」

 

「ここに来て幻獣召喚? ルゥーファちゃんレベルマックスだったのかよ!」

 

 団長と戦闘中だっった熊さんたちや鷹が光の粒子になって姿を消し、代わりに俺達の眼の前に真っ白な魔法陣が出現する。

 

 真っ白な光が魔法陣の中からヌッと現れ、その姿を徐々にあきらかにしていくと、その姿を遠目から伺っていた団長は苦面を浮かべ始めた。

 

「ちっ、めんどくせー。 ペガサスなんて希少な魔獣を召喚しやがったか」

 

 ペガサス、風魔法を得意とする馬型の幻獣で、その背中からは立派な翼を生やしている。 日本では天馬などと呼称されることもあったはず。

 

「こちらがわたくしの切り札、ネイでございます。 伴侶様、ご気軽にネイちゃんとお呼び下さい」

 

「ほほう、ナイスなネーミングだ。 素晴らしき才能を感じる」

 

 『分かってんなルゥーファさん』

 『ナイル氏の推しを愛するというその姿勢には感服です』

 『奇遇かも知れないが、ペガサスはヘリポリの人気幻獣ランキングで第三位だぞ』

 

「人気ランキング三位か、素晴らしい」

 

 一人ぼやいた俺の言葉を聞き流し、ルゥーファちゃんは当然のように俺を抱き上げてペガサスの背に乗せる。 そしてそのまま俺の後ろにピッタリくっつくようにルゥーファちゃんがペガサスに乗馬した。

 

「モブ女、ここからは本気でお相手してあげましょう。 せいぜい死なないよう尽くしなさい」

 

「クソが、めんどくせースキルにめんどくせー幻獣。 おまえほどめんどくさくてアタイを舐め腐ってる部下は初めてだぜ」

 

 あの団長が尻込みしている。 さっきまでの熊さん達も相当強かった。

 

 そこから連想できる幻獣の強さは、おそらく想像を絶する。

 

 ルゥーファちゃんは早速とばかりにネイちゃんの腹を蹴ると、ペガサスはいななきながら翼を羽ばたかせる。

 

 それを見た団長は慌てて横っ飛び。 すると、大地に強大な裂け目が入った。

 

「とんでもねえ魔法の威力だな、おい」

 

 『これが本物の月牙◯衝!』

 『退けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ!』

 『叫べ、我が名は』

 

「やかましいわコメント欄!」

 

 ペガサスが操る風魔法は高威力かつ不可視。 一撃でアイアンゴーレムすら切り裂くほどの切れ味を誇る。

 

 その上風魔法のクールタイムは十四秒と短めで、詠唱すら必要としない。 ペガサスが強いのはそれだけでも納得なのだが、本領を発揮するのはここからだ。

 

「伴侶様、先程からひとりで誰と話しているのかは存じ上げませんが、振り落とされないようしっかりとおつかまりくださいね?」

 

「うん、もうすでにルゥーファちゃんにガッチリホールドされてるからね」

 

 後ろからガッチリとホールドしてくるルゥーファちゃんに細目を送るが、突進してきた団長を見てすぐさま行動を起こす。

 

 たった一度翼をはためかせただけで上空数メーターまで上昇し、地上から攻め立てる団長をあざ笑うように距離を取るペガサス。

 

 団長もすかさず【飛燕衝波】という遠距離攻撃スキルを放つが、直線上に飛んでくるこのスキルはペガサスならひらりとかわせる。

 

「ヒッポグリフもそうだが、空に逃げられるのはかなり面倒だ。 それに、ペガサスの固有能力もまた面倒すぎるぜ」

 

 団長が心底嫌そうにつぶやいた途端、上空に逃れた俺達の周辺に黒雲が生まれ、昼過ぎの町並みを薄闇に変えてしまう。

 

 ペガサスは空を飛び回っている間、召喚者の任意でその周囲に雷撃を呼び寄せる。 これはクールタイム関係なしに常時発動する攻撃で、その威力はウィザードの中級魔法に及ぶ。

 

 さらにこの雷撃の威力は召喚者の魔力参照で上昇するため、俺とくっつくことで最大強化されているルゥーファちゃんの魔力なら、一撃でも喰らえば致命傷だろう。

 

 『この雷撃は三秒感覚で落ちる』

 『それに空に逃げられると攻撃が当てづらい』

 『しかも十四秒ごとに一撃必殺級の月◯天衝が飛んでくるからね』

 

 率直に言ってしまえば無敵。 ペガサスはそれほどの幻獣なのだ。

 

 さらに追撃とばかりに、ルゥーファちゃんには調教師として強い競走馬を育てていたという実績まで存在する。

 

 ネイちゃんの腹を数回蹴ると、ペガサスは目にも止まらぬ速度で団長に突進。 対応しようと身構える団長だったが、タイミング悪く雷撃が落下してきたためどっしりと構えることはできない。

 

 雷撃から逃げ回る団長をあざ笑うように、一気に肉薄したルゥーファちゃんはボウガンを引いた。

 

「ニードルショット!」

 

 貫通力のある闘技スキル。 流石の団長も雷撃を避けて体勢を崩した所に狙撃されては回避は不可能。 かと思われたが。

 

「舐めんなよストーカー女!」

 

 恐るべき事に、団長はバランスを崩しながらも飛んできた矢を素手でキャッチ。

 

「それあり?」

 

「ほほう、なかなかやりますねモブ女。 けれど」

 

 矢を掴んで窮地を逃れた団長の腹に、ネイちゃんの前蹴りが炸裂。 苦悶の表情を浮かべながらぶっ飛んでいく団長だったが、ルゥーファちゃんは血も涙もないようで、飛んでいった団長をさらに追尾。

 

 空を飛ぶという機動力に加え、元調教師というルゥーファちゃんの乗馬テクニック。 ペガサス自体がかなりのハイスペックにも関わらず、固有スキルによるステータス上昇に加えて先程の要素が混じってしまえば……

 

「バケモンかよこの女!」

 

「あらあら、か弱いわたくしをバケモノ呼ばわりだなんて、失礼ですわよ?」

 

 クスクスと笑いながらも地面を転がっていた団長を容赦なく狙撃。 並外れた身体能力でその狙撃を避けることは可能だが、この攻撃はペガサスの蹴りと合わせた二段攻撃。

 

 さらにはこの攻防が続く中でも雷撃は降り続けている。

 

「クソが! アタイ一人じゃ手に負えねえ!」

 

「死にたくなければお逃げになってくれて構いませんわよ?」

 

「そういうわけにもいかねえんだよ。 こっちにだって事情があんだ」

 

 コロコロと地面を転がっていた団長がすぐさま立ち上がり、ルゥーファちゃんの追撃に備えながらそう答える。

 

 すでに大ダメージを受けたであろう団長の体はボロボロだった。 それにもかかわらず今なお俺達を力強い眼差しで睨んでいる。

 

 捕まるのはまっぴらごめんだが、このままだと団長はルゥーファちゃんに負けるのは目に見える。 けれど俺は団長を倒したいわけではない。

 

 可能ならば事情を説明して協力してもらいたいのだ。 現地人であるサラーマさんやラーザさんも理解してくれたのだ、きっと彼女も理解してくれるはず。

 

 間髪入れずに追撃しようとしていたルゥーファちゃんを慌てて止めて、一縷の望みを込めて説得を試みることにした。

 

「団長、これ以上戦うのはやめましょう! 俺の話を聞いてくれないですか?」

 

 優位に立っているのなら交渉も可能だろう。

 

 このまま戦えば団長を倒すことはたしかに可能だが、団長はルタカとの戦いを共に乗り切った大切な仲間だ。 これ以上痛めつけたくはない。

 

「ばぁろう、話しする時間がねえから焦ってたんじゃねえかよ。 アタイがお前をとっ捕まえてこっそり話しする機会作ろうとしたってのに、てめぇが邪魔しやがるからよ」

 

「貴様が伴侶様に怪我を与えたのがすべての元凶だ。 死んで詫びなさい」

 

「ルゥーファちゃん頼むからいったんストップ。 団長は悪い人じゃないんだよ!」

 

「伴侶様がそういうのでしたら、少しだけ待ってあげますわ!」

 

 団長と話す時は殺し屋のような目つきなのだが、俺が話しかけると突然花が咲いたような笑みに変わる。 この表情の高低差は一体どうやっているのだろうか?

 

 なんてこと思っていると、団長が何気なく俺達の背後に視線を送り、驚いたように目を丸くする。

 

 そしてその直後、悔しそうに下唇を噛みしめた。

 

「わりぃなクソガキ。 アタイの力不足のせいで、余計面倒なことになっちまったみたいだぜ?」

 

 諦めたようにそう吐き捨てた。 その言葉からは絶望の色がうかがえる。

 

 もしかしてルゥーファちゃんに勝てないからと諦めたのだろうか? 話の流れからはそんなふうに思えなかったが……

 

「大悪党、黒湖ナイル! 貴様がシリス様の体を盗み出したことはすでに明白。 よってこれより、貴様を粛清する!」

 

 聞いたことがあるような野太い声に、俺は首を傾げながら振り返るが、

 

「ちょっ、え? ナンダコレハ」

 

「あらあら、伴侶様、この方々はもしかしなくても王国軍ですわ」

 

「王国軍、だと?」

 

 『……何……だと……?』

 『……何だと……?』

 『……なんだと?』

 

「うるさいよ何だとまとめ」

 

 街を埋め尽くすほどの兵士を総覧しながら冷や汗をこぼそうとしたが、コメント欄がうるさかったから台無しだ。 ちなみに、王国軍は目算だとおよそ一万近い兵力。

 

 そしてその先頭に立つのは、この世界に来たばかりの時ちらりと見たことがある大男。

 

「我が名はハレンドス。 偉大なる父の名のもとに、貴様をこの場で処刑してくれる!」

 

 この国の現ファラオであり、シリスの息子とされているハレンドスさん。 つまり彼は、この国の最高位に値する人物だった。

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