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俺だけ生配信中なんだが? 〜生配信中に異世界転移してしまった結果、配信切れなくなった件〜  作者: 【星願大聖】永福
第三回・レアー様の信仰心を回復させ隊!

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72/89

『この配信において、ルゥーファは地雷扱いです』

 ◁

 俺がVtuberとして活動したのは二年ちょっとで、チャンネル登録数もちまちま。 転移前の平均同接数はギリギリ三桁程度の個人Vtuberだった。

 

 活動中は特に問題も起こさず炎上騒ぎもなかった……というより炎上騒ぎが起きるほど有名ではなかったと言ったほうが正しい。

 

 そんな俺でも、熱狂的に声援を送ってくれていたファンはいた。

 

 当時からのファンは今でもちょくちょくコメントをくれているし、俺の転移生活を暖かく見守ってくれてもいる。

 

 が、見守ろうとする気持ちが強すぎて物理的に見守ってくれたファンも一人だけいたわけで。

 

「眷属召喚、おいでなさい! らららちゃん」

 

「えーっと、ネーミングは意味不明だけどあれはエンペラーホーク? はい、職業はレンジャー、かつレベル七十以上確定」

 

 レンジャーの戦闘スタイルは大まかに数種類ある。 ひとつは今ルゥーファちゃんがやっている眷属召喚を軸に戦う戦法。 この場合武器は弓ではなく弩になる。

 

 弩の場合の射程は弓の半分以下、そのかわり接近戦でもそれなりに立ち回ることが可能になるという利点がある。

 

 しかし武器での戦闘はおまけ程度にしか使わないのがこのタイプ。 本命は召喚した眷属の方だ。

 

 眷属召喚はレベルアップで召喚できる魔獣が強くなり、召喚した魔獣は召喚主のステータスを参照にする。 つまり、

 

「ナイル! 迂闊に突っ込むんじゃねえぞ!」

 

 この巨大な鷹のような魔獣も、ステータスが化け物級になっている恐れがある。

 

「【ポイズンピアス】! 援護するから距離を取るにゃ!」

 

「らららちゃん、あの羽虫を喰っていいですよ?」

 

 エンペラーホークに微笑みかけるルゥーファちゃん。 その姿には冷酷さが滲み出ており、雪女に背中を撫でられたような悪寒が走るが、それはさておき……

 

「それにしても、鷹の魔獣にらららってネーミングはマジで意味不明」

 

 『レンジャーはウィザードの次に優遇されている職業』

 『変なネーミングだからといって油断するでないぞ』

 『召喚した魔獣に好きな名前をつけられるのはご褒美だよなw』

 

 魔獣にネーミングか、なにそれ楽しそう。

 

「ちっくしょう! 俺も専門職レンジャーにすればよかった!」

 

「そんな事したらあたしとかぶっちゃうにゃ!」

 

「わたくしの伴侶様に気安く喋りかけるなブス!」

 

 エンペラーホークの強靭な鉤爪がサナさんを襲うが、バク宙しながら華麗にかわす。 ものすごい身体能力だ。

 

「ったくもう! よりにもよってあたしと職業かぶってるのが面倒だにゃ!」

 

「サナ! 狙われてるのはお前だ! あれを使え!」

 

 サラーマさんがすかさずエンペラーホークに斧を振り下ろす。 この攻撃はひらりとかわされはしたが、かわされた斧は大地を砕き、砂煙を巻き上げた。

 

 この一手が牽制と同時に目くらましとなり、サナさんが体制を整えるための時間稼ぎはできた。

 

「幻獣召喚・ヒッポグリフ!」

 

「サナたん掛け声が違うんだわさ! この前教えたでしょ!」

 

「ありたむやかましい! いいからお前も足止めを手伝え!」

 

 ネタに走ろうとするママはすかさずサラーマさんに叱られた。 が、俺が変わりにそのネタを引き継ぐ。

 

「君の真の力を見せてみろ! ヒッポグリフ!」

 

「こらナイル! お前まで悪ノリするな!」

 

 レンジャーがレベルマックスで覚える闘技スキル、幻獣召喚。 使用者事にランダムで選出された幻獣が召喚できるため、当たり外れは多少あるがヒッポグリフはかなり当たりの部類である。

 

 攻撃力もそれなりに高い上に素早さが非常に高いため、敵の攻撃を回避することに優れている。 問題点としては甲高い鳴き声を轟かせてしまうため潜伏しづらい、防御力が低いなどが上げられるが、それを加味した上でも弓を装備して戦うレンジャーにとって、ヒッポグリフは非常に相性がいい。

 

 早速とばかりに背中に飛び乗ったサナさんはヒッポグリフとともに大空へ羽ばたく。

 

「なんであたしをそんなに目の敵にしてるかはしらないけどにゃ、そっちがその気ならこっちも本気出すにゃ! 【パライズレイン】」

 

 パライズレイン、簡単に説明すると麻痺矢を敵の頭上に大量に降らせるという嫌がらせに等しい技。

 

 ヒッポグリフに乗って空を飛んでいる以上、弓を持っているサナさんはほとんど無敵に近い。 故にヒッポグリフは大変使い勝手がいい幻獣とされているのだ。

 

「ちっ! 伴侶様との愛の再開を邪魔してくれるとは! こんのクソブスがぁぁぁ!」

 

 レンジャーの戦闘スタイル的に眷属召喚を軸にする場合、手数で圧倒するタイプが想像できる。 このタイプはソロのレンジャーによくみられる戦法で、次に取る行動は容易に予測可能。

 

「【トラバサミ】! 【ワイヤートラップ】! 【マキビシ】!」

 

「やっぱりそうくるよな! 大地割砕斬!」

 

 サラーマさんがすかさず闘技スキルでここいら一帯の大地をガラスのように砕き、ルゥーファさんが作った罠を即座に破壊する。

 

 レンジャーは眷属召喚等を使わずとも、罠や狙撃で味方を補助するサポート特化の戦闘スタイルも可能。

 

 ソロの場合は眷属召喚型とサポート特化型のハイブリットがおすすめされており、召喚した眷属を罠や闘技スキルで援護するのが一般的。

 

 相手次第ではかなり有効的なのだが、わかりやすすぎる上にこちらにはウォーリアーがいるためその手は通じない。

 

 『レベルが高い攻防が繰り広げられている』

 『いやいや、四対一で戦えてるルゥーファを誰か褒めてやれよw』

 『この配信において、ルゥーファは地雷扱いです』

 

「ちょこざいな! もうこうなっては力でゴリ押す他ありませんね! おいでなさいくまゆり、くまゆらちゃん!」

 

「カイザーグリズリーを二体?」

 

「白と黒の大熊……それに最初に召喚した鷹とのネーミング関係! あの娘、ナイルきゅんの好みを熟知してるんだわさ!」

 

 ルゥーファさんは二体のカイザーグリズリーを召喚した。 片方は真っ白な毛皮で、もう一体は真っ黒な毛皮。

 

 俺は気づいてしまった、ほぼ同時に目をかっぴろげたママも勘づいてる。 この熊二体と、最初に召喚された鷹につけられたネーミングの法則に!

 

「ないるきゅん! あの白黒のくまさん達の名は、くまゆらちゃんと、くまゆりちゃん! さらに最初に召喚したエンペラーホークの変な名前!」

 

「これは、大事件だ!」

 

「戦う気がないなら引っ込んでろこのバカ親子!」

 

 『とうとうサラーマさんブチギレ』

 『さすがルゥーファ、ナイル氏の好みをよく分かっておるw』

 『この戦いに負けたらナイルはあいつにさらわれて監禁される未来しか無いけどなw』

 

 コメント欄を横目に見てたらブルリと身震いしてしまう。 監禁エンドは絶対あかん!

 

 二体のカイザーグリズリーはレベルマックスになったサラーマさんにとって大した強敵にはならないのだろうが、先程ハートちゃんから聞いた固有スキルのことが気がかりだ。

 

 【遮二無二追尾愛】このスキルはメメジェットさんの【推しへの狂愛】とステータス上昇率が似通っていると推測されるため、下手をすればあの熊一体につき恐竜種並みの脅威度が予測される。 これは最初に召喚された大鷹にも同じ事が言えるだろう。

 

 自慢ではないが、ルゥーファさんの執着ぶりは被害者である俺が一番良く分かっている。 彼女が(勝手に)伴侶と定めた相手が近くにいればステータスが強化されるという曖昧な説明でも、おおまかな力量が想像できてしまう。

 

 対象が目の前にいるこの距離なら、おそらくそこらのプレイヤーよりも強いことは間違いないだろう。

 

「硬ぇなこの熊! ありたむは一旦下がってあれをやれ! ナイル、真面目に戦えるならありたむとスイッチだ! 片方請け負ってくれ!」

 

 スイッチとは、前衛と位置を入れ替え、相手を代わりに引き受ける際に発する言葉で、この場合は俺がママと前衛を入れ替えろという指示になる。

 

 妥当な判断だし相手がレンジャーならママの独壇場だ。 俺はすぐさまママが戦っている白熊、くまゆりちゃんに突進していく。

 

 空ではヒッポグリフに乗っているサナさんが鷹を足止めしてくれていることから、俺とサラーマさんの二人で手分けして熊の相手をしたほうがいいだろう。

 

「ママ! 最終手段で居眠りだ!」

 

「ナイルきゅん、サラーマニキに怒られたくないならお口チャックするんだわさ」

 

 背後から危うい視線を感じたため、さすがの俺もおふざけモードは終わり。 くまゆりちゃんの目の前に躍り出る。

 

 そうして、いざくまゆりちゃんを撃退するため、脳内で戦闘シュミレーションをし始めたその時だった。

 

 突然くまゆりちゃんがうずくまったかと思ったら、跳び箱を超えるかのような華麗なジャンプでダイブしてくるルゥーファちゃん。 表情はなんというかこう、やばい意味で恍惚としていた。

 

 まさかの行動すぎてその光景がスローモーションに見える。

 

「伴侶様ァー! わたくしの愛の抱擁をうけいれてくださいませぇ?」

 

「……ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 この異常事態に、とっさに出た行動は恐怖のあまりに自然と絞り出された叫喚だった。 タコの吸盤のようにすぼんだ唇が迫ってきて、真っ白な素肌を露出した細腕が俺の首へ蛇のように巻き付くかと思われた瞬間。

 

「やってしまうんだわさ! バーサーカー!」

 

 ガングロ肌で筋骨隆々とした大男がルゥーファちゃんを殴り飛ばす。

 

 あまりの恐怖に涙目で腰を抜かしてしまった俺は、恐る恐る背後に視線を向けると、ドヤ顔で肩にかかった漆黒の髪を弾き、ツンと顎を上げるママの姿。

 

「レンジャーは魔獣や幻獣を操るとか言って調子に乗ってるようだけどさ? あたくしの固有スキルはね、生き物だったら何でも呼べちゃうんだわさ。 つーまーりー、あたくしの想像力が許す限り、その可能性は無限大。 要は、ストーカーちゃんはあたくしの下位互換……ってやつだわね!」

 

 今日一番のドヤ顔で、ものすごく頼りになりそうなセリフを放つママをみていたら、なんだか知らないけど若干苛ついた。

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