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ほっとレモン  作者: こすもすさんど


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87話 ふちゅちゅかものですが

 なおも信じられないような顔をする雪乃。

 そこまでされると俺ちょっと悲しいぞ。


「嘘じゃない。それに俺の好きな人は、雪乃だよ」


「へっ?」


 あんぐり、と雪乃の口が間抜けに開かれる。


 あっ、しまった思わず言ってしまった……えぇぃっ、ままよ!


「俺は、雪乃のことが好きなんだよ」


「ちょっ椿……ここで言うの?」


 言うさ。

 夕莉がいい加減我慢出来ないって言ってたんだ。

 だったら俺も男だ、腹をくくる覚悟はとうに出来ている。


「え?えぇ?えぇぇぇぇぇ!?」


 ぼふっ、と雪乃の首から上が爆発した。


「あっ、また爆発した……くくっ……」


 夕莉はそんな真っ赤なお顔の雪乃さんを見て笑っている。そろそろそう言う曲も流れてきそうだな。


「えっえっ、うそっ、な、なんでっ?」


 なんでと言われてもな。


「……分からん。ただ、いつの間にか雪乃のことが好きになってた、としか言えない、好きなんだろうって自覚したのは昨夜だけどな」


 いつ、どこで、何故、雪乃のことが好きになったのか。

 それは俺にも分からないことだ。


「…………ほんとに?夕莉とグルになって、ドッキリとかじゃないよね?」


「あのね雫……この死ぬほど忙しい時期に椿を個人的に呼び出してまですることが、そんなおふざけなわけないでしょうが」


 何考えてるのよ、と夕莉は呆れたように溜息をつく。


「ほら、椿も!好きって言ったんなら、言いたいこと最後まで言っちゃいなさい、よ!」


 バンッ、と背中を思い切り叩かれた。

 ……こいつなりに、文字通り背中を押してくれてるんだな。

 ありがとう、夕莉。


 一度深呼吸で気を入れ替えて、毅然と雪乃へ向き直る。


「雪乃。俺は、お前のことが好きだ。だから……俺と、恋人として、付き合ってほしい」


 気の利いた言い回しなんて知らない。

 だからストレートに、精一杯の好きだって気持ちを込めて。


「………………ほ、ほんとに、私でいいの?」


 俺の告白に、雪乃は確認で返してきた。


「あぁ、そうだ」


 今ここで嘘をつく意味はない。


「私……夕莉みたいに家庭的じゃないよ?」


「それはこれからどうとでもなる」


「絵里香先輩みたいな美人で何でも出来る人じゃないし、大松先輩みたいにクールでカッコよくもないし、白根さんみたいに礼儀正しくて強い人じゃないよ?」


「あの先輩二人はちょっと比較対象にしちゃいけないと思うし、白根さんは……あれも、比較対象に出来ないな」


 というか、俺の周りにいる人間はみんなキャラが濃すぎるんだよ。


「………………ほ、ほんとに、私でいいの?」


 二回目だな。

 あーもう、なんで雪乃はそんなに自己評価が低いんだ。

 俺は敢えて一歩踏み出して、雪乃の顔に自分の顔を近付ける。

 鼻先がぶつかりそうなくらいの至近距離で。


「ちゃんと俺を見ろ、雪乃。これが、悪ふざけを考えているような奴の顔か?」


 俺の問いかけに、雪乃はふるふると首を横に振る。


「もう一度言う。雪乃、俺と……付き合ってくれ」


 その距離で、もう一度想いを伝える。

 雪乃も目を逸らしたりせずに、戸惑いと混乱と羞恥が綯い交ぜになったように、


「ふっ、ふちゅちゅっ……」


 と発した。

 ……ふちゅちゅってなんだ。


「ンンッ……ふ、つ、つ、か者ですが、よろしく、お願い、いたしま、す……ッ」


 あぁ、不束者って言いたかったのか。

 でも、それを聞いて安心した。


「ありがとう、雪乃」


 この瞬間。

 俺と雪乃は、恋人同士になった――。

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