21話 氷山の一角
結局のところ、下校時間ギリギリになったところで第二生徒会室の片付けは『ほんの少しだけ』進んだ。
だが、実際のところは氷山の一角……どころか、その一角の破片くらいだろう。
一抱えくらいはあるダンボール箱を二十箱潰してもまだ室内の中央にすら辿り着けない、といえば分かりやすいだろうか?
これをあと……五、六回繰り返して、ようやく足場を確保できるといったところか。
そこから掃除やら必要なものを取り寄せるなりなんなりして……まともに生徒会室として機能するには十日はかかるかもしれない。
……正直、気が遠くなりそうだ。
津辻会長達も、これと同じくらいのことをしたのだろうが、もう少し、いやほんの僅かでも来年のクリパのことを考慮しなかったのだろうか?
考慮してもなおこうならざるを得なかったのか、考慮せずともこの程度で済んでいるのか……どっちにしたって嫌だな。
用務員室からゴミ袋(45リットル)十枚ほどとカートを借りて、とにかく不要物をゴミ袋に放り込み、入らなくなった袋はカートに積載させて……あまりにも高くなりすぎてエレベーターに入らないことも考慮し、女子二人にカートの方を任せ、俺は四袋 (特に重い物が集中したもの)まとめて一気に運んでいく。
(第一)生徒会室は二階にあるのに、なんで第二生徒会室は四階にあるんだよ、とかぼやきつつ、階段を慎重に降りて、校舎の裏手にあるゴミ捨て場まで。
「ったく……文化祭も無事に終わったってのに、こんなところでなぁにやってんだろうな俺、っはァ!!」
気合いを入れてゴミ袋をステーションに放り込んで、身軽になったその肉体を脱力させる。
校舎の壁を背もたれにして、俺はその場で座り込む。
「はー、はー、はー……こ、れを、あと何回……?」
本当に。
これをあと何回やればいいのか。
終わりが見えないというのは思いの外辛い。
ふと、校舎の出入り口から、ガラガラと車輪が回る音が聞こえてきて、多量のゴミ袋を積載したカートを押してくる雪乃と夕莉が見えた。
「あ、海石くん。お疲れ様ー」
「ごっくろーさーん」
女子二人は楽そうにカートを押してステーションに近付けて、一袋ずつ放り込んでいく。
……ずるいなんて思ってないからな。
「よし、じゃぁ第二生徒会室を戸締まりして、解散しよっか」
雪乃にそう言われて、俺は重い腰を上げて、再び最上階へ向かう。
上半身は軽いのに、足腰が重い。
やっぱり重い物を運んだ直後は一時的に身体が軽く感じるっていうのは、ただの錯覚だな。
モンスターハウスを再び封印して、鍵を職員室に返却して、ようやく下校だ。
「あ"ー、今日だけで早速疲れたな……」
夕莉から鞄を受け取った俺は、ぐるぐると肩を回す。
明日の朝は間違いなく筋肉痛でバッキバキだなこれ。
「でも、絵里香先輩達は去年もやったんだし、やってる内に慣れてくると思うよ」
雪乃は努めてのことなのか、気楽そうに言ってくれるが、夕莉は苦笑した。
「いやいや、慣れる頃にはもう片付け終わってるんじゃない?」
ほんと、それだと思う。
ふぅ、普段はシャワーだけだが、今日はじっくり風呂に浸かろう。




