第135話 『 甘々とほろ苦 』
今話もアリシアが可愛いだけです。本当にブラックコーヒーが手放せない。あ、次話も可愛いですよ。
なにはともあれ、本日も天メソ劇場の開幕でございまーす! 『いいね、ブクマ、感想』募集中!
【 side颯太 】
―― 4 ――
「でも、高校生で結婚するとか夢あるよな」
「またその話か」
部活帰り、終了時間も冬季下校時間となり、颯太たちは18時に帰路に着いていた。
その最中、陸人がお昼休みの話題をまたぶり返した。
「俺、颯太は一生独身だと思ってたんだけどなー」
「んだそれ。俺に超失礼だぞ」
陸人に反論すれば、以外にも彼を肯定した人物がいた。
「分かる。颯太って、女心全然分かってなさそうだもん」
「おい馬鹿にするな。こちとら、みつ姉に散々「女の子は大切にするもの」だと教えられてきたんだぞ」
「その割にはあたしの好意には気付いてなかった気がするなー」
「うぐっ」
痛い所を突かれて、颯太は思わず口を噤む。
「それは、それまでは陸上一筋だったから」
「あんなアピールもこんなアピールもしたけど、全然気づかれなかったなぁ」
「うぐぐっ。でも、今はちゃんと向き合ってるだろ」
「もう恋人いるじゃん!」
正論とともにバシンッ、と背中を全力で叩かれて、颯太は目を白黒させた。
「イテッ! なにも本気で背中叩くことないだろ!」
「ふんだっ。ムカッと来たので一発お見舞いしておきました」
頬を膨らませてそっぽを向いた朋絵に辟易とすると、颯太は一歩後ろに下がってこの光景を傍観していた、気まずい顔の陸人に気付く。
――やば。
朋絵本人も気にしていない話題な上に颯太も無警戒だったため、陸人の恋情を無遠慮に傷つけてしまった。
颯太は慌てて話題を逸らした。
「そ、そういえば、朋絵。文化祭の時はありがとうな。アリシアのこと、連れ出してくれて」
「え、あぁ。そのことね。別にいいよ。あたしがしたくてしたことだし」
上手くこの話題に乗ってくれたことに安堵しつつも、颯太はもう一度朋絵に深く感謝する。
「いや、朋絵がいなかったら、きっと俺とアリシアは今もぎくしゃくしたままだった。俺たちの仲を戻してくれたのは、朋絵だよ」
「うっ。そう直球で褒められると、なんだか照れるなぁ」
ありのままの気持ちを伝えれば、朋絵は照れくさそうに頬を赤らめた。
ちらっ、と後ろの様子を窺えば、
「…………」
やっぱり陸人が気まずそうに見ていた。
「めんどくせぇ⁉」
「うおっ。どうしたの、いきなり大声上げて」
感情が爆発しまって、颯太は叫ばずにはいられなかった。目を瞬かせる朋絵を一瞥してから、颯太はキッ、と鋭い視線を一歩引く陸人に送ると、
「もうお前らで喋れ! 俺は後ろにいる!」
陸人とポジションチェンジすれば、二人は動揺した。
「なんで急に二人で喋れって……颯太も喋ろうよぉ」
「そ、そうだぞ。一人だけ仲間外れは可哀そうだろ」
「文句言わずに二人で喋れ! なんなら二人で帰れ!」
訳が分からないと首を傾げる朋絵はともかく、颯太は怖気づく陸人に厳然とした視線を送った。
『そんなに俺とアリシアが羨ましかったら早く告白しろ!』
と視線で語れば、陸人も視線で何か言ってきた。
『それができたら苦労しないっつの! こっちだって必死にやってんの! 俺のペースでやらせてくれよ!』
『うるせぇ! お前が何年も怖気づいてるから、縮まる距離も縮まらねえんだろうが!』
『あーやだ! 正論なんて聞きたくない! 恋愛強者には恋愛弱者の気持ちなんてわっかりっこないですよーだ』
朋絵と話せといったのに、視線を火花が散るごとく送り合っていると、
「男二人で何やってるの……」
と朋絵に呆れられた。
「はぁ。本当に、先が思いやれるなぁ」
陸人と朋絵の縮まらない距離感に、颯太はため息を落とした。
――はぁ。性格的に相性はいいはずなのに、どうしてこうも綺麗に噛み合わないかね。
一応、文化祭でそれなりに進展はあったようなのは知っている。二日目の文化祭で、颯太とアリシアは二人が一緒に文化祭を回っているシーンを目撃している。傍から見た感じでは結構いい雰囲気だったのだが、やはりまだ〝友達の距離感〟を保ったままに思えた。
二人の親友としても、この恋はぜひ成就してほしいと願っているのだが、その恋が実るのはまだ当分先かもしれない。
「……やっぱり、俺とアリシアって特別だったのかな」
この二人の恋愛模様を見ていると、そう実感させずにはいられなかった。
アリシアとの運命的な出会いを噛みしめていると――
「あ、いたいた」
と弾んだ声音が聞こえた。
「「ん?」」
三人揃って眉根を寄せると、一足早く陸人と朋絵が気付く。
「颯太。お迎えきたよ」
朋絵がそう言いながら颯太の視界を広げれば、車のライトが白銀の少女の姿を灯していた。
「アリシア⁉」
「おーい、ソウタさーん」
声を上擦らせて、颯太は慌ててアリシアの元まで駆け寄った。
アリシアも駆け寄ってきて、そしてそのまま抱きつかれた。
「お疲れ様ですソウタさん」
「お疲れ様……じゃなくてっ。なんでこんなとこまで来たのさ。今日は駅で待ってるって言ってたよね?」
そう問いかければ、アリシアはえへへ、と笑いながら、
「早く会いたくて、ここまで来ちゃいました」
「いや、でも夜道は危ないからって……」
「早く会いたくて、ここまで来ちゃいました」
「……来てくれてありがとう」
笑顔のまま圧を放つアリシアに、颯太はこれ以上は何も言えなかった。
「「颯太が言い負かされてるの初めてみた⁉」」
そんな様子を眺めていた陸人と朋絵が、驚愕に目を見開いた。
「見せものじゃないぞ」
と口を尖らせれば、二人はいやいやと手を振って、
「いや完全に見せものでしょ。往来で抱きしめあってるんだから」
「アリシア、放してくれ」
「む、仕方がないですね。でも、家に帰ったらまたぎゅとしてくださいね」
「アリシアさん⁉ 凄く恥ずかしいからそういうの外で言うの控えてもらっていいですかね⁉」
以前にもまして遠慮がなくなったアリシアの甘えっぷりに、颯太は戦々恐々としまう。
たじたじになった颯太に、アリシアはやれやれと吐息すると、やっと放れて陸人と朋絵に挨拶した。
「お二人も、今日も学校と部活お疲れ様です」
「凄い……人前であんな恥ずかしいことしたのに平然としている⁉」
「これが恋愛強者の恋人か! まさかどっちも強者だったとは⁉」
「? どうかされましたか、お二人とも」
どうやらアリシアの行動には二人も度肝を抜かれたらしい。
呆然と立ち尽くしている二人に、アリシアは「あっ」と何か思い出したように声を上げた。
「そうだ、トモエさん。文化祭の時は、本当にありがとうございました」
とアリシアに感謝されると、朋絵は硬直を解いた。
「え、あぁ。そのことなら2日目にもお礼してもらったからいいのに」
「そういう訳にはいきません。トモエさんのおかげで、私は大切なことを思い出すことができたんですから」
「うぅ。颯太にも感謝されたっばかなのに、また感謝されると照れるなぁ」
アリシアに、朋絵はまた照れくさそうに頬を赤らめた。恋人揃って感謝されるということは、朋絵がいかに義理人情な人柄かよく分かる。
――本当に、朋絵はいいやつだよなぁ。
人の為にこんなに頑張れる女の子を、颯太は知らなかった。ひょっとしたら朋絵は、アリシアよりも人の為に頑張れる性格なのかもしれない。
女の子同士が談笑している隙を見計らって、颯太は陸人との距離を詰めると肘で脇腹を突いた。
「……早くしないと、朋絵は他の男に取られるかもな」
「――ッ⁉」
煽ったわけではないが、そう小声で言えば陸人がビクッ、と肩を震わせた。
陸人も、知っているはずだ。
二人の目の前にいる、三崎朋絵という普通に可愛い女子高校生が、男子の間では密かに人気があるということは。
颯太も、マネージャーを始めてから〝たまたま聞いてしまった〟だけだが、陸上部内でも朋絵を狙っている男子はいる。
だから陸人も、そろそろ流暢なことを言っていられる暇はないわけだ。
「俺はお前の恋を応援してるけど、周りが全員応援してるとは思わないほうがいいぞ」
人間。周りに味方ばかりいるわけじゃない。ある日突然、仲良かった友達が恋のライバルになることだってある。その日は、もう訪れてしまっているかもしれない。
陸人の肩を叩けば、彼は颯太の言葉を反芻するように、厳然と頷いた。
「……分かってるよ、それくらい」
―― Fin ――
いまさらですが、第3部【群青の軌跡編】の一章のタイトルは『甘々マックス』です。アリシアの可愛さでお察しください。第3部はこんな感じで穏やーかにお話しが進みます。第2部のようなどろどろな展開は今のところないです。颯太とアリシア、イザベラ憑依後の聖羅が可愛い、陸人と朋絵が尊いだけなので、胃もたれな第3部をお楽しみください。追記:作者は既に糖分二回ほど吐いてます。アリシアが可愛い。以上だ!!
ちなみに、本日は最強姉弟の更新もたぶん! あると思いますので、興味あればチェックしてみてください! あと、気分によっては今日はもう一話上がります。
それじゃあ、また次回でお会いしましょう!!




