第9話
前に書いていたのがありました。
美女幽霊さんと、知り合いになった衝撃の時間より少し立ち落ち着いてきた私は、早速逃げる為に幽霊さんに、脱走ルートを聞いています。
「お願いします!脱出ルートを教えてください!」
「せっかくお友達になれたのに」
……いつの間に自称友達に。まあいいですけど。頼りになりそうですから。あの人達よりましですね。
「お願いします!あなたしかいません助けてください」
この際…幽霊だろうが、悪霊だろうが、私には関係ないです。
助けになるか、ならないかの、2択です。
「え〜っ、どうしようかなぁ。貴方が居なくなるとまた退屈になりそうだわ。損でしょう?」
悩む振りをしながら笑ってる。いい性格をした幽霊美女ですね。あの2人の奥様やってたのが分かるような気がします。それなりに鍛えられた神経が、荒縄くらいでかくなってますよ。
でも、私には後がないんです!捕まれば2度と逃げられなくなります。監禁怖い。
「お願いします!でないと、本当の事言いますよ。真実が分かれば、粘着質な彼らが、美女幽霊さんを諦めるとは思いません!」
「ひっ!じょ、冗談でも気持ち悪い事言わないで〜!」
ブルブル震えてますね。人の不幸を喜ぶなら道づれにしますよ!
あの粘着質の2人が諦めると?と真剣な顔で言ってみます。
「冗談だと思いますか?」
私が言うと、顔の強張らせた美女幽霊さんが、ため息を吐きました。
「……そ、そうね。残念な彼らは諦めないでしょうね。……分かったわ、逃がしてあげる」
「ありがとうございます!」
逃してもらえる事になりました。やはり幽霊になっても、彼らの元に帰りたくないと思うのは扱いが酷いからですね。
私も、同意見ですから人の事は言えませんが。
「この王城にある、彼らが知らない秘密の通路から出るといいわ」
「王族の、あの人達も知らないんですか?」
「そうよ。私が逃げる為だけに、秘密に作らせたから」
この人も大概に良い性格してますね。
まあ、それでなくては彼らに太刀打ちできないとも言いますが。
「……そうですか」
眩しい位の笑顔で言いましたね、美女幽霊さん。この様子だと、周りの人達に自分の命と引き換えにして、脅して作らせたんですね。
そうでなければ、王に逆らってまで他の人達が作る訳がない。
罪悪感とか、同情を、逆手にとって絶対やってます。
私にとっては幸運でした。
「この塔の、地下にもひとつ抜け道があるわ。仕掛けがあるから普通は行けないの」
「え!仕掛け!私単独で通れますか?」
「大丈夫、塔入り口近くの木の側に鍵を埋めておいたわ」
ものすご〜く不安なんですが。何時の話ですか?もしかして錆びてませんか?
「大丈夫よ。作ってくれた人達も今はもう居ないから、見つかる可能性は少ないわ」
寧ろ、生きてたら怖いですよ!鍵は無事でしょうか?
自信を持って言うのは構いませんが、自分と同じ大きさの胸をぶるん、と張って言われると
何とも言えない虚脱感に襲われるのは何故だろうか?とにかく、鍵を見つけて逃げようと思ってます。




