22.最愛なるあなたへ
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えっと……久し振り、で、いいのかな。
古崎・静香です。
五年ぶり……かな。
あのね……えっと、何て言えばいいんだろう。いろいろ考えてたんだけど……わかんなくなっちゃった。
そう……そうだ。
病気のこと。
病気のこと、ずっと黙ってて御免ね。どうしても……言えなかったんだ。
心配、かけたくなくて。
心配かけてたのは、わかってたけど。
でも……言えなかった。
私も、あれからずっと悩んでた。
死んじゃって、その後で幽霊になるなんて思ってなかったけど、幽霊になってから、ずっと後悔してた。
御免ね。
怒ってる……よね。
御免なさい。
ケンちゃん、ずっと私のこと忘れないでくれてたね。毎年私のお墓参りにも行ってくれて、有り難う。
ずっと、見てたんだ。
ずっと。
って言ってると、何か本当にホラーみたいでちょっと怖いね。
でも、本当なんだ。
正直なことを言うと、さ。
凄く申し訳なくもあったんだけど。
それよりもずっとずっと、嬉しかったんだ。
死んじゃって、私はもういないのに、ケンちゃんが私を忘れないでいてくれるのは。
凄く自分勝手だよね。
でも、本当に嬉しかったんだ。
死んだ後も忘れないでいてくれることは、嬉しい。
でも。
でもさ。
私のせいで、私が死んじゃったせいで、ケンちゃんが前に進めなくなったなんて、私は嫌だよ。
私のせいでケンちゃんの未来が閉じちゃったなんて、私は嫌だよ。
私は、ケンちゃんの重しにはなりたくない。
足枷にはなりたくない。
ケンちゃんから未来を奪っちゃうなんて、やだ。
私はもういないの。
私は死んじゃったんだよ。
私はもうどこにもいないんだよ。
ケンちゃんのところへはもう行けないんだよ。
私は、ケンちゃんにとってはもう過去のことなんだ。
私はもういない。
ケンちゃんは生きている。
だから、だからさ。
私のことはもう忘れて下さい。
あの夜の流星群のこととか、二人の記念日とか、全部忘れずにいてくれたことは、すっごく嬉しかった。
でも。
そういう思い出が、ケンちゃんを縛っちゃってるんなら、いっそのこと全部忘れて。
私はもういないんだよ。
ケンちゃんはまだまだ生きていくんだよ。
私はケンちゃんに幸せになってほしいの。
幸せになってほしい。
ケンちゃんが幸せなら、私も幸せだから。
生きてる間に、私は幸せいっぱいもらったよ。
すっごくすっごく幸せだったよ。
死んじゃってからも、たくさん幸せもらったよ。
だからもう、いいんだよ。
私のことを背負い続けたりなんか、しなくっていいんだよ。
全部忘れちゃっていいんだよ。
忘れて。
お願い。
新しい幸せを見つけて。
私から、ケンちゃんに全然幸せあげられなくて御免。
だから、凄く無責任なこと、自分勝手なことを言うけど。
幸せになって。
ケンちゃんはこれから、たくさんの新しい人と出会ってく。
いつかきっとその中に、一緒に幸せになれる誰かが現れる。
そのときには、私なんかには気兼ねなく、遠慮なく、幸せを望んで。
いつか誰かと結婚して、子供もつくって、幸せな家庭に生きて。
そうやって、ずっとずっと幸せに生きたそのときになら……
私が昔生きていたことを、ちょっとだけ思い出してほしい。
過去のこととして、遠い昔の思い出として。
幸せになったよって、教えて。
そのときの私は、誰よりも何よりも幸せだから。
ケンちゃんと一緒に幸せには、なれなかったけど。
ケンちゃんが幸せなときは、私も幸せだから。
だから。
大好きだよ。
有り難う。
さようなら。
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