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心渡し  作者: FRIDAY
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22/28

22.最愛なるあなたへ



 ●



 えっと……久し振り、で、いいのかな。

 古崎・静香です。

 五年ぶり……かな。

 あのね……えっと、何て言えばいいんだろう。いろいろ考えてたんだけど……わかんなくなっちゃった。



 そう……そうだ。



 病気のこと。

 病気のこと、ずっと黙ってて御免ね。どうしても……言えなかったんだ。

 心配、かけたくなくて。

 心配かけてたのは、わかってたけど。

 でも……言えなかった。

 私も、あれからずっと悩んでた。

 死んじゃって、その後で幽霊になるなんて思ってなかったけど、幽霊になってから、ずっと後悔してた。

 御免ね。

 怒ってる……よね。

 御免なさい。



 ケンちゃん、ずっと私のこと忘れないでくれてたね。毎年私のお墓参りにも行ってくれて、有り難う。

 ずっと、見てたんだ。

 ずっと。

 って言ってると、何か本当にホラーみたいでちょっと怖いね。

 でも、本当なんだ。

 正直なことを言うと、さ。

 凄く申し訳なくもあったんだけど。

 それよりもずっとずっと、嬉しかったんだ。

 死んじゃって、私はもういないのに、ケンちゃんが私を忘れないでいてくれるのは。

 凄く自分勝手だよね。

 でも、本当に嬉しかったんだ。

 死んだ後も忘れないでいてくれることは、嬉しい。



 でも。

 でもさ。



 私のせいで、私が死んじゃったせいで、ケンちゃんが前に進めなくなったなんて、私は嫌だよ。

 私のせいでケンちゃんの未来が閉じちゃったなんて、私は嫌だよ。

 私は、ケンちゃんの重しにはなりたくない。

 足枷にはなりたくない。

 ケンちゃんから未来を奪っちゃうなんて、やだ。

 私はもういないの。

 私は死んじゃったんだよ。

 私はもうどこにもいないんだよ。

 ケンちゃんのところへはもう行けないんだよ。

 私は、ケンちゃんにとってはもう過去のことなんだ。

 私はもういない。

 ケンちゃんは生きている。

 だから、だからさ。



 私のことはもう忘れて下さい。



 あの夜の流星群のこととか、二人の記念日とか、全部忘れずにいてくれたことは、すっごく嬉しかった。

 でも。

 そういう思い出が、ケンちゃんを縛っちゃってるんなら、いっそのこと全部忘れて。

 私はもういないんだよ。

 ケンちゃんはまだまだ生きていくんだよ。

 私はケンちゃんに幸せになってほしいの。

 幸せになってほしい。

 ケンちゃんが幸せなら、私も幸せだから。

 生きてる間に、私は幸せいっぱいもらったよ。

 すっごくすっごく幸せだったよ。

 死んじゃってからも、たくさん幸せもらったよ。

 だからもう、いいんだよ。

 私のことを背負い続けたりなんか、しなくっていいんだよ。

 全部忘れちゃっていいんだよ。

 忘れて。

 お願い。

 新しい幸せを見つけて。

 私から、ケンちゃんに全然幸せあげられなくて御免。

 だから、凄く無責任なこと、自分勝手なことを言うけど。

 幸せになって。

 ケンちゃんはこれから、たくさんの新しい人と出会ってく。

 いつかきっとその中に、一緒に幸せになれる誰かが現れる。

 そのときには、私なんかには気兼ねなく、遠慮なく、幸せを望んで。

 いつか誰かと結婚して、子供もつくって、幸せな家庭に生きて。

 そうやって、ずっとずっと幸せに生きたそのときになら……

 私が昔生きていたことを、ちょっとだけ思い出してほしい。

 過去のこととして、遠い昔の思い出として。

 幸せになったよって、教えて。

 そのときの私は、誰よりも何よりも幸せだから。

 ケンちゃんと一緒に幸せには、なれなかったけど。

 ケンちゃんが幸せなときは、私も幸せだから。

 だから。



 大好きだよ。



 有り難う。



 さようなら。



 ●



 

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