第十二話「届かなかった言葉」
食堂は、いつも通り騒がしかった。
「でさ!あの遺構、絶対ドラゴン関係あるって!」
ガイアスが騒いでいる。
「お前ほんとそればっかだな……」
ユークスが笑う。
「クロノス、怪我はもういいの?」
ウェナスの声。
「……ああ」
「無理しないでね」
その一言。
やけに引っかかる。
「心配しすぎだって」
ユークスが軽く笑う。
「こいつ、意外と頑丈だからさ」
「そういう問題じゃないでしょ」
ウェナスが軽く睨む。
そのやり取り。
(……変わらないな)
最初から、こうだった。
まだ、陸軍にいた頃。
補給任務の帰り。
たまたま立ち寄った、竜騎兵団の訓練場。
空を、見上げていた。
ワイバーンが飛ぶ。
速い。
自由だ。
「すごいよね」
隣から声。
竜騎兵団で物資の管理をしているウェナスがそこにはいた。
「……ああ」
「特に、あの人」
指差した先。
ユークスがいた。
他よりも高く、速く飛んでいる。
「かっこいいなって思う」
その言葉。
胸の奥に、何かが引っかかった。
(……そうか)
自分は、地上にいる。
あいつは、空にいる。
「クロノスも、私と同じ竜騎兵団に来て、空飛べはいいのに」
軽く言われた一言。
「向いてると思うよ」
(……簡単に言うな)
そう思った。
でも。
否定はしなかった。
「……考えとく」
それだけ当時は答えた。
「なあクロノス!」
ガイアスの声で戻る。
「お前、なんで竜騎兵団来たんだ?」
何気ない質問。
一瞬、迷う。
「適性があったからだ」
表向きの答え。
「へぇ、つまんねぇな!」
ガイアスが笑う。
「もっとこう、夢とかねぇのかよ!」
「……ないな」
本音は、言わない。
一瞬だけ。
ウェナスを見る。
気づかれないように。
(……違うだろ)
本当は。
空に行きたかったわけじゃない。
ただ。
同じ場所に、立ちたかっただけだ。
あいつの隣に。
「ユークスは?」
ウェナスが聞く。
「ん?」
「なんで空に?」
「楽しいから」
即答だった。
「飛ぶのが好きなんだよ」
迷いがない。
(……違うな)
俺とは、違う。
最初から、あいつは空の人間だった。
「……そっか」
ウェナスが笑う。
その笑顔。
少しだけ、胸が痛む。
(届かないな)
今も。
たぶん、これからも。




