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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十五章 海の国ザナドゥ~二度目のバカンス~
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第一回ザナドゥ・マリンスポーツ大会⑥

 さて、タコパの翌日……いよいよ明日が『自由競争』だ。

 胸の重みで目を覚ますと、ユキちゃんが俺の胸の上でスヤスヤ寝ていた。そういえば、みんな俺の別荘に泊ったんだっけ……俺の部屋のベッドがデカいから、ロッソたち四人で使ったんだよな。

 んで、バレンたちのスノウさん、俺は一階のソファで寝たんだが……なんでユキちゃんが?


「……にゃ。おじちゃん……」

「ユキちゃん……おはよう」

「にゃあああ……」


 ユキちゃんは大きな欠伸をすると、手で顔をゴシゴシ拭い、そのままペロっと手を舐めた。そして猫のようにぐぐーっと背を伸ばし、尻尾をぴんと立て、ネコミミをパタパタ動かす……マジの猫みたいだ。

 俺はユキちゃんを撫でる。


「ユキちゃん、俺のところで寝てたのか」

「にゃ。おみず飲みにきたらおじちゃん寝てたの。いっしょに寝たの」

「ははは、そうかそうか……ん?」


 なんかいい匂いすると思ったら、シュバンとマイルズさんが朝食の支度をしていた。

 ユキちゃんを抱っこしてキッチンへ。


「おはようございます。ゲントクさん」

「マイルズさん、シュバンも……すみません、わざわざ食事の支度を」

「いえいえ。お気になさらず。お嬢様もいらっしゃいますので」

「もう少し時間がかかる。ゲントクさん、待っててくれ」

「わかった……よし、早起きしたし、ユキちゃん、お散歩でも行くか?」

「にゃあ、いく」


 大福、きなこ、白玉は重なって寝てる。バニラは止まり木にいない……新聞取りに行ったか。

 さて、軽く散歩でも行きますかね。


 ◇◇◇◇◇◇


 ユキちゃんを肩車し、海沿いの道を歩く。

 せっかくなので、別荘から少し歩いたところにあるビーチへ。早朝だからか、あまり人がいない。

 こういう閑散としたビーチも悪くない。


「ユキちゃん、旅行は楽しいか?」

「にゃあ。ここ、わたしのおうちがあったところなの。しってるの」

「あ~……確かにそうか。故郷だもんなあ」


 歩いていると、ジョギングしている獣人のグループとすれ違った。

 さらに、こんな時間なのにビキニ姿の女性……おっと、子供いるし自重しよう。


「おじちゃん。わたし、たのしいよ」

「そっか。おじちゃんもすっごく楽しいぞ」

「にゃうう」


 海を眺めると、ボートが通り過ぎた。

 競技用かと思ったら、どうやら漁船のようだ。速度を競うだけじゃない、ちゃんと漁師なども船外機を使ったボートを使っている……俺の発明が、ちゃんと役に立っている。


「にゃ……おじちゃん」

「ん? お……あれは」


 ユキちゃんが見ていたのは、早朝からやっているドリンクショップだ。

 ジョギングしている人もいるし、需要あるんだろうな。

 まあ……一杯くらいならいいか。


「小さいの、一つ買って飲むか」

「にゃあう。のむー」


 俺はショップへ。

 ドリンクはセンゴの実を絞ったジュースしかない。朝だからか?

 とりあえず、小さいのを二つ買い、近くのベンチでのんびり飲む。


「おいしいー!!」

「美味いな。甘酸っぱくて飲みやすい」


 こんな風に早起きして、散歩して、果実水を飲むなんてなかったな。

 明日は試合だし……今日は飲みに行かずに、家でのんびり過ごすかな。

 ドリンクを飲み干し、カップを捨て、俺とユキちゃんは歩き出す。


「さ、帰って朝ごはんにしようか。ユキちゃん、今日は何をしたい?」

「にゃあ。おじちゃんといっしょにあそぶー」

「ははは、そうだな。うちの浜辺で、のんびり遊ぶとしようか」

「にゃううー」


 この日、俺はユキちゃんと一緒に、プライベートビーチでのんびり遊んで過ごすのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、ユキちゃんと過ごしほっこりした……気分は最高に落ち着いている。

 早朝、俺はサスケと二人で朝食を食べ、『自由競争』のスタート地点へ向かう。

 サスケは言う。


「へへ、ワクワクしてきたな」

「ああ。そういやお前、タコパの時いなかったけど、どこいたんだ?」

「タコ? ああ、ちょっといろいろ準備していたんだ。へへ……まあ、向こうで話すよ」

「……?」


 よくわからんが、まあいいや。

 スタート地点に到着。このまま参加の確認をして、ボートの最終チェックして、スタートまで待てばいいんだが……なんか、俺らのボートがある桟橋の近くで騒ぎが聞こえる。

 近付くと……げっ、嘘だろ。


「小娘、貴様……!!」

「フン……その小娘というの、やめてくださる? 私は五大商会の一つ、アレキサンドライト商会商会長、サンドローネという名がありますので」


 さ、サンドローネと、前に口喧嘩していたザナドゥの古参商会長たちが言い争いしていた。

 サンドローネとイェランにリヒターだ。リヒターはサンドローネを守るよう前に立ち、古参たちの護衛もリヒターに挑むように対峙している。

 サスケと顔を見合わせる。


「どうする? ここからでも闇討ちできるけど」


 サスケは長い針みたいなのを俺に見せる……まさか、ここから投げるつもりかい。

 俺は止める。そして、サンドローネと目が合ってしまった。うげえ。


「どうも、あなた方は勘違いしていますわね。いいでしょう、条件を追加してあげます」

「あぁ?」

「もし、この『自由競争』で私のチームが負けたら、アレキサンドライト商会はザナドゥから完全撤収します。海路計画のプランも、それに関する利益も全てあなた方に差し上げますわ」

「ほう、それは面白い……!! くくく、小娘、一度吐いた言葉は取り消せんぞ?」

「ええ。そちらの条件は変わらず、商会を一つ取りつぶすこと……言っておきますが、どの商会を潰すか、ちゃんと決めておいてくださいね? もし下手な言い訳、言いがかりをするようなら……五大商会に名を連ねるアレキサンドライト商会が、あなた方の商会を全て潰しますので」


 サンドローネはニヤリと微笑み、胸から取り出した扇子をバッと開いた。

 古参商会長……名前なんだったかな。商会長たちは帰っていった。

 俺は嫌だったがサンドローネに近づく。


「お前、何してんだよ」

「売られた喧嘩を買っただけ。それより、ちゃんと勝ちなさいよ」

「……負けたらどうなる?」

「アレキサンドライト商会はザナドゥから完全撤退。アレキサンドライト商会の名に傷が付き、五大商会からも除名され、さらに商会も完全解体ね」

「おっも!! お前な……」


 呆れてモノも言えんぞ。

 サスケも苦笑、リヒターは申し訳なさそうに頭を下げ、イェランはキラキラした目でサンドローネを見ていた……ったく、この野郎め。


「おいサンドローネ、俺も条件追加だ」

「な、何よ」

「俺らが勝ったら、打ち上げの給仕全部ひとりでやるのと、俺の別荘を一人で綺麗に掃除しろよ。リヒターもイェランの手を絶対に借りるなよ」

「……ぐぐぐ、い、いいわ。やってやるわ」

「ははは。お前がゴム手袋つけてトイレ掃除する姿が見れると考えたら、めちゃくちゃやる気出てきたぜ!! なあリヒター」

「え、えと」

「とにかくサンドローネ。喧嘩売られてすぐ買うな。ムカつく気持ちはわかるけど、ジジイやババアの挑発に乗って不利になるなんて馬鹿げてるぞ」

「……わかってるわよ。でも、しょうがないじゃない……あなたのボート、馬鹿にされたんだから」

「…………ったく。サスケ、ボートのチェックしようぜ」

「おう」

「じゃあ、観客席で見てろ。俺とサスケがぶっちぎりで優勝するところをな」


 サンドローネの肩をバシッと叩き、俺とサスケはボートに向かうのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、ボートのチェックを終えた。


「問題なし。魔石もバッチリだ。サスケの方は?」

「ああ、問題ないぜ……聞いたかオッサン、参加チーム、五百を超えたらしいぜ」

「ブッ……ま、マジかよ」


 五百チームが横一列に並び、スタートの合図で一斉にスタートするのか……なんかすげえ光景だな。

 周りには、似たようにボートを整備するチームが多くいる。

 二人でアレコレやってるのは俺とサスケくらいかな。


「見た感じ、攻撃重視の重武装ボートと、速度重視の小型軽量が多いな」

「ああ。乗組員も、十人フルのところもあれば、一人のところもいるな……」


 桟橋は仕切りが設けられ、それぞれのチームのボートが格納されている。

 ここで最終確認をして、スタート時間になったら沖に向かってスタート地点に並ぶのだ。

 係員による最終チェックも終わり、いよいよスタート一時間前となった。


「オッサン、へへ……これ」

「ん? って……おいおい、なんだこれ。服か?」

「シャツに短パンじゃカッコ付かないだろ。ザナドゥで知り合った仕立て屋に頼んで作ってもらったぜ。こういうの好きだろ?」

「大好きだ!!」


 なんと、サスケがくれたのはカッコいいジャケットにズボンだった。

 規定では服装は自由とのこと。俺とサスケはお揃いの、背中に『アレキサンドライト商会』と書かれたジャケットにズボンを装備。さらに俺はサングラスをかけた。

 ジャケットにズボン、暑いと思ったけど、素材のせいかけっこう涼しい。

 

「ありがとな、サスケ」

「気にすんな。へへ……なんか、マジでワクワクしてきたぜ」

「俺も。くくっ、顔がニヤニヤしちまう。なあサスケ、これ優勝したら英雄だよな?」

「ああ、かもな」


 サスケとハイタッチ。

 さて、軽く食事をして水分補給し、いよいよスタートが近づいてきた。

 係員が大勢来て、みんな同じことを言う。


「それでは、参加証の番号に従った位置へ移動してください!! まもなくスタートです!! 参加チームのボートは、スタート位置まで移動してください!!」


 俺はサスケと拳を合わせる。


「よし、行くぜ相棒」

「ああ、オレとオッサンならいけるぜ」


 俺とサスケはボートに乗り込み、スタート位置まで向かうのだった。

 さてさて、俺がどんなボートを作ったのか……次回をお楽しみに、なんてな!!

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レーベル:マンガボックス
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原著:さとう
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お読みいただき有難うございます!
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― 新着の感想 ―
まあゲントクが負けるはず無いけど、それにしたってサンドローネは自力じゃないことで商会掛けて勝負すんなよ……商会長として従業員にだって責任あるでしょうが キッチリ掃除やらされて下さい
サンドローネにもちゃんとお仕置きがされそうでニッコリしたのは私だけでは無いはず。
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