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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十五章 海の国ザナドゥ~二度目のバカンス~
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第一回ザナドゥ・マリンスポーツ大会⑤

 さて、マリンスポーツ大会は順調に進んでいる。

 大会期間中、出歩くこともあれば別荘でのんびり過ごすこともある。大福やきなこを撫でたり、バニラを解放して好きに飛ばせたり、プライベートビーチでのんびり過ごしたり……まあ、のんびり過ごした。

 俺の参加する『自由競争』は最終日だ。

 ボートはもう準備してあるし、サスケが「ボート、こっちで知り合ったシノビに警護任せたぜ」なんて言うから大丈夫そうだ。

 最終競技は三日後……毎日出歩くのも疲れるので、今日も家でのんびりしている。


「ふぁぁぁ……」

『なぁご』『うにゃ』


 大福、きなこが珍しく俺の寝転がっているソファに寄って来た。

 二匹並んで香箱座りしているので、遠慮なく撫でる……かわいい。


『うなああ』

「ん? なんだ、毎日ゴロゴロしてデブるぞ、ってか? まあわかる……よし、じゃあ身体動かすか」

『ごろろろ』

「え? ああ、たこ焼き器作れって? そうだな……タコの存在を知ったし、やってみるか」


 もちろん、俺はネコの言葉を知らない。

 適当に思いついたことを言ってるだけだ。

 というわけ、地下にある作業場へ。

 素材置き場を漁る。


「……お、アイアンリザードの外殻残ってた。こいつを加工して、たこ焼き器の鉄板にするか」


 アイアンリザードの外殻。

 大きさは、幅三十センチ、長さは五十センチくらいかな。

 この外殻の特徴は、銅に近い材質だ。銅と違うのは錆びないところ……あくまでアイアンリザードの外殻で、鉄じゃないからな。

 それを磨いて、たこ焼きの穴を作るわけだが。


「綺麗な穴、どうすっかな……魔法でいけるか? あ、そうだ!!」


 俺は素材置き場から、ピンポン玉ほどの大きさの『鉄』を取り出す。


「むっふっふ。ギガントタウルスの胃石……ちょうどあってよかった」


 胃石。肉食魔獣は石を食べ、肉を食べた時に胃の中で石が肉を砕いて消化を助ける。

 このギガントタウルスは、胃の中の石を鉄でコーティングする。そして、綺麗な真ん丸にして口から吐き出すのだ。なぜ真ん丸になるのかは不明。

 まあ、鉄でコーティングしただけの石なので価値はない。以前アオが拾ったのをもらったのだ。


「こいつの大きさはちょうどいいな……よし」


 俺は、魔導アーマーの腕部分だけを装着し、魔法でアイアンリザードの外殻を熱して柔らかくする。そこに、ギガントタウルスの胃石を押し込んで綺麗な半円の跡を付けた。

 そのまま三十個ほど跡を付け、水で冷やす。

 冷えると、そのままの形でしっかり半円が刻まれた。


「完成!! よし、昼飯はたこ焼きにしてみるか……材料買いにいくぞ」


 せっかくなので、バーベキューコンロを出し、外で焼くことにした。

 一人タコパ……せっかくだ、酒とかも用意しよう!!


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、タコ……異世界での名前なんだっけ……まあタコでいいや。タコを買い、タコ焼きの材料も買った。

 アレンジにと魚介もいっぱい買った。たまたまミニクラーケンが売っていたのでそれも買い、挽肉や野菜もいっぱい買った。

 紅ショウガはない……あれってショウガと梅酢だっけ。無理かなあ。

 まあいい。さっそく、調理をしようとした時だった。


「こんちわー!! おっちゃん、いるー?」


 リーンドゥの声。

 玄関に行くと、バレンにウング、リーンドゥがいた。


「おお、お前たちか。どうしたんだ?」

「別に、遊びに来ただけだよ。おっちゃん、町に出ないの? すっごく賑わってるのにー」

「おっさんにはキツイぜ。ながーい祭りが開催されても、毎日出歩いたりはしないのさ」

「ふーん。ねえ、ご飯行かない?」

 

 リーンドゥのお誘い……嬉しいが、今は無理だ。


「悪い。今ちょっと昼飯の準備……あ、そうだ。よかったら実験に付き合ってくれないか?」

「……実験?」


 ウングが言う。

 とりあえず三人をリビングへ。果実水を出す。

 

「新しい料理を試す予定でな。今まさに作ろうとしていたところで、お前たちが来た」

「なるほど。ボクたち、運が良かったみたいですね」

「おっちゃんの料理、全部美味しいもんね~」

「……で、何作るんだ?」

「ふふふ、タコ焼きだ」

「「「…………???」」」


 三人は首を傾げた……まあ、言葉じゃわからないよな。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、三人は手伝ってくれることになった。

 バレン、リーンドゥはバーベキューコンロで火の準備。

 俺とウングは食材の仕込みだ。


「ぶつ切りでいいのか?」

「ああ。生地は俺がやるよ」

「……任せろ」


 ウング、とんでもない速度で包丁を使う。

 すげえ、手が高速でブレて見える。しかも包丁二刀流だと!? こいつできる……なんて、バトル漫画じゃあるまいし。

 俺は小麦粉に卵を入れてかき混ぜて生地を作る。ちょっとだけ隠し味に、冷蔵庫で冷やしておいた魚貝の出し汁を加えて混ぜる。

 外では準備ができたみたいだ。

 

「オヤジ、できたぜ」

「はやっ……おう、じゃあ外に行くか」


 パラソルの下で、俺はテーブルに材料を並べる。

 鉄板を見ると、いい感じに温まっていた。


「よし、じゃあ作るぞ。まず、鉄板に油を塗る」


 町で買った塗装用のハケを切り、タコ焼き鉄板で使えるサイズに加工した。

 油を塗り、生地を鉄板に流し込む……コツは、生地はひとつひとつの穴に入れるのではなく、プレート全体が埋まるぐらいにたっぷりと流し込む。

 そこに、ぶつ切りのタコ、刻みネギ、天かすを入れる。


「……よし、ここからが見どころだ。いくぞ!!」


 俺は、魔獣の骨を加工して作った串を手にし、タコ焼きの生地をひっくり返す。

 コツは、一気にひっくり返すんじゃなく、半分ほどひっくり返すこと。そしてひっくり返し、綺麗な球体を作る。


「おおお~!! なんかすごいね!!」

「本当に、見たことのない調理法ですね……」

「……なんか、いい匂いするな」


 ふふふ、生地に出汁を入れたのは正解だったぜ。

 まずは、オーソドックスなタコ焼きだ。

 焼き上がり、全て皿に移す……悔やまれるのは、この世界にマヨネーズがないことだ。ソース……うーん、さすがに無理だ。

 仕方ないので、塩に出し汁などを用意した。


「さあ、食ってくれ!!」

「やたっ!! ん、あっふ、あふい!! あっつつつ!!」

「ほ、ん、っふぁ……あっついですね」

「……美味いな!!」


 三人は口をホッホさせながらタコ焼きを食べる。

 俺も一つ……ん、うまい!! 俺の知るタコ焼き……だが。


「……マヨネーズ、ソース、紅ショウガが欲しい」


 も、物足りねえ。

 塩……まあ美味いな。出し汁もいける。もしかしたら味噌とかも合うかも。 

 

「おっちゃん、おかわりー!!」

「ん? って、もう食ったのか!?」

「あはは、すみません」

「……このタコだったか。うまいな」

「よーし、追加いくぞ。タコだけじゃなくて、エビとか肉とかいろいろ入れてみるか」

「あー!!」


 と、後ろで聞き覚えるのある声。

 振り返ると、ロッソたち四人、スノウさんにユキちゃんがいた。


「おっさん、なんか作ってるし!! いいないいいなー」

「ふふ、参加しますわ」

「……知らない料理!! たべる」

「あんたたち、食い意地……まあ、私も気になるけど」

「お手伝いしますね」

「にゃああ」


 ロッソたちが参戦。こりゃ忙しくなるぞ。

 

「よし、みんな食ってけ!! 今日はみんなでタコパするぞ!!」


 こうして、マリンスポーツ大会そっちのけで、タコ焼きパーティー……タコパを開催した。

 三日後に自由競争があることも忘れ、俺は必死にタコ焼きを作るのだった。

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― 新着の感想 ―
 胃石が丸くなるのは真珠なんかと同じだろうね、核となる物質を作る際に固める行為が全方位からの圧縮で丸くなるからか液体から個体だとしても液体自体が丸くなりやすいからなぁ。
醤油、ケチャップ、砂糖を混ぜて作るカンタン中濃ソースなら実現できそうですねw
たこ焼き食べたくなった……
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