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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十五章 海の国ザナドゥ~二度目のバカンス~
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第一回ザナドゥ・マリンスポーツ大会①

 さて、俺は一時間で図面を仕上げ、それをイェランに見せた。

 ちなみに、俺とイェランだけで船を作る。当日までどんな船なのかサンドローネたちにも内緒……だって、そっちの方が面白いしな。

 イェランは、俺の見た図面を見てポカンとしている。

 そして、俺を見て口をにんまり歪めて笑った。


「盲点だった……そっか、そういう方法もあるんだ」

「勝てばいいんだろ? だったら、これが一番だ」


 イェランは手を差しだしたので、俺はその手をパンと叩く。


「いいね、これなら勝てるよ。素材はどうする?」

「頑強さはもちろんだけど、軽さも欲しいな……チタンゴーレムで骨組みして、プラティックワイバーンで外装を作るか」

「搭乗人数は二名でいい?」

「ああ。最低限でいい……ところで、なんで最大人数が十名までなんだ? レースなら軽い方が有利だろ」

「あのねー、魔導武器をわんさと積んだ船とか出てくるんだよ? 一位を取るために、他の船を全部沈めればいいなんて考えするでしょ。魔力持ちが多く乗れば、それだけ武器いっぱい搭載できるし」

「なるほどなあ……こっちも武器付けるか」

「いらないいらない。この船なら問題ないよ」


 というわけで方針は決まった。

 船の大まかな大きさなどの設計をイェランに任せ、俺は冒険者ギルドへ。

 ちなみに、設計と造船は俺の家でやる。となると当然、サスケもいる。


「オッサン、バカンスなのに船作りとはな」

「ははは。まあ、遊び目的でザナドゥに来たけど……毎日食って飲んで遊んでばかりだから、多少は引き締めが必要かなと思ってもいた」


 冒険者ギルドに必要な素材を発注……嬉しいことに、欲しい素材が全て入荷していた。

 話を聞くと。


「いやあ、『鮮血の赤椿スカーレット・カメリア』と『殲滅の薔薇(アナイアレーション)』が、塩漬けの依頼を全部こなしてくれたおかげなんだ。毎年、高レートの魔獣討伐をしてくれるから非常に助かってるよ」

「やっぱロッソたちのおかげか……」


 受付のおっさんは嬉しそうに笑っていた。

 素材はすぐに運べるとのことで、別荘の場所を教えて運んでもらう。

 そしてもう一つ……考えることがあった。


「乗組員、どうすっかな」

「乗組員?」

「ああ。大会に出る操縦士だよ。俺は……まあ、出るしかないなあ」

 

 今回の船、初めての物になるから、もしかしたら多少の危険もあるかもしれないんだよな……まあ、死ぬとまでは思わないけど、実験的な物だし、最初は俺が乗るのが筋だろう。

 

「イェランは、サンドローネに付く予定だし、リヒターも同じだ。サスケは純粋にバカンスだろ? 危険もあるし、手伝わせるのは……」

「水臭いな。オッサンとオレの仲だろ? それに、オッサンのボート、オレが一番上手く操縦できるの忘れたのか?」


 そう、パラセーリングボート……サスケが一番うまく操縦できる。

 本人もやる気になっているのか、俺に向かって親指を立てる。


「わかった。じゃあサスケ、操縦関係はお前に任せる」

「おう。って、オッサンは?」

「俺は魔石関連の発動担当だ。ザナドゥ初のマリンスポーツ大会、最後の競技を優勝で飾ろうぜ」

「ああ、楽しみだぜ」


 サスケと拳をコツンと合わせる。

 よーし、やる気出て来たぞ。船作り頑張るか!!


 ◇◇◇◇◇◇


 素材が届き、イェランとサスケの三人で船作りを始めた。


「サスケ、そこのハンマー取って」

「おう、これだな」


 イェランは外装の加工。

 俺はチタンゴーレムの骨を加工し、骨組みを作っている。

 この船……動画とかで構造を見たことがあるから作れる。でも、今更だが異世界で『こんな船』を作るなんて、想いもしなかった。

 正直……不安もあるけど、面白い。

 そんなことを考えながら骨組みを完成させ、俺は魔石の加工に取り掛かる。


「魔石、等級も関係ないんだな」

「うん。ルール無用だからね」


 イェランが外装を取りつけながら言う。

 イェランが仕事するのを久しぶりに見るけど、こいつやっぱ腕いいな。

 

「なんか、一緒に仕事するの久しぶりだね」

「ああ。アレキサンドライト商会に入ったばかりの頃が懐かしい」

「……ね、ゲントク」

「ん?」


 魔石に慎重に文字を彫っていると、イェランが言う。


「アンタさ……たまにでいいから、アタシたちのいる工房に遊び来たら?」

「……ん?」

「一年いた古巣だし、そういうの自然だと思うけど」

「……あー、確かにな」


 そういや、独立してから一度も、アレキサンドライト商会に行ってないな。

 余計な仕事頼まれるかも、なんて考えたこともあったけど。

 それに、辞めた職員が堂々と辞めた職場に行ったり、部外者お断りのバックヤードとか事務所に踏み込むようなのは嫌いなんだよな。非常識というか、なんというか。

 でも、異世界じゃそういうのないみたいだ。


「たまには遊び来なよ。お土産持ってさ」

「……だな。今度行くよ」

「うん」


 イェラン、なんだか嬉しそうに見えた……気のせい、かな?


 ◇◇◇◇◇◇


 夕方になり、船の七割が完成……というか、俺ら早すぎる。

 半日でここまで完成してしまった。自分の腕が怖いぜ!!


「おっさーん、ご飯……おお、なにこれ」

「……なにこれ?」

「まあ……」

「あんた、仕事しないんじゃなかったの?」

「こんばんは、ゲントクさん」

「にゃうう」


 ロッソたちが来た。そしてそのすぐあとにバレンたちも来た。


「戻りました。ゲントクさん」

「おっちゃん!! ウチら、新しい別荘買ったよ!! おっちゃんも遊びに来てね!!」

「……明日には出て行く。世話になったな」

「おお、そうかそうか。っああ……イェラン、今日はしまいにして、メシ行くか」

「うん。これなら、明日にでも完成だね。仕事早いわ……」

「俺とお前なら当然だろ」

「ま、そうだね」


 拳をコツンと合わせる。

 さて、みんな揃ったしメシでも行きますかね。


 ◇◇◇◇◇◇


 向かったのは、初めて入る大衆食堂だ。

 大きな円卓に全員で座り、たくさんの料理や酒を注文して乾杯……今更だがすげえ面子だ。最強の冒険者が七人もいるし、今この瞬間テロリストが暴動起こしても軽く鎮圧できそうだ。

 話題は、マリンスポーツ大会のことになる。


「え、おっさん、最終競技の自由競争出るの!?」

「ああ。サンドローネに依頼されてな……俺とイェランがボート作って、俺とサスケで乗る」

「……いいなあ。サスケ、変わって」

「わり、今回はダメだ。オレも楽しみにしてるからな」

「おじさま、危険はありませんの?」

「まあ、多少は」

「ふふ。どんな怪我をしても、わたくしが治しますのでご安心くださいませ」

「ありがとな、ブランシュ」

「それにしても……ザナドゥ、面白いことばかりね」


 ヴェルデがそう言うと、ユキちゃんが俺の足を登って太ももに座った。

 そのままユキちゃんを撫でながら言う。


「だなあ。今回は、事前準備全部してきたし、いきなり遊び全開だったからなあ」

「うんうん。バレンたちのおかげで、依頼も早く片付いたしね。バレン、ウング、リーンドゥには感謝しかないわ。ありがとうね」


 ヴェルデがお礼を言う。ロッソたち三人は言いにくそうだしな……こういう気遣いできるのがヴェルデのいいところなんだよな。

 バレンは微笑んで言う。


「気にしないで。拠点も手に入れたし、来年も協力するよ」

「……チッ、ザナドゥの冒険者共、もう少しやる気になればいいんだがな」

「仕方ないよー、ここ、遊ぶところだしね。冒険者もいっぱい遊びたいんじゃない?」


 リーンドゥがケラケラ笑うと、アオが言う。


「でも……ダンジョン見つかった。少し確認しただけで、かなり広いダンジョンってことがわかった」

「だな。最初の調査はオレらでやるが、解放されれば冒険者連中も少しはやる気出すだろ。このダンジョン、砂漠と同じだ……恐らく、相当なレベルのダンジョンだぜ」

「……うん。解放されれば冒険者は集まる。人も増えるし、依頼も増える、冒険者たち、勝手に強くなると思う」


 現在、冒険者ギルドで『海底ダンジョン行き』の船を出すことを検討するとかなんとか。仕事が早いなあ……別にいいけど。

 ロッソはエールを飲んで言う。


「マリンスポーツ大会まで日がないし、明日明後日くらいで調査終わらせないとね」

「なら、パラセーリングボート使うか? 俺らは大会用の船作りあるし、海に出る暇がないからな」

「え、いいの?」

「それなら、オレが運転するぜ。船作りでオレは手伝えないからな」

「……サスケ、ありがとう」

「よーし!! じゃあ、二日間でダンジョン調査終えて、そのあとはマリンスポーツ大会!! 『鮮血の赤椿スカーレット・カメリア』、ダンジョン調査やるぞー!!」

「「「おおー!!」」」

「一つのダンジョン調査なら、七人でやればすぐ終わるね。ウング、リーンドゥ、ボクたちも頑張ろう」

「……ああ」

「おー!! なんかワクワクしてきたっ!!」


 うんうん、若者たちのやる気が溢れるのはいいことだ。

 俺はユキちゃんを撫でながら頷くのだった。


「にゃああ」

「うんうん。ユキちゃん、マリンスポーツ大会楽しみだな」

「にゃうう、たのしみ」


 さて、マリンスポーツ大会までもう少し……ボート作り、頑張ろうかね。

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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~(1)
レーベル:マンガボックス
著者:比内ハツ
原著:さとう
発売日:2025年 6月 30日
定価 726円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
敵の武装を無力化するなら 空を飛ぶか海に潜るか 本当に速くしてゴールするだけなら人間魚雷すらありえるのか?・・・
さてさて、ゲントクさんはどんな船を作るのかな? 船のF1、とも比喩されるパワーボートあたりだろうか?と予想してみるが如何か?
空を飛んでも船は船だし問題ないよね!って言って飛ばしそうだな。 イェラン、なんだか嬉しそうに見えた……気のせい、かな? きっと雑用を押し付けようとしているに違いない! 遊びの国のせいでダンジョンも…
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