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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十五章 海の国ザナドゥ~二度目のバカンス~
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海の準備

 ザナドゥに行くことを決めた数日後。

 現在、職場の一階部分に、六人乗りくらいのボートが鎮座していた。形はプレジャーボートっぽい。

 リヒターに頼んで用意してもらった頑丈なボートである。木製だが頑丈で、加工もしやすい。

 俺は、リヒターと何故か一緒にいるイェランに言う。


「用意してくれてありがとな。今晩奢るぜ」

「いえ、構いません。ところで……何を作るんですか?」

「パラセーリングボート。つまり、ザナドゥで使うためのボートだ」

「ここでやるの?」


 イェランの疑問はもっともだ。

 だが、ここでやるしかない理由もある。


「当然だろ。ザナドゥで作ってたら、せっかくの休みが魔道具開発で終わっちまう。だから、海で使う魔道具は全部、ここで作る。そして連結馬車に牽引してザナドゥまで運ぶ」

「ふーん。で、このボートで何を作るの?」

「さっきも言ったが、パラセーリングボート……つまり、パラセイルをするためのボートだ。そこで……リヒター、お前に頼みがある」

「は、はい……なんでしょうか、改まって」


 俺は、両手をパンと叩いて言う。


「お前に、こいつの操縦士になってもらいたい!!」

「……え?」

「ちょいちょいゲントク。なんか面白いことになってる? アタシにも聞かせてよ」

「……まあ、イェランでもいいか。お前もザナドゥ行くのか?」

「うん。今年の夏の魔道具は、エアコンがメインになりそうだからね。去年のヤツを小型軽量化して、値段も手ごろな価格にしたやつを新製品として売り出すんだ。もう開発は終わって、工場での生産が始まってる。アタシは今年、しっかり夏休み取るつもりだよ。あとのことは弟子に任せればいいしね」

「え、お前弟子なんていたのか?」


 ちょっと驚き。

 そういや、以前ホランドが言ってたっけ……魔道具技師は普通、弟子を取って育てるモンだって。

 まあ、それは別にいいか。


「ゲントクさん。操縦士というのは……このボートを操作する、という意味ですか?」

「ああ。パラセイルをやるには、操縦士が必要だからな」

「それ、そのパラセイルってなに?」

「じゃあ、そこから説明するか」


 俺はテーブルに模造紙を置き、パラセイルの説明を始めた。


 ◇◇◇◇◇◇


 パラセイルとは。

 パラシュートにハーネスを付けて、モーターボートに引っ張ってもらい空中散歩を楽しむマリンスポーツである。

 俺は模造紙に、ボートに引っ張られるパラシュートの絵を描いた。


「こんな感じで、ボートに引っ張ってもらって空中散歩を楽しむんだ」

「え、こ、こんなことできるの!?」

「できる。昔、爺ちゃんと親父の三人で旅行した時やったからな」


 ちなみにその時、パラセーリングボートがちょうど故障でパラセイルそのものが中止になってしまった。だが、俺と親父と爺ちゃんの三人で『修理させてくれ』と頼んでボートを修理。ツアー会社に感謝されたっけなあ。

 そこで俺は、パラセーリングボートの構造はだいたい理解した。パラシュートの仕組みやハーネスの構造なんかもばっちりだ。


「俺はこのパラシュートに乗りたい。リヒターには操縦を頼む」

「わ、私でいいのでしょうか……それに、お嬢の護衛もありますし」

「まあ、一日くらい休みあるだろ。その時は俺もサンドローネに頼むしな」

「はいはい!! アタシもやりたい!!」

「……なんか無茶な運転しそうだしなあ」

「しないっつの!! ねえ、いいでしょ?」

「……まあ、いいか。ってわけで、ボートを改造する。船外機じゃなくて、ボートにエンジンを組み込んで、ハンドル操作できるようにする」

「「ハンドル……?」」

「えーと。舵輪じゃなくて、こういう丸いやつで……ああもう、とにかく任せろ」


 というわけで、俺はボートを改造することにした。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、木製なので強度に不安が残る。

 なので、外装を『ダイノリザード』の甲殻を使って補強。さらにハンドルで舵を動かせるよう、ボートの中央部に運転席を設けた。

 アクセルを踏むと『回転』の魔石が作動し、魔力回路を通ってスクリューを回転させる。

 シャフトとスクリューはメタルオークよりも頑強なチタンゴーレムの骨を加工。

 ペダルは三つ。アクセル、ブレーキ、そしてもう一つ。


「あれ、ゲントク……この魔石、なんて彫ってあるの?」

「ふふふ。そいつは『高速回転』……回転のさらに上だ」


 アクセルの隣に、さらに回転する『高速回転』用のスクリューを付けた。

 前部にはブレーキ用のスクリューが二つ、後部にはアクセル用のスクリューが二つと、高速回転用の大き目のスクリューが一つ。

 ちなみに、魔石は全部十ツ星だ。

 イェランも手伝いたいと言うので、船の腰掛け部分を作ってもらってる。


「一応、定員は六名まで。スピードを出す関係で幌は付けない。骨組みだけで、暑い時は布を被せられるようにする」

「了解。風の抵抗を受けないように、座る場所は少し低めにしてあるから」

「おう。さすがイェラン」


 船には、座る椅子に道具入れ、ライフジャケット入れや信号弾なんかを入れておく。まあ、知り合いはみんな魔法使えるから、信号弾はいらんかもしれんけど。

 小型冷蔵庫も設置して、食料を入れるボックスも入れておくか。本来のボートならエンジン部分が必要だけど、構造がシンプルなのでだいぶスペースに余裕があるしな。


「よし。イェラン、外装の取り付けは任せていいか? 俺はパラシュートを作る」

「了解。任せてよ」


 俺は地下へ行き、パラシュートを作る。

 

「素材は……軽くて頑丈なラッシュボアの毛で編んだ布にするか。ロープも同じ素材で、ワイヤーと、ハーネスも……よし、やるか」


 爺ちゃんから編み物も習ったことがあるし、何とかなりそうだ。

 一応、ハーネスは二人用のも作っておくか……座るタイプのやつだ。


「なんか久しぶりに魔道具技師っぽいな……遊び道具だけど」


 と、パラシュートを作っていると、イェランが来た。


「ゲントク。お客さん……ってか、子供たちが来たよ。あんたに用事だって」

「え? 子供たち?」


 なんだろう。俺に用事か……とりあえず聞いてみるか。


 ◇◇◇◇◇◇


 一階に戻ると、子供たちが飛びついてきた。


「「「おじちゃーん!!」」」

「うおお!?」


 シアちゃんが背中に飛びつき、クロハちゃんが腕に飛びついて甘噛みし、リーサちゃんが足にしがみついてきた。

 イェランは「人気者だねー」と笑いながらボートに外装を付けている。

 俺は、子供たちを降ろし、一人ずつ頭を撫でた。


「なんだなんだ。みんな、どうした?」

「わうう」

「がるるる」

「きゅうん」


 みんな俯いている。ケモミミもしおれ、尻尾も元気がない。


「あのね。ユキがうみに行くって……わたしたちも行きたいの」

「あたい、うみ見たことない」

「きゅうう、うらやましい」

「えーと……それで、なんで俺に?」

「わうう。おじちゃん、おとうさん、おかあさんにおねがいして」

「がうー、ぱぱとままに、うみに行くようにいってほしいぞ」

「おじちゃん、わたし……うみ、いきたい」


 つまり……家族旅行でザナドゥに行くように説得してくれってことか。

 ユキちゃんが行くのは決定事項だ。一応はザナドゥが故郷だし、ロッソたちの世話係としてスノウさんが行くなら、自動的にユキちゃんも行くし。

 どうやら、子供たちに自慢して、シアちゃんたちが羨ましがってるようだ。


「おねがいしたけど、いそがしいからダメだって」

「がうう……ぱぱとあそびたいぞ」

「きゅうん」


 なるほどなあ。それで、俺に両親を説得するようにお願いしに来たのか。

 というか、よそ様の家の旅行事情に関わっていいのかね。

 考えていると、後ろから声が。


「なるほど、ね」

「ん? おお、サンドローネ」

「……ふむ。そうね、私に任せてちょうだい。ゲントク、明日、その子たちの両親の元へ」

「え」

「じゃあまた。それと……このボートで面白いことやるようね。リヒターに何かさせるつもりなら、私も関わるからね。イェラン、そろそろ帰るわよ」

「はーい。じゃあゲントク、残りの外装は明日やるよ。じゃあな」


 サンドローネたちは帰って行った。


「がうう、おじちゃん、たのんでくれるの?」

「あ、ああ。とりあえず……明日、ティガーさんたちに頼んでみるか」

「がうー!! やったあ!!」


 とりあえず、サンドローネが何か考えてるみたいだし……子供たちのためになるならやってみるか。

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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~(1)
レーベル:マンガボックス
著者:比内ハツ
原著:さとう
発売日:2025年 6月 30日
定価 726円(税込み)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
>シャフトとスクリューはメタルオークよりも頑強なチタンゴーレムの骨を加工。 ゴーレムの破片とかじゃなくて骨…どんなゴーレムだろ、もしやロボットのフレーム的な感じだったり
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