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独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~  作者: さとう
第十四章 独身おじさんと四大商会

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独身おじさん、会合に出る②

「まずは私、アレキサンドライト商会商会長サンドローネより……此度は、四大商会の会合に参加するという名誉を……」


 サンドローネが難しい言葉でしゃべり始めた。

 どうやら「アレキサンドライト商会を四大商会が認めてくれてありがとう!! これからは五大商会としてよろしくね!!」みたいな挨拶をしている。

 難しいので、俺は聞きながら部屋の中を見渡してみた。


(やっぱすげえな……)


 嫌でも視界に入るのは、竜人……確か、アドライグゴッホ武商会だっけ。そこの商会長であるバハムート。バハムートとか名前かっけえな。

 真紅の竜麟、枝分かれしたツノ、後頭部からは鬣みたいなのが生えている。赤い豪勢なローブを羽織り、威圧感だけじゃなく高貴さも感じられた。

 今は腕組みし、目を閉じ、サンドローネの挨拶を聞いている。よく見ると後ろには細身の竜人が二人立っていた。たぶん護衛っぽいな。


「にしし」


 そして、俺がチラッと見ると同時に笑みを浮かべたのは、小学三年生くらいの男の子……ではなく、妖精族の……ああ、ウェンティズ食品商会だっけ。そこの商会長だ。

 緑色の礼服に、背中からトンボみたいな翅が生えている。顔付きはどう見ても子供だけど……異世界あるある、子供っぽいけど俺より年上……だよなあ。

 護衛は……おお、意外にも獣人だ。ハーフの女性獣人が二人……だけど、顔立ちが似ている。姉妹かな?


「…………ふぅ」


 そして、ふつーに煙管で煙草を吸うのが、喪服っぽい黒いドレスに帽子を被ったお団子ヘアのエルフ女性。『蟹座の魔女』クレープス・キャンサーだ。

 黄金の煙管で甘い香りを吐き出す美女。黄金煙管……昔のゲームであったな。黄金キセルを振り回す義賊のゲームが。あの煙管の先端、もしかしたらチェーンになって伸びるかもしれん。

 俺が見ているのに気づいたのか、チラッと見て目を細めた……い、色っぽ過ぎるぞ。

 護衛は……普通の人間かな。十六歳くらいの少女……あれ、この子の恰好、なんか着物だな。それに腰に……おいおい、刀差してるぞ。


「…………」


 そして、サンドローネの挨拶を聞いてニコニコしているミカエラ。

 桃色のロングヘア、桃色の瞳、桃色のドレスと、とにかくピンクだ。でも上品なピンクであり、高貴さすら感じ……て、おいおい。

 今気づいた。ミカエラの護衛、バレンたちじゃん!! ウングも、リーンドゥもいる!! き、気付かなかったぞ。


「以上を持ち、挨拶とさせていただきます」


 あ、サンドローネの挨拶終わった……やべえ、何も聞いてなかった。

 すると、ウェンティズ食品商会のウェンティが、手をパチパチさせながら言う。


「いやー、サンドローネちゃんもついに、ボクら四大商会の仲間入りだね!! ああ、もう五大商会か。あはは」

「ありがとうございます。末席として、皆様の期待を裏切らないことを誓い」

「違う違う。あのさ、サンドローネちゃん……別に、ボクら全員、期待なんてしてないよ」

「えっ」


 サンドローネは思わず顔を上げる。

 そして、他の三人もサンドローネを見ていた。な、なんだろう……みんな同じような目をしている。


「きみに期待なんかしていない。同時に、ボクらはみんな、お互いに期待なんかしていない。キミがこの席に座れるのは、キミの功績が素晴らしかったからだよ。だから、ボクらなんてどうでもいいんだ。ここでのルールは一つ。四人全員が『不必要』と決めたら、その場で除名。商会の解体をしてもらうよ」

「っ!?」


 しょ、商会の解体って……アレキサンドライト商会が、消滅するってのか?

 驚いていると、ミカエラも言う。


「サンドローネちゃん。それは、サンドローネちゃんも同じだよ?」

「……私も?」

「うん。私たち四人が、世界最高の『五大商会』に必要ないと感じたら言えばいいよ。それで、全員が同意すれば、商会は解体される。世界最高の商会って人々は思っているから、それが必要ないってわかれば、解体するしかないよね」

「…………」


 な、なんか怖くなってきた。ってか、俺この場に必要か?

 そして、バハムートが言う。


「『世界最高』という名誉を背負うだけで、商会は成功を約束される……その名に泥を塗る行為をすれば、消されるのは至極当然である」


 声おっも……渋くていい声してやがる。

 とりあえずわかった。五大商会……これは、世界最高の商会っていう『名誉』なんだ。それに相応しくない、たとえば……デカい不祥事とかやらかして、五人のうち四人が『こいつ相応しくないわ』ってなったら、その商会は消滅する。自分で商会を閉めることができなければ、四人の商会が徹底的に潰すだろう……って、自分で思って怖いんだが。

 サンドローネは驚いていたが、すぐに笑みを浮かべた。


「それならご安心を。アレキサンドライト商会は、世界最高に相応しい商会として活動しておりますので……」

「それってさ、そこにいる第四降臨者のゲントクのおかげだよね~」


 と、ここで俺に話が振られた。

 みんなの視線が一気に集中……まあ、俺は別に権力者に対してへーこらするような男じゃないんで、普通に言わせてもらう。


「ま、俺は好き勝手やってただけだ。サンドローネがそれを形にして、世に送り出した。だからサンドローネは成功したんだろ」

「お~、いいこと言うねえ。さっすが異世界人」


 っていうか……こいつ、ウェンティ。普通に異世界人とか言いやがる。

 俺が異世界人だってことを知っているのは、ロッソたちとサンドローネたち、あとは十二星座の魔女くらいのはずなんだが……まあ、バレて困ることはない。


「ねえゲントク。一度、ボクの商会に遊びにこない? ショウマのいた世界のこと、もっと知りたいんだよねえ」

「ショウマって、お前知ってんのか?」

「うん。リオの弟子だよね。一度会って話聞いたことあるんだ。コンビニの発想はそこから得たんだよね」

「ほー、コンビニの知識はそのショウマってやつから得たのか。まあ、納得」


 と、なんかサンドローネに睨まれているのに気づいた。

 ウェンティも「あはは」と笑う。


「ごめんごめん。世間話はまた今度にしよっか。今度お土産もって遊びに行くよ」

「おう。でも、最近は忙しいから、いきなり来ても相手できないからな」

「……ぷ、あはは!! そうだね、わかったよ」


 なぜかウェンティは笑った。そして、バハムートが俺に言う。


「ゲントク。第四降臨者か……ワシも、貴様の世界の『武器』に興味がある。魔導武器で再現……」

「悪いな。俺は魔導武器に関わるつもりないんで」

「ほう……貴様、すでに魔導武器を作り、自身で使っていると聞いたが?」

「そりゃ俺は使うさ。俺が嫌なのは、俺の考えた武器が世界に広まって、殺しの道具になるのが嫌なんだよ。俺が、俺のために作って、俺が身を守るためなら作るさ」

「……貴様は、それでいいと考えているのか?」

「ああ。ご覧の通り、主人公でもない、町の電気工事士で、使命を帯びて異世界転移したわけじゃない。嫌なことは嫌だし、やりたくないことはやらない、小さな男さ」

「……面白い。ワシも、土産を持って遊びに行くとしよう」

「悪いが、あんたは怖いし、正直近づきたくないので遠慮する」


 みんな愕然としているが、俺は言う……なんか、この場では縮こまるより、俺らしく返事をするのがいい気がした。

 そして、甘い煙を吐き出すクレープス。


「……私は、あなたにお願いしたいこと、あるわ」

「アツコさんの遺品か? 修理できるやつだったらやってやるよ」

「十億、用意するわ」

「いらん。ってか魔女の間で俺の仕事は十億って共有するなっつの。モノ次第だけど、適正価格で受ける」

「……そう。じゃあ、近々持っていく」

「ああ。何度も言ってるけど、いきなり来るなよ」


 なんか疲れてきた。

 ミカエラを見ると、ニコニコしながら手を振るだけだった。

 

「……では、私の話に戻ります」


 サンドローネが話を戻し、会合は続くのだった。

 あー疲れた。とりあえず、商会長たちがどんな連中なのかわかったぞ。

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― 新着の感想 ―
ウェンティとミカエラは消えて無くなれ(希望)バッハさんはその次。あれ?商会無くなる?
更新ありがとうございます。 【電気工事士】ってサラッと言ってしまってるのがナイス!
こんにちは。 誰も彼も胡散臭いですが、戦場と血の臭いがしそうなバッハ武藤さんとはお近づきになりたくないッスね…。まぁこっちが拒否っても向こうが近づいて来そうだけど。
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